「家賃収入は半々」姉が約束を破り母困窮…認知症のケア足りず徘徊も
Finasee / 2023年6月9日 11時0分
![「家賃収入は半々」姉が約束を破り母困窮…認知症のケア足りず徘徊も](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/finasee/finasee_12132_0-small.jpg)
Finasee(フィナシー)
烏丸珠樹さん(仮名)は幼少期に父親に虐待され、別居後は一切連絡をとっていなかった。ある時、いとこから父親の病状を聞かされ、気は進まなかったが姉と一緒に病院を訪ねた。憎しみが全く消えなかった烏丸さんとは反対に、姉は一瞬で雪解けした。父親は3年後、89歳で亡くなった。
●父の入院先を訪ね、態度が一変した姉はくるりと手のひらを返した――。
※前編【絶縁した父と再会、「拘束された姿」見た姉が一変…見事な手の平返し】からの続き
父親の死後、烏丸さん家族がかつて暮らしていた家とわずかな現金が遺った。
烏丸さんは父親の遺産に関して、「父の息のかかった物は何ひとつ要らない」と言い、相続を放棄。
母親は、
・父親の現金は要らない
・家に住む気はない
・家を売る場合、自分も苦労して建てたので、売れた金額の半分は欲しい
・家を売らずに借家にした場合、家賃の4〜5割程度は欲しい
と言い、姉も烏丸さんもそれに合意した。
ただ、姉は家を売ることを1人嫌がり、「リフォームして借家にする」と言うため、烏丸さんと母親は姉に任せることにした。
そんな中、母親が父親の遺族年金を受け取れないことが判明。日本年金機構の説明によると、別居して以降、父親とは完全に独立した生計だったことが理由だった。
「お国は冷たいなと思いました。父と離婚ができなかった母は、母子家庭手当ももらっていません。現在は自分の年金と、節約して節約してためた貯金を切り崩してやっと生活できている状況なのに……」
姉の嘘リフォームが終わり、母親が「家賃はいくらで貸すのか?」とたずねると、姉は「5万円」と答えた。その後も母親は姉に会う度、「借り手は見つかったか?」と聞くが、姉は「なかなか決まらない」と言い、姉の夫も「草引きや植木の世話が大変」と口をそろえた。
家賃の5〜4割が入ってくるのを楽しみにしていた母親は、その度に肩を落とした。
ところが一昨年のこと。烏丸さんが何気なくGoogleのストリートビューを見ていると、烏丸さん一家が住んでいた家の玄関に「〇〇学習塾」と書かれた旗が立っている。びっくりした烏丸さんが住所で検索すると、「〇〇学習塾」と出て来た。逆に「〇〇学習塾」で検索すると、家の住所が出て来た。ストリートビューは、2020年の情報だった。
慌てて姉が依頼していた不動産会社のサイトを見ると、烏丸さん一家の家の家賃は「6万円」で「賃貸中」となっている。つまり、2020年にはすでに借り手が決まっていたということだ。
つい先日も姉は相変わらず、「借り手が決まらない」と言っていた。烏丸さんは思わず「おい!」と突っ込みたくなったが耐えた。母親と姉をもめさせたくなかったからだ。
「できれば私が指摘する前に、姉の口から母に話してほしいと思っています。過去にさかのぼらなくても、『やっと決まったんよ』と言って、来月からでもいいので母に家賃を払ってやってほしいと思います」
現在88歳の母親は、昨年から認知症の症状が出始めていて、軽い妄想も徘徊もある。烏丸さんは平日の仕事の後や土日に母親の様子を見に行っているが、車で20分ほどのところに住んでいる姉は、ほとんど何もしていない。
「何でもするけん、いつでも言ってね」「1人で抱えたらいかんよ」とは言ってくれるが、いざ頼むと「忙しい」「その日は無理」と言って10回中9回は断られる。
母親は要介護1。週に1回のデイサービスと、週に2回のヘルパーを依頼しているが、母親の経済的にはこれがギリギリだった。
「姉が、月々2万円でも3万円でも母に渡してくれたら、母の経済的負担は軽くなります。1000円、2000円の買い物をためらわなくても済むようになります。デイサービスやヘルパーを増やすことも、経済的に問題なくなります……。しかし姉の性分を考えると、ここまでごまかしてきたのなら、今後も自主的に話すとは思えません。ストリートビューの写真だけだと、『すぐ出て行かれて、今はまた空き家なんよ』と言って逃げられそうなので、近日中に家を確かめに行こうと思っています」
烏丸さんは現在も、「姉に、『母が経済的な不安を抱えている』と相談してみようか……」「母は、姉と私がけんかをするとものすごく悲しむから、姉と2人きりで話そうか……」と悩んでいる。
残念なことに、父親の死後、母子3人で相続について話し合った記録はない。単なる口約束で、書面も録音もない。
「あの時は、姉がこんな嘘をつくとは思いませんでした。もう信用できません。問い詰めれば、『そんな約束していない』と姉はシラを切るかもしれません。でも母のためにも、なんとかしたい。金銭的な心配を、少しでも軽くしてあげたいと思っています」
信頼していた身内の裏切りは大きな傷を残す。烏丸さんは、今度家族で話し合う時はすべて録音しておこうと思っている。
旦木 瑞穂/ライター・グラフィックデザイナー
愛知県出身。グラフィックデザイナー、アートディレクターを務め、2015年に独立。グラフィックデザイン、イラスト制作のほか、家庭問題に関する記事執筆を行う。主な執筆媒体は、プレジデントオンライン『誰も知らない、シングル介護・ダブルケアの世界』『家庭のタブー』、現代ビジネスオンライン『子どもは親の所有物じゃない』、東洋経済オンライン『子育てと介護 ダブルケアの現実』、毎日新聞出版『サンデー毎日「完璧な終活」』、日経BP 日経ARIA「今から始める『親』のこと」など。
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