ソフトバンク誕生の影にシャープあり? 孫正義が「先生」と慕った男の正体
Finasee / 2023年6月6日 17時0分
Finasee(フィナシー)
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半導体設計大手の英アーム社は2023年4月、アメリカへ上場を申請しました。同社はソフトバンクグループの傘下にあり、今後は新規上場で手にする巨額な資金の使い道が注目されそうです。
ソフトバンクグループは、現在では多くの革新的な企業へ投資するコングロマリットとして知られています。同社はいかにして現在の地位を手に入れたのでしょうか。その軌跡をたどりましょう。
創業のきっかけは「ロケット・ササキ」との出会いソフトバンクグループの設立には1人の工学博士が大きくかかわっています。博士の名は佐々木正(ささき・ただし)、シャープで小型電卓の開発を指揮し、世界で初めてLSI電卓を投入した人物で知られます。佐々木博士の開発スピードは目覚ましく、電卓を共同開発した米ロックウェルの技術者からは親しみを込めて「ロケット・ササキ」と呼ばれるほどでした。
ソフトバンクグループの創業者である孫正義(そん・まさよし)氏は、カリフォルニア大学在学中に佐々木博士と出会います。孫氏は日本に一時帰国し、開発した電子翻訳機をメーカーに売り込んでいたところでした。
他のメーカーがことごとく断っていたところ、佐々木博士は孫氏の熱意と先見性を見抜き、英語版の電子翻訳機を2000万円で買い取ることを即決しました。その後も複数の言語で出資したと伝えられており、総額は1億6000万円にも上るとみられています。
佐々木博士と孫氏のつながりは、これだけではありません。孫氏は電子翻訳機で調達した資金を基に1981年に現在のソフトバンクグループを設立するも、すぐに資金繰りに窮するようになりました。
孫氏は第一勧業銀行(現・みずほフィナンシャルグループ)に1億円の融資を申し込みますが、実績がないことを理由に断られてしまいます。それを聞いた佐々木博士は個人保証を引き受け、孫氏は無担保で1億円もの融資を受けられることになりました。孫氏が佐々木博士と出会わなければ、今日のソフトバンクグループはなかったかもしれません。
「ホワイトプラン」と「iPhone」でシェアを拡大ソフトバンクグループの成長は、通信事業という潤沢なキャッシュフローを生むビジネスを持っていたことが大きいとよく指摘されます。
ソフトバンクグループは2006年3月に英ボーダフォンを約89億ポンド(約1兆7500億円)で買収し、携帯通信事業へ参入します。そして翌年1月に「ホワイトプラン」を導入しました。これはソフトバンクユーザー同士の通話料が無料となる定額制のプランで、従量制の料金が一般的だった当時としては画期的なプランでした。ホワイトプランは、リリースから1年足らずで1000万契約を超える大ヒット商品となります。
さらに2008年6月、ソフトバンクグループはアップルと「iPhone」の販売ライセンスの契約で合意し、翌月に国内で初めてiPhone(iPhone 3G)を販売しました。これらの取り組みにより、ソフトバンクの契約数は飛躍的に増加します。
【ソフトバンクにおける「ホワイトプラン」と「iPhone」の主な出来事】
2007年1月:ホワイトプランリリース
2007年12月:ホワイトプラン1000万件突破
2008年6月:アップルと「iPhone」の販売ライセンスを契約
2008年7月:国内で初めて「iPhone」を販売
2008年11月:ホワイトプラン1500万件突破
出所:ソフトバンク プレスリリース
【携帯電話の累計契約数(2006年末=100)】
出所:電気通信事業者協会 携帯電話契約数より著者作成
サウジとUAEから資金を引き出した「ビジョン・ファンド」とは携帯電話事業を盤石なものとしたソフトバンクグループは、M&A攻勢を強め、日本有数の投資会社へと成長しました。それを象徴する出来事が「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の設立です。
ソフトバンク・ビジョン・ファンドは、テクノロジー分野へ出資することを目的に設立されました。孫氏の投資手腕は世界的に知られており、2017年5月までにサウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンドやUAEのムバダラ開発公社、さらにアップルやクアルコムといった大企業などから10兆円規模の出資を集めることに成功します。
2019年7月には第2号ファンドが設立され、同じく海外の大企業や国内の大手金融機関などから約12兆円の出資を集めました。これらを元手に、上場・非上場を問わず、主に世界のハイテク企業に幅広く投資しています。ほかに、ラテンアメリカ市場に特化して投資する「ソフトバンク・ラテンアメリカ・ファンド」も運用しています。
【ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資の状況(2022年3月末時点)】
ソフトバンク・ビジョン・ファンドのインパクトは大きく、2021年3月期には同ファンドの好調から4兆9879億円もの純利益を稼ぎだしました。これは国内企業で過去最大だとみられています。しかし翌期は反対に1兆7080億円の純損失となっており、また2022年4~6月は四半期として国内最悪とみられる3兆1627億円の赤字を計上しました。黒字でも赤字でも規模が桁違いに大きいソフトバンクグループの決算は、市場関係者の注目の的となっています。
【ソフトバンクグループの業績】
出所:ソフトバンクグループ 決算短信より著者作成
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。
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