日本が誇る自動車業界を襲った「戦後最悪」の大型倒産…4万社に影響【6月24日はどんな日?】
Finasee / 2023年6月24日 11時0分
Finasee(フィナシー)
・官僚112人が処分…国民が激怒した“下劣”極まりない接待汚職事件
日本には世界的な自動車メーカーがあり、それを支える自動車部品メーカーも世界級です。
【自動車部品メーカーの自動車関連売上高(2021年度)】
・デンソー:5兆3286億円
・アイシン:3兆7988億円
・住友電気工業:1兆7523億円
・矢崎総業:1兆6090億円
・日立製作所:1兆5977億円
・トヨタ紡織:1兆4215億円
・マレリ:1兆3800億円
※矢崎総業は6月期、その他は3月期
出所:FOURIN(フォーイン)
しかし2022年6月24日、売上高が数兆円を超え全国に約4万社の取引企業を持つマレリホールディングスが経営破綻しました。同社に何が起こったのでしょうか。
戦後最悪級の破綻劇…金融機関は4000億円を放棄マレリホールディングスの中核企業マレリ(旧カルソニックカンセイ)は、もともと日産自動車のグループ企業でしたが、2017年にアメリカの投資会社コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に買収されました。その後2019年にフィアット・クライスラー・オートモービルズ(現・欧州ステランティス)からマニエッティ・マレリを約7200億円で買収し、商号をマレリと改めます。
KKRに買収された後もマレリは主に日産自動車向けに部品を供給し、2020年12月期には連結で約1兆2665億円もの売上高を計上していました。しかし日産自動車はカルロス・ゴーン氏の失脚や新型コロナウイルスなどから販売不振に陥り、業績が悪化します。半導体不足も追い打ちとなり、日産自動車は長らく減産を余儀なくされました。これを受け、マレリの業績も悪化します。
【日産自動車の売上高(連結)】
日産自動車 決算短信より著者作成マレリホールディングスはマニエッティ・マレリを買収した際の借入金の負担が重く、業績不振で資金繰りが限界を迎えたことから、2022年3月に事業再生ADRを申請しました。これは裁判所を介さずに債務の削減などを求める手続きで、法的整理と比較すると柔軟に再建を目指すことができますが、原則として債権者全員の合意が条件となります。
マレリホールディングスは債権者と交渉を進めたものの、残念ながら一部の金融機関から合意を得ることができませんでした。このためマレリホールディングスは東京地裁へ民事再生法の適用を申請し、法的な枠組みで事業再生を図ることになります。製造業としてはタカタに次いで戦後2番目に大きい倒産となりました。
【戦後の主な製造業の倒産と負債額】
・タカタ:1兆5024億円(2017年6月)
・マレリホールディングス:1兆1330億円(2022年6月)
・パナソニックプラズマディスプレイ:5000億円(2016年11月)
・エルピーダメモリ:4480億円(2012年2月)
出所:東京商工リサーチ
マレリホールディングスは、KKRからおよそ900億円の新たな出資と金融機関から4000億円を超える債権放棄を盛り込んだ再生計画を提出し、債権者の90%以上の合意を受けました。これを受けマレリホールディングスの再生手続きは2022年8月に終結しています。
マレリは今後どうなる?今後は、マレリホールディングスが計画通りに事業を再建できるかに注目が集まるでしょう。法的整理で財務の懸念はひとまず後退しますが、2021年12月期には単独でおよそ6350億円もの最終赤字を計上しており、この立て直しが急務となっています。
マレリホールディングスは海外を中心に人員や工場のリストラを行い、合理化を進める見通しです。これにより年間約700億円のコスト削減効果を見込むとしています。
また同時に、電気自動車や自動運転の分野へ2600億円の成長投資を行うことも明らかになっています。自動車メーカーは電気自動車へのシフトが鮮明になっており、このニーズに応えることで収益の底上げを目指していると考えられています。
マレリホールディングスの親会社であるKKRはどう動くのでしょうか。KKRは投資ファンドであり、もともとはマレリホールディングスを上場させることで資金の回収を目指していたとみられています。当面は事業再建が優先課題でしょうが、業績が回復すればまた譲渡に動く可能性が高いでしょう。KKRがどのような出口戦略を描いているのか注目を集めています。
自動車部品メーカーの意外な発明品自動車部品メーカーの製品は車の内部にあるものが多く、普段私たちの目に触れる機会は多くありません。しかし業界大手のデンソーが発明した「QRコード」は、毎日のように利用する人も多いのではないでしょうか。
QRコードが誕生したのは1994年のことです。デンソーは自動車部品以外の事業への進出を検討していたところ、2次元コードの開発に目を付けました。デンソーは、従来の横方向にしか情報を持たない1次元コード(バーコード)だと容量が小さく、いずれ限界が来ると予測したのです。そこで横方向だけでなく縦方向にも情報を持ち、しかも機械が高速で読み取れる2次元コードの開発に乗り出しました。
当初は機械がコードを誤認するなどし、なかなか読み取り時間の短縮はかないませんでした。しかしコードの隅に「コードが存在する」ことを機械に知らせる印を入れることで、誤認を防ぐことに成功します。こうして情報の大容量化と読み取りの高速化を実現したQRコードは誕生しました。デンソーのQRコード開発部門は、2001年に「デンソーウェーブ」として独立します。
また、QRコードがここまで普及したのは、その優秀な機能のせいだけではありません。デンソーはQRコードについて特許を取得したものの、その技術を独占せずに公開し、誰でも無料で使えるようにしたのです。これによりQRコードは日本にとどまらず世界的に普及するようになりました。
QRコードは無料のため直接の収益は生まれませんが、その宣伝効果を考えればデンソーにとっては重要な財産となっているでしょう。QRコードを使用するためには、商標として社名を併記する必要があるからです。QRコードを無料で開放したデンソーの作戦勝ちといえるでしょう。
【デンソーの業績】
※2024年3月期(予想)は、2023年3月期における同社の予想出所:デンソー 決算短信
【デンソーの株価】
Investing.comより著者作成執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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