長時間労働が常態化…残業規制の適用外?「保護されない」ある業界
Finasee / 2023年6月29日 7時0分
![長時間労働が常態化…残業規制の適用外?「保護されない」ある業界](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/finasee/finasee_12150_0-small.jpg)
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2018年6月29日、「働き方改革関連法」が成立しました。これに伴い労働基準法が改正され、同法に初めて罰則付きの労働時間規制が導入されます。
私たちの働き方はどのように変わったのでしょうか。
時間外労働を原則45時間までに限定2019年4月施行の改正労働基準法により、残業時間の上限が明確になりました。企業が従業員に残業させる場合は労使間の合意(36協定)を必要とするルールは維持し、合意があっても原則として月45時間、年間で360時間を超えて残業させることは禁じられるようになります。
実は改正前も同様の規制はあったものの、臨時的な特別な事情がある場合は、合意に特別条項を設けることで実質的に制限なく残業させることができていました。この改正で残業時間の上限が法的に設けられ、これを超える残業は違法であることが明確化されています。
また特別条項にも要件が設けられ、単月で100時間、年間では720時間を超えてはいけないこととなり、かつ2~6カ月平均の全てで80時間以内とすることが条件となりました。さらに特別条項を設けて月45時間を超えて働かせる場合も、その月は年6カ月を超えてはならないとする規制も導入されています。
【労働基準法の改正による残業時間の上限(2019年4月)】
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※1.中小企業は2020年4月から、一部の事業・業務は2024年4月から
※2.時間外労働が月45時間を超えられるのは年6カ月が限度
※3.建設事業、自動車運転の業務、医師、鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業、新技術・新商品等の研究開発業務を除く
出所:厚生労働省 時間外労働の上限規制わかりやすい解説
これらに違反すれば罰則(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科される可能性があり、行政指導しかなかった従前と比べれば、労働者の保護は大きく前進したといえるでしょう。
残業が多いのはどの業界?ところで、残業はどのような業界で多いのでしょうか。厚生労働省の「毎月勤労統計調査(2022年分確報)」によると、1月あたりの所定外労働時間は「運輸業、郵便業」が約22.6時間で最大でした。これは平均(同10.1時間)の2.2倍以上にもなります。「運輸業、郵便業」は総実労働時間でも最大となっており、長時間労働が常態化している様子がうかがえます。
【労働時間上位5産業(2022年)】
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出所:厚生労働省 毎月勤労統計調査(2022年分確報)
運輸業などで労働時間が長期化しているのは、他業種とのルールの違いも理由にあるでしょう。先述の改正労働基準法による労働時間規制は、実は特定の業種には猶予期間が設けられており、トラックドライバーといった自動車運転業務者に適用されるのは2024年4月からです。この違いが長い残業時間につながっている可能性があるでしょう。
なお、法律が適用されたあとも、トラックドライバーには他業種より長い残業が認められることとなっています。年間の時間外労働時間を720時間とする規制は、自動車運転の業務者においては960時間となっており、また他業種で適用される単月で100時間、2~6カ月平均80時間までとする規制もトラックドライバーには適用されません。
【法令上の残業時間の上限(特別条項付きの労使間合意がある場合)】
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出所:厚生労働省 時間外労働の上限規制わかりやすい解説
トラックドライバーは荷物の積み下ろしや荷待ちなどで労働時間が長くなりやすい事情があり、上述したルールの違いはこれを反映したものだと考えられます。もっとも行政上は長期間労働を是正するルールが強化されてきており、物流業界ではドライバー不足を心配する声が聞かれるようになっています。
労働時間の抑制で収入減…副業で埋め合わせできる?残業は身体的な負担が重いものの割増賃金を受け取れることから、労働者の収入が増加する側面もあります。しかしこれまで述べてきたように労働時間の規制が強化されてきており、以前のように長く働くことが難しくなってきました。収入の減少に悩んでいる人もいるかもしれません。
副業を行い、本業とは別に収入を得る方法はどうでしょうか。転職をサポートする「doda(デューダ)」が2022年8月に調査したところ、正社員の8.2%が副業を行っており、その月収平均は5万1218円となりました(出所:転職サービスdoda「副業の実態調査」)。減少した収入を賄う方法として、副業は選択肢の1つになりそうです。
ただし、会社員の副業は就業規則に注意してください。副業を禁じる規定がある場合、ペナルティーを負う可能性があります。実際に働き始める前に、必ず確認するようにしましょう。
執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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