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「社員に優しい会社」が学生人気の秘訣? 大和証券の今どき働き方改革とは

Finasee / 2023年5月26日 17時0分

「社員に優しい会社」が学生人気の秘訣? 大和証券の今どき働き方改革とは

Finasee(フィナシー)

・就活生人気No.1 ソニーグループ賃上げの理由とプレステ誕生秘話

来春に卒業する大学生を対象とした大規模な調査で、2024年入社希望企業のトップに輝いたのは総合商社の伊藤忠商事だった。第2位は生命保険トップの日本生命保険、そして、第3位には証券界から大和証券が選ばれた。

調査は文化放送キャリアパートナーズが2023年3月15日までに2024年3月卒業予定の約2万5000人の大学生を対象に行った。調査対象者の規模の大きさ、そして、回答者の約76%が文系という割合からも全国の大学生の平均的な企業イメージを表していると考えられる調査で、実は、トップ3は2022年3月卒業予定者から3年連続で同じ順位になっている。

学生が入社したいと希望する就職先は、業界選びが先行し、その業界のトップ企業が選ばれる傾向が強い。伊藤忠や日本生命は、まさに業界を代表する企業といえるが、証券界のトップ企業の野村證券ではない大和証券がなぜ、しかも、メガバンクを差し置いて、これほど高い評価を学生から勝ち得ているのだろうか?

就活生人気ランキング不動のトップ3

文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所が実施している「就職ブランドランキング調査」の過去ランキングは、2015年頃は、トップに三菱東京UFJ銀行(現在の三菱UFJ銀行)が入るなど、金融業界のトップは「銀行」だった。次いで、金融業界で選ばれたのは、証券業界トップの野村證券だった。その傾向が変わるのは2020年3月卒業予定者からで、金融業界のトップが日本生命保険になり、次いで、大和証券が選ばれるようになった。そして、野村證券は、SMBC日興証券にも抜かされて証券業界で第3位に後退した。その後も、日本生命と大和証券は、そろって順位を上げ、3年前からトップに伊藤忠商事を置いて不動のトップ3となっている。

バブル崩壊と証券業界

大和証券は、日本がバブル時代といわれた1980年代に「大手4社(野村・日興・大和・山一)」の一角を占める証券業界のリーダーだった。バブル崩壊後に、山一証券が経営破たんし、日興証券が三井住友銀行の子会社SMBC日興証券になっていく中で、大和証券は野村證券とともに大手証券としての体面を保ち続けた存在といえる。ただ、大和証券は1998年に住友銀行(現三井住友銀行)と資本・業務提携で合意し、大和証券グループ本社を持ち株会社にする体制にするとともに、法人部門を住友銀行との共同出資会社に分離したことがあった。2009年に三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)との資本・業務提携を解消した頃が総合証券としての正念場だったと考えられる。パートナーだったSMBCは、かつてのライバルであった日興証券を買収し、大和証券を明確な競合社と位置付けた。その後、大和証券は2012年4月に法人専門の証券子会社を吸収合併し、リテール・ホールセール一体の総合証券に戻っている。

女性活躍、ワーク・ライフ・バランス推進が学生人気の向上へ

大和証券の人事制度の革新は2005年、当時の鈴木茂晴社長が、女性が活躍する職場づくりを検討する「女性活躍推進チーム」を発足させた頃に本格化した。2007年には「19時前退社」の全店での励行を始めるなど、業界で先行して働き方改革に取り組み始めた。2008年には鈴木社長がヘッドを務める「ワーク・ライフ・バランス推進委員会」を設置し、2009年に業務職(一般職)から総合職への転向を可能にする「職制転向制度」を拡充した。このような結果、年次休暇の取得率が向上し、月ごとの労働時間も約10時間削減されるなど、社員の働き方が変わった。また、CFP(認定ファイナンシャルプランナー)の資格保有率が金融業界でトップを占めるようにもなり、学生の就職企業人気ランキングも向上することにつながっていった。

大和証券の人材力とハイブリッド戦略

証券会社をはじめ、金融業は「人材が全て」といえるサービス業だ。学生から高い就職希望を集め続けることは、それだけ優秀な人材の獲得につながるといえる。業績面では、営業収益で依然として最大手の野村證券との差は大きく、また、証券口座数では新興のネット証券がはるかに多くの口座を獲得している。証券会社としての経営は決して楽ではない。現在、大和証券グループは、本業である証券業とはリスクプロファイルが異なるビジネスに取り組むことで、証券業とのシナジーを生みながらグループ全体利益の安定的な拡大を図る「ハイブリッド戦略」に取り組んでいる。不動産アセット・マネジメントビジネスや銀行ビジネスなど、ハイブリッドビジネスから得られる収益は2021年度には収益割合が46%にまで高まった。このような多様なビジネスを支えるのもまた、人材あってこそだ。

「社員に優しい会社」を推進した鈴木茂晴氏はその後、日本証券業協会の会長となった。

会長退任後も、先日は自らが理事長をする筑波カントリークラブで岸田総理とともにゴルフを楽しんでいる。なお、タレントの鈴木凛さんは鈴木茂晴氏の娘である。

 2024年から始まる「新NISA」は、伝統的な証券ビジネスの再加速が期待されている。鈴木茂晴氏が2005年から推進した「社員に優しい会社」が、顕著に人材を引き付けるようになり、その人材がこれから戦力化するステージを迎える。新NISAスタートという時代の追い風を得て、大和証券の人材戦略がその結果を出すことができるのか?見ものだ。

文/ 徳永 浩

Finasee編集部

金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。

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