年収ではなかった…「中高年の婚活」で多くの女性が男性に対して“重視すること”
Finasee / 2023年6月10日 17時0分
Finasee(フィナシー)
日本では、これから定年を迎える女性が増えると予想されています。
こうした女性たちが“明るい定年後”を迎えるには――? 長寿化とライフスタイルの多様化が加速する日本において、今後、ますます重要度が増すであろうこの問いにさまざまなデータとともにヒントを送るのが、話題の書籍『女性と定年』です。
今回は特別に、同書の第1章『これから増える定年女性』、第2章『女性の定年とお金』の一部を公開します(全3回)。
●第2回:事務職は倍率100倍にも…定年女性を待ち受ける「仕事探しのシビアな実情」
※本稿は『女性と定年』(小島明子著・金融財政事情研究会)の一部を再編集したものです。
多様化する配偶者・パートナーとの生活2014年に出版された杉山由美子氏の著書※1では、卒婚という言葉が話題になりました。「卒婚」とは結婚を卒業する、という意味ですが、離婚はせずに、子どもの独立や夫の定年退職を機に、結婚生活は続けながらも、お互いが自由な生活をするという形になります。定年を迎えた女性の中には、経済力もあり、定年後の再就職では、夫よりも活躍する女性が増えるかもしれません。コミュニティや生活のリズムも変わり、今までの生活スタイルを続けることにこだわらない女性が増えることで、夫婦の在り方も変化していくと考えます。
※1 杉山由美子『卒婚のススメ 人生を変える新しい夫婦のカタチ』(静山社文庫、2014年)
実際、長年連れ添った夫婦ほど、離婚の件数は増加しているという事実があります。厚生労働省※2によれば、2021年の離婚件数は18万4386件で、同居期間が5年未満で5万4510件と約3分の1を占め、結婚生活への見切りが早いことが読み取れます。加えて、1985年から比べると、同居期間が20年以上の離婚は、約2倍近くまで増えているのです。
※2 厚生労働省「令和3 年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」
●図表1 同居期間別にみた離婚件数の年次推移
注:同居期間不詳は含まない。出所:厚生労働省「令和3 年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」をもとに日本総合研究所作成
パートナーエージェント※3によれば、離婚に至った理由として、最も多いのが「性格が合わない」(55.6%)を挙げています。最近では、主に結婚年数が長くなった夫婦において、夫の言動によるストレスで更年期障害の悪化等をはじめとした体調不良を訴える妻が多いことから、石蔵文信氏が「夫源病」と命名しています。共働きが増えているにもかかわらず、女性の家事や子育ての負担は減っていません。フルタイムの仕事をこなしながら、家事や子育てまでこなさなければならず、その上、更年期障害や夫への気遣いなどから、ストレスを抱えている女性は多いと感じます。
※3 パートナーエージェント「「結婚観」に関するアンケート調査」
また、結婚のスタイルも多様化しており、別居婚や週末婚は、男性よりも女性のほうが関心が高いことが明らかとなっています。
●図表2 「結婚観」に関するアンケート調査
出所:パートナーエージェント実際、年齢を経てから、住まいを分けることで円滑な関係を築いている夫婦の話も耳にするようになりました。「夫源病」の予防はもちろんのこと、女性の経済力が向上し、健康寿命が延びることが予想される中で、夫婦の生活の在り方も、お互いの事情に応じて多様化していくことが求められているのではないでしょうか。さらに、社会としても固定的価値観にとらわれずに、多様化を許容する寛容さがあってもよいと考えます。
国立社会保障・人口問題研究所※4によれば、2020年時点で50〜59歳の男性の未婚率は、28.25%(1990年時点5.57%)、女性は17.81%(1990年時点4.33%)であり、1990年時点と比べると、約5倍近くまで増加しています。今まで仕事に専念してきた未婚女性の中には、入籍まではしなくても、将来を支え合える「友達以上恋人未満」のパートナーを見付けて、一緒に暮らしたり、住まいは異なっても定期的にお互いの家を行き来して過ごす、というライフスタイルも今後は増えてくるのではないでしょうか。
※4 国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2022年版)」
特別コラム:ミドル・シニアの婚活事情前述の通り、配偶者やパートナーとの過ごし方において多様化は進んでいますが、同時に初婚か再婚かにかかわらず、中高年になってからの結婚も今後増えていくと考えられます。そんな中高年のパートナー探しの最新事情、そしてこれからパートナー探しをする人に向けてのアドバイスを結婚相談所パートナーエージェント 成婚コンシェルジュ小崎佳澄氏に聞いてみました。
