「楽天・全米株式インデックス・ファンド」が「S&P500」より高リスクな理由
Finasee / 2023年6月2日 19時0分
Finasee(フィナシー)
アメリカにまるごと投資するインデックス型投信
2023年5月、「楽天・全米株式インデックス・ファンド」(愛称:楽天・VTI。以下同)の純資産総額が9000億円を突破しました。ほぼ全てのアメリカ株式に投資する銘柄で、運用資産は設定から右肩上がりに増加しています。
【楽天・全米株式インデックス・ファンド】
出所:投資信託協会 投信総合検索ライブラリーより著者作成楽天・VTIにはどのような魅力があるのでしょうか。
つみたてNISAで「VTI」に投資できる貴重なファンド楽天・VTIの魅力として、つみたてNISAで「VTI」に投資できることが挙げられるでしょう。
VTIとは米バンガード社が運用するETF「バンガード・トータル・ストック・マーケットETF」(愛称:VTI)のことです。アメリカ株式のほぼ全てに投資するETFで、経費率が年0.03%と非常に低いことから投資家に人気があり、純資産総額は2023年4月末時点で1.3兆ドル(約182兆円)にも上っています。
VTIは多くの証券会社で取り扱いがあり、直接購入することもできますが、つみたてNISAでは投資することができません(2023年5月29日時点)。つみたてNISAでVTIへ投資するには、VTIで運用されるつみたてNISA対象ファンドを購入する必要があります。
つみたてNISA対象商品のうち、VTIで運用される銘柄は2本しかなく、楽天・VTIはその貴重な1本です(2023年5月29日時点)。またもう1つのVTIファンドが設定されたのは2021年6月と遅く、それまでは実質的に唯一の選択肢でした。つみたてNISAでVTIに投資できる点は、楽天・VTIの大きな強みといえるでしょう。
成長するアメリカ経済に投資できるアメリカ経済の恩恵に期待できる点も、楽天・VTIの強みです。
アメリカは世界最大のGDPを誇る経済大国で、今後も増加する人口を背景に堅調な発展が見込まれています。ほぼ全てのアメリカ株式に投資する楽天・VTIはその恩恵を受けやすく、アメリカ経済の成長に合わせて値上がりに期待しやすいでしょう。
【アメリカの名目GDPと人口の推移】
出所:IMF 世界経済見通しデータベース(2023年4月)より著者作成実績も申し分ありません。設定来リターンは2023年4月末時点で100%を超えており、設定日に購入した人は投資額が倍になっている計算です。各年のリターンも、概ねプラス方向に偏って出現していることがわかります。過去のリターンは将来の値動きを保証しませんが、好成績を残したファンドはやはり投資家の期待が集まりやすく、楽天・VTIに資金が集まる理由の1つと考えられます。
【楽天・全米株式インデックス・ファンドのトータルリターン】
出所:投資信託協会 投信総合検索ライブラリーより著者作成なぜ「全米」は「S&P500」よりリスクが高い?楽天・VTIは、アメリカ株式のほぼ全てを網羅する「CRSP USトータルマーケットインデックス」への連動を目指すインデックスファンドですが、同じアメリカの株価指数である「S&P500」への連動を目指すインデックスファンドとよく比較されるようです。
どちらの株価指数もアメリカ株式のみで構成される点では同じですが、大まかには以下のような違いがあります。
【株価指数の比較】
CRSP US
トータルマーケット
インデックス
出所:CRSP、S&P・ダウ・ジョーンズ・インデックス
分散投資の観点では、CRSP USトータルマーケットインデックスの方がリスクは下がりそうですが、実はこれまでS&P500よりもやや大きな値動きが生じる傾向にありました。これは構成銘柄の規模の違いが関係していると考えられます。
S&P500は大型株のみで構成されますが、CRSP USトータルマーケットインデックスは規模の小さい企業の株式も含まれます。小型株は成長過程にあることが多く、事業が成熟した大型株と比べると値動きが大きくなりやすい傾向にあります。このため、CRSP USトータルマーケットインデックスの値動きは、S&P500よりも大きくなりやすいといえます。
もっとも、CRSP USトータルマーケットインデックスも大部分は大型株で構成されており、S&P500と値動きに違いはほとんどありません。アメリカ株式で運用したい人のうち、「少しでもリスクを取って積極的な運用をしたい」という人は楽天・VTIを選んでみてはいかがでしょうか。
【楽天・全米株式インデックス・ファンドの概要】
銘柄 楽天・全米株式インデックス・ファンド(愛称:楽天・VTI) 運用会社 楽天投信投資顧問 ファンドのタイプ 海外株式型 設定日 2017年9月29日 信託期間 無期限 決算日 7月15日 受渡期間 5営業日 販売手数料(最大、税込み) なし 信託報酬(全体、税込み) 0.162% 信託報酬(販売会社、税込み) 0.055% 信託財産留保額 なし 主な販売会社 SBI証券
楽天証券
マネックス証券
執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。
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