「何て寂しいんだろう」喪失感埋まらず一大決心…ある新聞記者の定年後
Finasee / 2023年6月12日 11時0分
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Finasee(フィナシー)
定年後のキャリアに資格取得は必要? 不必要?
定年後の仕事に役立てようと資格取得を考える方は多くいます。一般的に「資格を持つことで仕事に有利に働く」という考えが浸透しているからです。その一方で、「資格を取っても、仕事に直接役立つことはないのでは?」と思われる方もいるでしょう。
これはある意味どちらも正しいと言えます。
ただ、定年後の60代においては、資格を取ることでいくつものメリットを享受できることをご存じでしょうか? 今回は、定年退職後に“行政書士”の資格を取られた「Hさん」のケースを見ながら考えます。
新聞記者をしていたHさんの定年後Hさんは現役時代、新聞記者をしていました。60歳で定年を迎えてからは、65歳まで再雇用で働き、65歳で退職されました。
現役時代は仕事一筋だったHさん。定年後のことは具体的には計画していなかったため、退職してから「さて、どうしようか」と考え始めました。
退職後しばらくは、現役時代に仕事が常に立て込んでいたこともあり、忙しく動き回る必要のない解放感に浸っていました。
しかし、新聞記者で走り回っておられた習慣からでしょうか、こうした状態は2週間ともたず、だんだんと退屈さを感じてきました。
「こんなことを続けていていいのだろうか。何だか面白くないな」
それもそのはず、現役時代に忙しい日々を送ってきた方ほど、退職後は虚無感とも言える物足りない気持ちになる方も少なくないのです。
そこで、多くの方が「定年後は趣味を謳歌しよう」と考えるのと同じように、Hさんも行動を起こしました。
Hさんは、63歳の時「老後の趣味に」と始めたピアノを弾いてみたり、車好きが高じて買ったスポーツカーでドライブをしたり……。しかし、趣味だけでは心に空いた穴を埋められず、あることに気づきました。
「趣味は食事で言う“前菜”か“デザート”だったんだ。人生最後の食事にメインディッシュ(仕事)がないのは何て寂しいんだろう」
仕事探しをスタート人生には仕事が必要だ。そう気付いてからのHさんの行動は早いものでした。
まずは仕事を探しにハローワークに行ってみます。しかし、期待に反して希望する職種は見つかりません。かろうじて見つけた希望に近い職種に応募しても、年齢という高い壁が立ちはだかり全滅してしまいました。
ですが、そこで諦めないのがHさん。希望の仕事がないならばと、地元の商工会議所が開催している「創業塾」(※)の門をたたきます。
※高齢者に向けて起業のノウハウを教え、サポートを行う塾・セミナーは民間・行政問わず提供されています。現在行政は高齢者の創業支援に力を入れているので、各自治体でも見つけることができます。
Hさんはその塾の講師に、「Hさんは新聞記者だったから、新聞記者が行政書士になるのも面白いのではないですか?」と促されました。
「講師の人がそう言われるのだから、やってみてもいいかもしれない」と考え始め、思い立ったが吉日、早速帰りに書店に立ち寄って対策本を購入しました。
初めはそこまで興味があったわけではありませんが、学び始めると案外面白く感じるものでした。また、久しぶりに腰を入れて勉強を始めたので、学生時代に戻ったような感覚もあります。
その後は「1人でやるより学校で学ぼう」と思い立ち、週1で専門学校に通うことに決めました。
見事合格するも…よぎる将来への不安そうして鋭意努力した結果、Hさんは67歳で見事試験に合格しました。半年後には行政書士事務所を開業するまでこぎつけます。専門は「遺言書作成」と「相続業務」です。
しかし、なにしろ初めての経験ですから、もちろんすぐに仕事が殺到するわけではありません。すべてが手探り状態からのスタートでした。
「無事開業はできたものの、さて、これからどうなるんだろう」
先の見えない開業には大きな不安が頭をよぎりました。しかし、この後Hさんは自身が選択した資格取得とセカンドキャリアに、思いがけない“メリット”を感じることになるのでした。
●不安でいっぱいのHさんが感じた予想外のメリットとは何だったのか――?
続きは、後編【定年後に一念発起し“士業”へ転身―「手に職」で叶えた孤独との決別】で解説します。
髙橋 伸典/セカンドキャリアコンサルタント・モチベーション総合研究所代表・東京定年男女の会主宰
1957年生まれ。57歳で早期退職するも、多くのつまずき、苦労を経験する。しかし試行錯誤を重ねることで乗り越え、リスクなく独立する道をつかみ取る。東京都主催の東京セカンドキャリア塾、各自治体などでセミナーを行う。雑誌やウェブメディアでは、セカンドキャリアに関する寄稿の実績多数。著書に「定年1年目の教科書」(日本能率協会マネジメントセンター)がある。
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