※ 本コラムでは一部抜粋にてご紹介いたします。
Q 結婚のために活動(以下、婚活)をされる中高年世代の方々は、昔と比べて違いはありますか。
現在の女性たちの多くは仕事を持ち、経済力や地位も向上していますので、婚活を行う上で男性に対して重視しているものが変化しています。以前は、女性の多くは、経済的安定を求め、パートナーに対して年収要件を重視していました。現在は、将来に向けて一緒に生きていきたいと思えるパートナーかどうかという点を重視している女性が増えています。
しかし、40歳代後半以降の男性は、いまだに女性が家事を担い、男性が稼ぐ、という意識を持っている方も少なくありません。加えて、男女ともに年齢が若い方を望んでいます。女性の場合は、平均寿命が長いので、10歳程度、年齢が若い男性が自分と丁度よいくらいだと思っているようです。男性は子どもが欲しい方もいるので、若い女性の方を探しておられる方が多いです。結婚相談所に申し込んでこられる段階では、男女ともに希望と現実にギャップが生じています。
Q どのような方々が婚活を通じてうまくパートナーを見付けることができるのでしょうか。
どちらが何をやるというのではなくて、2人で一緒に協力して1つのものを作り上げていくという意識を持てる方々が自分にとって良いパートナーを見付けています。お互い相手を尊重することができるということが大切なのです。結婚相手に対して求める年齢や家事分担などはあくまでも自分の価値観ですので、そこに固執する方はうまくいきません。自分の心の中で、重視をしているものをきちんと理解した上で、相手に求める外形的な条件については、必要に応じて方向転換ができる柔軟性のある方が、男女ともにパートナーを見付けられるケースが多いと感じます。中高年の場合は、同じくらいの年収や年齢で、志も似ていて、休日はお互いを高め合えるような相手と結婚されている方々が多いと感じます。
Q 結婚後も長く続いている方々の特徴を教えていただけないでしょうか。
仕事をしている女性が多いことから、家庭内でも対等な立場を望んでおられる女性が多くなっています。離婚に至るケースはいろいろありますが、昔は、夫の収入が少なくても、我慢してでもこの人と一緒にいなければならないという感じでしたが、今の女性は収入があるので、離婚しやすくなっています。そのため、目指すべき結婚生活に対する意識を共有するためのコミュニケーションをきちんと取ることが重要です。
男性の年収よりも、いかに自分を大事にしていくかという点を重視している方が多いので、生活にかかる費用は自分が出すのでやってほしい家事などを明確にする方もいます。最近では、パートナーは探していても、週末婚や事実婚という形を望む方も増えてきています。
Q 日本社会における中高年の結婚はどう変化していくと思われますか。
昔は、配偶者が亡くなった後は、再婚等をせずにお迎えの日が来るのを待っていた方が多かったと思いますが、今は、自分の幸せのために、歳をとっても再婚する方(あるいは再婚を希望する方)は増えてきています。体力的、精神的な面でも今の中高年世代は若いと感じますので、人生の豊かさのために、いくつになっても良いパートナーを見付け、一緒に過ごすことは大切なことだと思います。
Q 中高年になっても良いパートナーに巡り合うための秘訣を教えていただけないでしょうか。
身なりを整えて、健康で清潔であることがとても大切です。女性であれば、家にいてもきちんと化粧をするという意識の高さがあってもよいと思います。身なりをきれいにしなくなるのは、人生をあきらめるということと同じですし、誰かに出会いたいという願望がないからきれいにしなくなるのではないでしょうか。人間としての幅を広げていくという意味では、仕事だけではなく、趣味を持ち、友人を持つことも大切です。人生をあきらめずに、何かの目標に向かっている人は輝いていますし、男女ともに誰かにとって素敵にみえる瞬間があります。そこを何よりも大事にされたらよいと思います。
女性と定年
小島明子 著
発行所:金融財政事情研究会
定価:1,980円(税込)
小島 明子/日本総合研究所 スペシャリスト
CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、国家資格キャリアコンサルタント。金融機関を経て日本総合研究所に入社。IESS客員主任研究員兼務。環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点からの企業評価業務に従事。その一環として、女性を含む多様な人材の活躍推進に関する調査研究、企業向けに女性活躍や働き方改革推進状況の診断を行っている。主な著書に「女性発の働き方改革で男性も変わる、企業も変わる」(経営書院)、「わたしのための金融リテラシー」(共著・金融財政事情研究会)。
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