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ワンルームマンション投資で「老後も安心」が一転…有名企業勤めの会社員を襲った危機

Finasee / 2023年6月5日 11時0分

ワンルームマンション投資で「老後も安心」が一転…有名企業勤めの会社員を襲った危機

Finasee(フィナシー)

投資用、居住用を問わず不動産に関するトラブルは後を絶ちません。この連載では、不動産にまつわる数々の相談に乗ってきた不動産鑑定士の福田伸二さんが、皆さんの「不動産リテラシー向上」に役立つ情報を事例と共にお届けしていきます。今回も、前回に続きワンルームマンション投資にまつわる“落とし穴”を解説してもらいます。

*** 年収500万で物件2戸買い!? 驚きの実情

前回(外資系エリートもパワーカップルも陥る…「ワンルームマンション投資」の落とし穴)では、ワンルームマンション投資の注意点をお話しさせていただきました。

そもそも、なぜ皆さんがワンルームマンション投資に気軽に手を出してしまうかというと、1つには頭金が少なくてもフルローンが組めるからです。そのため、当社にご相談に来るワンルームマンション投資でお悩みのお客さまは、20代、30代の若年層もたくさんいらっしゃいます。「若いのに?」と思われたかもしれませんが、むしろ手元の資金が少ない若い方々ほど、頭金をさほど入れなくてもチャレンジできるワンルームマンション投資に大きな魅力を感じることが多いようです。

不安の多い時代ですから、特に真面目な方ほど、「何か投資をしなければ」とワンルームマンション投資を選択されますが、今回も典型的な例を、仮にAさんとしてご紹介しましょう。

<ご相談事例>
Aさん
年齢:29歳・独身(購入時)
勤務先:インフラ関連企業
年収:約500万円
所有物件:都内のワンルームマンション、同じフロアの2室(物件価格2000万円台×2)を購入

「20代でマンションを2部屋も所有!?」と驚いた方も多いのではないでしょうか。しかもAさんの勤め先はインフラ系で多くの人が知っている有名企業とはいえ、年収は500万円台です。決して年収1000万プレイヤーや、高収入のパワーカップルというわけではありません。こういった方でも、公務員であったり、お勤め先がガス・電気会社といった倒産リスクの低い業種であったりした場合は、年収400~500万でも銀行のローン審査に通ります。そこで、若いうちからフルローンを組んでワンルームマンション投資にチャレンジする例が多いようです。

「勝ち組」の先輩に誘われて意気揚々と物件オーナーに

Aさんがワンルームマンション投資を始めたきっかけは、会社の先輩であるBさんに声をかけられたことでした。Bさんは副業としてワンルームマンション投資を始め、その時点でかなりの利益を得ていました。「この価格で買って、ここまで値上がりしたぞ」「お前もやってみないか?」と誘いを受け、Aさんもすっかりその気になりました。

大企業に勤めているといっても、いつ何があるかわからない時代です。将来のために、今から手を打っておきたいと常々考えていたAさん。AさんはBさんがワンルームマンションを買った不動産業者を直接紹介してもらい、早速手ごろな物件を見つけてローンを組み、物件購入に踏み切りました。

“紹介”の威力は大きく、実際に「友人から誘われて」「上司に声をかけられて」不動産投資をする方は、かなり多いです。中には1つの不動産会社が、役員クラス以下社歴の短い若手までを対象に会社の隅々に入り込んで紹介セールスを展開し、紹介料の授受が行われているケースもあります。

こうして、晴れて物件オーナーとなったAさん。老後の安心ができたと、ほっとしました。しばらくして同じ業者から誘いを受け、所有物件と同フロアのワンルームマンションをもう1部屋買い足しました。

こんなはずじゃなかった!  ガックリと肩を落とし…

しかし、1年、2年経つうちに、Aさんは思ったよりこの投資がもうかっていないことに気づきます。それどころか、家賃が入って来ても、ローンや経費を支払うと毎月マイナスが出ており、入居者が入れ替わるタイミングでは、原状回復費やら入居者募集費やら思いもよらなかった高額出費が発生し、不安になったAさんは、私たちのところに相談に来ました。

「なぜ先輩は上手くいっているのに、自分はもうからないのか!?」。Aさんは納得がいかなかったと思います。もちろん、Bさんが故意にAさんをだましたわけではありません。前回ご説明した通り(不動産鑑定士が警告する「やってはいけない」マンション投資とは?)、ワンルームマンション投資で成功するには、まずは「安い時に買う」ことが大事です。

先に投資で成功していたBさんは、おそらく都内の不動産が値上がりしてピークを迎える前にワンルームマンションを買い、家賃収入をある程度得た上でいい形で売却できていたのでしょう。「もうかっている人も確実にいる」のです。

しかし、Aさんの購入物件は高値づかみとなっており、ローンや経費と相殺すると利益が出ない構造で、持ち続けてもキャッシュフローが改善されそうにありませんでした。まだまだ若いAさん、早めに手を打てば資産形成のやり直しが十分に可能です。そこで、私共はAさんと何度もご面談を重ね、ご売却の結論に至りました。

ところが、いざ売却を進めようとしたところ、これが簡単ではありませんでした。なぜなら、Aさんの購入した物件にはサブリース契約がついており、このサブリース業者が強烈だったからです。

家主なのに自由に売却できない?  まさかの事態とは

前回の記事でも、サブリース契約について簡単に触れましたが、サブリースとは家賃の10%~20%を毎月手数料として払えば、入居者が見つからない場合も物件の管理業者(不動産業者)が家賃保証をしてくれるという契約です。

一見、空室リスクを回避できる、とてもいい契約に見えます。家主にとって「賃貸物件が埋まらない」というのは、一番怖いことですから、ワンルーム投資をされる方は必ずといっていいほどこの契約を付けます。

しかし、このサブリース契約、問題点が多いことも事実で、トラブルが多発したために社会問題にもなり、2021年に新たな法律が施行されたほどなのです。しかし、一般の方には、そのリスクがあまりにも知られていません。

結論としては、Aさんはサブリース契約をした不動産業者(つまり販売業者)に物件を買い取ってもらい、この投資から手を引きました。ローンの残債もありましたから、結果的に2物件で200万円ほどの持ち出しとなり、大きな痛手を負いました。なぜ、こんなことになったのでしょうか。家賃保証があり、もうかるはずだった賃貸経営。Aさんのケースのどこに問題があったかを、後編(「家賃保証」の甘言に注意…売るに売れない「サブリース契約」の恐ろしい盲点)で詳しく解説します。

※プライバシー保護のため、実際のエピソードから一部変更しています。

 

福田 伸二/不動産鑑定士

POLUSグループを経て、大和不動産鑑定株式会社に入社し、東京本社鑑定部課長、鑑定証券化部次長を最後に退社。その後、売買仲介・コンサルティング業務に従事し、J-REIT上場のアドバンス・レジデンス投資法人の運用会社で外部委員も務める。毎年100件以上にわたる収益物件の鑑定評価書の発行や、東京都税事務所のアドバイザーとして相続税路線価のアドバイス業務に従事。2020年にファイナンシャルスタンダード入社。

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