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おひとりさま女性は年金だけで“ゆとりある老後”は困難!? 準備すべき貯蓄額は…

Finasee / 2023年6月8日 11時0分

おひとりさま女性は年金だけで“ゆとりある老後”は困難!? 準備すべき貯蓄額は…

Finasee(フィナシー)

日本では、これから定年を迎える女性が増えると予想されています。

こうした女性たちが“明るい定年後”を迎えるには――? 長寿化とライフスタイルの多様化が加速する日本において、今後、ますます重要度が増すであろうこの問いにさまざまなデータとともにヒントを送るのが、話題の書籍『女性と定年』です。

今回は特別に、同書の第1章『これから増える定年女性』、第2章『女性の定年とお金』の一部を公開します(全3回)。

※本稿は『女性と定年』(小島明子著・金融財政事情研究会)の一部を再編集したものです。

管理職経験者の定年女性も増える

皆さんは、定年について考えたことはありますか。定年を目標に働いてきたわけではなく、目の前の仕事を一生懸命やってきたら、今に至っているという女性は多いのではないでしょうか。正社員として、定年まで働き続けてきた女性が少ない中、定年を迎えた後、あるいは迎える前にどのようにキャリアをシフトいく方法があるのか、ロールモデルのケースも少なくイメージが湧きづらいのが現状です。

今までも定年まで勤め上げる女性は、決していなかったわけではありません。しかし、今後は徐々にではありますが、年を追うごとにその数が増えていき、中でも、管理職を経験した定年女性が増えることが予想されます。

1986年には、男女雇用機会均等法(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)が施行され、女性も総合職として採用されるようになりました。長時間労働が前提となる世代、男女雇用機会均等法施行後に入社した多くの女性たちにとって、仕事と家庭の両立は容易なことではありませんでした。しかし、長時間労働に耐えながら、仕事と子育てを両立しながら働き続け、あるいは、結婚や出産という機会を選択せずに仕事を優先し、勤め先で女性として初めて管理職や役員として登用された人が多い世代でもあります。今、多くの若い女性たちにとって働きやすい環境になっているのも、男女雇用機会均等法世代の女性たちが頑張って道をつくってきたことが大きかったのではないかと思います。そして、ちょうど、彼女たちにも定年の年齢が近付いてきています。

2012年頃を境に、政府が女性活躍を大きく掲げたタイミングで、多くの企業が、女性の管理職への登用や、仕事と家庭の両立支援制度の整備を始めるようになりました。現在、勤めている若い世代が結婚や出産のタイミングで、「仕事か家庭か」を選択することは少なくなったと感じます。女性の就業者数は年々増え、管理職としても登用される女性が増えてきています。特に、女性の係長級の比率は約2割を超え、若い女性の役職者への登用が徐々に進んでいるのです。将来、管理職経験者をはじめ、定年まで働く女性たちが非常に増えることはデータをみても想像ができます。

●図表1 女性の就業者数の変化

出所:内閣府「男女共同参画白書 令和4 年版」をもとに日本総合研究所作成

●図表2 女性の役職者比率の変化

出所:内閣府「男女共同参画白書 令和4 年版」をもとに日本総合研究所作成日常の生活費の収支と資産・負債の状況を整理する

定年を迎える女性にとって、一番の関心事や不安は、老後のお金の問題ではないでしょうか。寿命や健康状態、生涯賃金、家族の有無等によって、老後に必要な金額は人それぞれ異なります。寿命を知ることはできないため、正確な金額の試算が難しく、完全に不安をなくすことはできません。しかし、日頃かかっている生活費の収支や資産・負債の状況から、将来、必要な金額を予想し、心の準備をしておくことはできます。たとえ、途中で見通しが狂ったとしても、何も考えていなかったときに比べれば、軌道修正もしやすく、焦ることも少ないのではないでしょうか。

まずは、日常の生活(住居費、食費、光熱費、交際費等)にかかる費用を把握すれば、老後、月々どれくらいの生活費がかかるかを知ることができます。高齢になると、現役時代に比べて生活にかかる費用は少なくなると思いますので、約7〜8割程度と見込んでおくとよいのではないでしょうか。月々の収入については、公的年金や、再就職をしていれば仕事の収入等が加わります。年金の受取額を知りたいときは、毎年誕生月に年金定期便が送付されますので、年金記録や年金見込額の確認をすることができます。

一方、資産については、住宅(持ち家の場合)、金融資産、退職金等、負債については、住宅ローン(残債がある場合)等を把握することで、全体の資産状況を把握することができます。老後のお金を考える上では、日頃の「キャッシュフロー」と「資産・負債」といったこの2つの軸で、自分の資産を把握することが求められます。

女性のおひとりさまに必要な老後の資金、最低2000万円

生命保険文化センター※1によれば、夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考える最低日常生活費は月額で平均22.1万円となっています。ゆとりある老後生活を送るための費用として、最低日常生活費以外に必要と考える金額は平均14.0万円となっています。その結果、「最低日常生活費」と「ゆとりのための上乗せ額」を合計した「ゆとりある老後生活費」は平均で36.1万円であることが指摘されています。ゆとりのための上乗せ額の使途は、「旅行やレジャー」が最も高く、「趣味や教養」「日常生活費の充実」と続いています。誰もが、老後は、友人や家族と旅行を楽しんだり、趣味やお稽古事を楽しみたいのではないでしょうか。

