24億が4000億に… テスラ株で「大もうけ」したパナソニックが喜べない理由
Finasee / 2023年6月2日 17時0分
![24億が4000億に… テスラ株で「大もうけ」したパナソニックが喜べない理由](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/finasee/finasee_12160_0-small.jpg)
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世界的にEV(電気自動車)へ移行する動きが強まる中、車載電池大手の「パナソニックホールディングス」に注目が集まっています。同社はEV向け車載電池で世界4位のシェア(2022年)を持つとされており、電池事業はパナソニックの重要な収益源となっています。2022年3月期は、セグメント別の営業利益率で車載電池などを含む「エナジー」が最大となりました。
【セグメント別の営業利益(2022年3月期)】
![](https://finasee.ismcdn.jp/mwimgs/d/f/800m/img_df18e812894b64c8f56d20532307792358060.jpg)
出所:パナソニックホールディングス 決算短信(2022年3月期)より著者作成
脱炭素の流れから、電池に対する需要は強まることが予想されています。日本を代表する電池メーカーでもあるパナソニックに、今後も期待が向かうかもしれません。
そこで、パナソニックとはどのような会社なのか、同社の沿革や過去のエピソードを振り返ってみましょう。
「経営の神様」松下幸之助が興した100年企業パナソニックは、「経営の神様」とも称される松下幸之助(まつした・こうのすけ)によって創業された企業です。
わずか9歳から大阪で働いていた松下は、市電が電気で走るのを目にし「今後は電気の時代が来る」と確信します。そして15歳のとき、大阪電灯(現・関西電力)に見習工として就職しました。そこで松下は異例のスピードで出世し、電気事業の才覚を現します。
その後松下は独立し、1918年に現在のパナソニックホールディングス(当時は松下電器具製作所)を設立しました。画期的な製品を次々と世に送り出し、一代で大企業へと成長させます。
業績を拡大させた功績もさることながら、松下は経営に対する先進的な考えを持っていたことを支持されることが多く、死後30年以上たつ現在も氏を慕う声が後を絶ちません。
従業員や販売網の拡大から社会とのつながりを意識し始めた松下は、企業の在り方について熟考するようになります。そして1929年、「企業は社会の発展と生活の向上に貢献し、その報酬として利益がある」という考えに至り、その旨を「綱領・信条」として明記しました。
【1929年当時の綱領】
営利と社会正義の調和に念慮し、国家産業の発達を図り、社会生活の改善と向上を期す
引用:パナソニックホールディングス 社史
今でこそ利益のみ追求する企業は批判されがちですが、90年以上前に同様の考えを持っていたことは、まさに「経営の神様」と呼ばれるゆえんでしょう。この綱領は修正が加えられたものの、現在もパナソニックの「経営基本方針」として受け継がれています。
流通業界を騒然とさせた「ダイエー・松下戦争」とはパナソニックは創業期から販売価格に対する強いこだわりを持っていた企業でした。1935年頃は小売店が自由に価格を決めていたことから、高すぎる価格で販売し顧客の不信を買ったり、逆に極端な値引きで小売店の採算が悪化したりと、混乱を招いてしまいます。この打開を目指し、パナソニックは適正価格での販売運動を展開しました。
このこだわりは、戦後に「ダイエー・松下戦争」と呼ばれる対立に発展します。この時期は小売りの花形が百貨店からダイエーのような総合スーパーに移り、メーカーと小売店の力関係に変化が生じてきたタイミングでもありました。
1964年、低価格を武器に規模を拡大していたダイエーは、当時の松下電器産業のテレビも値下げして販売します。その価格が松下電器産業の求める水準を下回っていたため、松下電器産業はダイエーへの出荷を停止しました。これに対し、ダイエーは1970年に「ブブ」のブランド名でより低価格の家電製品を投入し、両社の関係悪化は決定的となります。この対立はおよそ30年続き、両社の取引が再開されたのは1994年のことでした。
パナソニックは、実は現在も同じように小売店の値下げを制限する取引を一部で導入しています。ただし独占禁止法違反とならないよう、在庫リスクをパナソニックが引き受ける仕組みとなっています。
パナソニックがテスラ株の大もうけを喜べない理由パナソニックはEV大手のテスラに車載電池を供給していることで知られています。パナソニックは2007年にテスラ(当時はテスラ・モーターズ)と提携し、2010年にはテスラ株式140万株を3000万ドル(約24億円)で取得しました。また2014年には当時世界最大規模の生産能力を持つ「ギガファクトリー」の建設でも協力を発表しており、両社の蜜月関係は盤石かと思われていました。
しかし2021年6月、パナソニックが公表した有価証券報告書から、同社が2021年3月期に全テスラ株式を売却していたことが判明します。売却代金は約4000億円とみられており、約24億円の出資額をおよそ166倍にまで増やしたことになります。当時テスラ株式は急騰しており、パナソニックは大きな利益を得ることとなりました。
【テスラの株価(月足終値 2010年7月~2021年3月)】
![](https://finasee.ismcdn.jp/mwimgs/e/2/800m/img_e28fb7095bfc9c2f36f7aee6e325425945045.jpg)
出所:Investing.comより著者作成
巨額な利益を得たはずのパナソニックですが、今後の先行きを心配する声は少なくありません。パナソニックによるテスラ株式の売却が明らかになって以来、両社の関係を危惧する報道がますます増えています。テスラは以前から電池の自社生産を計画していると伝えられており、またパナソニックはテスラ以外のEVメーカーへ電池の供給を拡大しています。
テスラは2022年のEV販売で世界1位のシェアを持つとみられており、パナソニックにとっては重要な顧客の1つです。テスラ株式の売却後も両社は提携を続けるとしていますが、今後の動向が注目されています。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
Finasee編集部
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