※1 公益財団法人生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(令和元年度)

男性の平均寿命は81.47年、女性の平均寿命は87.57年ですので※2、例えば、65歳で退職をした場合に、ゆとりある生活費のために必要な費用総額の概算を、参考までに次項で試算をしています。あくまでも試算ですので、個々人の状況や経済環境等によって、変動は発生します。

※2 厚生労働省「令和3 年簡易生命表の概況」

総務省※3によれば、65歳以上の夫婦2人が実際に支出している費用は22万4390円、単身世帯は13万3146円ですので、おおよそ単身世帯となると70%程度となります。未婚等で一人暮らしの女性の場合は、周囲からの支援が少ない可能性も想定し、夫婦で必要な金額の80%と設定して試算しています。これらの金額から、年金で給付される総額を引くと、年金以外に準備が必要な金額の目安を出すことができます。

※3 総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)令和2年(2020年)」

厚生労働省※4によれば、厚生年金保険(第1号)老齢年金受給権者の平均年金月額は、男性17万391円、女性10万9205円ですので、それを概算値(男性17万円、女性10万円)として活用すると、必要な貯金の金額の目安も計算できます(ただし、年金月額は人によって異なりますのでご注意下さい)。

※4 厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

ゆとりある老後の生活費をベースとするか、最低日常生活費をベースとするかでも必要な金額は変わりますが、次項のように計算をしてみると、最低日常生活費で生活をしていた女性のおひとりさまが88歳まで生きた場合は、生活費だけで老後の資金が最低約2000万円は必要になると試算されます。

しかし、実際は、ご自身の日常生活費などを参考にしながら、試算されるとより実態が把握できるかと思います。このほか、65〜89歳までの医療費の自己負担額(概算で約200万円※5程度)と、さらに介護に関する費用を見込んでおく必要があります。女性も正規雇用で定年までバリバリと働き、稼いでいる女性であれば、年金の額も増えますし、再就職等で少しでも収入があれば、月々、貯金から持ち出す金額も減ります。日々の生活設計の見直しや再就職活動、病気にかからないよう健康的な生活の維持・向上を目指し、計画を立てておくことが大切だといえます。

※5 平成29年版 厚生労働白書

「ゆとりある老後生活費」を平均36.1万円で試算した場合

①−1  夫婦2 人でいられる年齢を82歳と仮定した場合に準備をしておく金額の目安

17年×12カ月×36万1000円=7364万4000円

7364万4000円−(17年×12カ月×27万円(夫婦2 人の年金額))=1856万4000円(給付される年金以外に準備をしておく金額の目安)

①−2  夫(寿命82歳と仮定)との死別後、女性1 人で88歳まで生きると仮定した場合に準備をしておく金額の目安

6 年×12カ月×36万1000円×70%(仮定)=1819万4400円

1819万4400円−( 6 年×12カ月×10万円(女性1 人の年金額))=1099万4400円(給付される年金以外に準備をしておく金額の目安)

② 未婚等で女性の一人暮らしの場合に準備をしておく金額の目安

23 年×12カ月×36万1000円×80%(仮定)=7970万8800円

7970万8800円−女性1 人の年金額=給付される年金以外に準備をしておく金額の目安

7970万8800円−(23 年×12カ月×10万円(女性1 人の年金額))=5210万8800円(給付される年金以外に準備をしておく金額の目安)

「最低日常生活費」を月額平均22 .1万円で試算した場合

①−1  夫婦2 人でいられる年齢を82歳と仮定した場合に準備をしておく金額の目安

17年×12カ月×22 万1000円=4508万4000円

4508万4000円−(17年×12カ月×27万円(夫婦2 人の年金額))→収支は999万6000円のプラス

①−2  夫(寿命82歳と仮定)との死別後、女性1 人で88歳まで生きると仮定した場合に準備をしておく金額の目安

6 年×12カ月×22 万1000円×70%(仮定)=1113万8400円

1113万8400円−( 6 年×12カ月×10万円(女性1 人の年金額))=393万8400円(給付される年金以外に準備をしておく金額の目安)

② 未婚等で女性の一人暮らしの場合に準備をしておく金額の目安

23 年×12カ月×22 万1000円×80%(仮定)=4879万6800円

4879万6800円−女性1 人の年金額=給付される年金以外

に準備をしておく金額の目安4879万6800円−(23 年×12カ月×10万円(女性1 人の年金額))=2119万6800円(給付される年金以外に準備をしておく金額の目安)

●定年後も働くことで年金以外の収入を得たり、社会との接点を持ちたいと考える女性は少なくないでしょう。第2回(事務職は倍率100倍にも…定年女性を待ち受ける「仕事探しのシビアな実情」)では、定年女性の仕事探しの実情についてお届けします。

 

女性と定年
 

小島明子 著
発行所:金融財政事情研究会
定価:1,980円(税込)

小島 明子/日本総合研究所 スペシャリスト

CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、国家資格キャリアコンサルタント。金融機関を経て日本総合研究所に入社。IESS客員主任研究員兼務。環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点からの企業評価業務に従事。その一環として、女性を含む多様な人材の活躍推進に関する調査研究、企業向けに女性活躍や働き方改革推進状況の診断を行っている。主な著書に「女性発の働き方改革で男性も変わる、企業も変わる」(経営書院)、「わたしのための金融リテラシー」(共著・金融財政事情研究会)。

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