1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

「稼ぐ方法を教える」と貸会議室で契約を迫られ…無料副業セミナーの落とし穴

Finasee / 2023年6月22日 11時0分

「稼ぐ方法を教える」と貸会議室で契約を迫られ…無料副業セミナーの落とし穴

Finasee(フィナシー)

警察庁の「生活経済事犯の検挙状況等について」では、検挙状況や相談件数、被害額などのデータだけでなく、実際にどのような犯罪が行われたのか、いくつか事例が挙げられています。詐欺が行われる経緯を知るうえで参考になるので、興味のある方は一度目を通してみてください。

本連載では、今回から数回、令和4年に検挙された資産形成事犯の実例を挙げて、その背景、手口、だまされないためのポイントを考えてみたいと思います。今回は、「FX投資助言業に伴う金融商品取引法違反等事件」という事例を見ていきます。

無料副業セミナーで投資助言料を徴収する手口

「生活経済事犯の検挙状況等について」に書かれている内容は以下のとおりです。

元会社役員の男(42)らは、令和3年3月から令和4年3月までの間、FX取引の投資助言を行う有料の投資顧問契約の締結の勧誘が目的であることを隠匿して、副業に関する無料セミナーの開催に係るインターネット広告を掲示し、同セミナー申込者を公衆の出入りがない貸会議室等に誘引して同投資顧問契約の締結について勧誘し、契約者に虚偽の事業者名等を記載した書面を交付するとともに、同投資顧問契約に基づき、内閣総理大臣の登録を受けないで、SNSでFX取引の投資判断に関する助言を行い、全国の延べ約1万4000人と約19億円の投資顧問契約を締結した。
令和4年9月までに、同男ら25人を金融商品取引法違反(無登録営業)及び特定商取引法違反(目的隠匿誘引等)で検挙した(大阪)。

出所:警察庁生活安全局 生活経済対策管理官「生活経済事犯の検挙状況等について」(令和5年3月)

文章がかたいので、読みにくいと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、どういう手口かと言うと、まず「副業に関する無料セミナー」を装って広告を出して、それにつられて集まった人を、ひと気のない貸会議室に引き入れる。

そこで「FXの投資助言を受けます」という契約書にサインをさせたうえで、多額の投資助言料を徴収する、というものです。しかも、事業者名を偽って、契約者にサインさせたということです。

よくぞ、ここまでめちゃくちゃなことができたものだなと感心させられます。FXの投資顧問契約締結を持ち出された時、恐らく多くの人は「副業じゃないではないか」と反論したと思います。

しかし、「本業を持って働いているのだから、FXでお金を稼ぐのも、デリバリーで働くのも同じ副業です。むしろFXなら自宅に居て、隙間時間にパソコンの前に座っていればお金が稼げるのですから、効率の良い副業です。その稼ぎ方を教えるために投資顧問契約を結んでもらうのです」などと言って、けむに巻いたのではないでしょうか。

実態はどうかわかりませんが、それでもこの事件では、全国の延べ約1万4000人もの人たちが、約19億円にものぼる投資顧問契約を結んだとされています。

朝日新聞にはもっと詳しい記事が掲載されていました。昨年8月の記事ですが、どうやらFXの有償オンラインスクールの契約を迫ったそうで、1人あたり約40~60万円の入会金のほか、投資の助言を受ける追加の契約金として、165万円を求めたとされています。

投資詐欺のうたい文句は変化している

かつて投資詐欺と言えば、「元本保証で高利回り」をうたい文句にしたものが大半でした。しかし、それがあまりにもたくさん行われたため、「元本保証を提示して不特定多数の人からお金を集めるのは、出資法違反」という理解が、大勢の人たちの間に定着しました。

そのためか、「元本保証、高利回り」をうたって資金集めをすると怪しまれると思っているのか、最近の投資詐欺ではそれをうたわず、「好成績を収めている投資家が、みなさんに投資アドバイスをします」などと言い、高額のアドバイス料を取るケースが増えています。

もちろん、そのアドバイス通りに運用して失敗したとしても、「私たちは一切、元本保証などと言っておりませんし、そもそも投資ですから、もうかることもあれば、損をすることもあります」と言って、逃げられてしまうのです。

相手は詐欺師? 疑うべきポイント

ただ今回の事件に関して言えば、法令違反がたくさんあり、ある程度の知識があれば、だまされずに済んだ話でもあります。

まず「副業セミナー」と称して、「FXの有償オンラインスクール」の契約を迫ったという点は、「目的隠匿勧誘」という名目で、特定商取引法違反に該当します。

つまり本来の目的はFXの有償オンラインスクールへの勧誘であるにも関わらず、副業セミナーをかたっていた時点で違法行為になるのです。

しかも契約に際しては、「契約者に虚偽の事業者名等を記載した書面を交付」したということで、これは「虚偽書面交付」ということで、やはり特定商取引法違反に該当します。

必ず確認したいのは「ライセンスの有無」

とはいえ、特定商取引法違反にあたるかどうかを判別するのは、個人では非常に難しいことかもしれません。そもそも、この手の法律があることを知らない方も多いでしょう。

ただ、1つだけ、特に資産運用のためのアドバイスを受けたいという人は、その業者がちゃんとしたライセンスを取得しているかどうかを確認することをお勧めします。

今回の事件は、「FXの投資助言を受けます」という契約書にサインをさせたうえで、多額の投資助言料を徴収するものですが、投資助言を行うためには、投資助言業としてのライセンスが必要です。

このライセンスを持たずに投資助言を行うと、「無登録営業」ということで、金融商品取引法違反にもなります。

このように、「有償で投資アドバイスを行いますよ」、などと言ってきた業者に対しては、「投資助言業のライセンスはいつ登録したのですか」と確認してみれば良いのです。

もちろん、先方は適当なことを言ってごまかそうとするでしょうが、投資助言業を持っている会社は基本的に地方財務局に登録する必要があります。特に資産運用アドバイスを事業として行っている会社の大半は、関東財務局への登録が多いので、登録の有無を確認してみると良いでしょう。

ちなみに金融庁のホームページにも、無登録で金融商品取引業を行っている事業者名の一覧があるので、それも参考になります。

なかには以前、無登録だったけれども、登録して事業を営んでいる会社もあるかもしれませんが、そもそも人のお金を運用する、あるいは運用のアドバイスをする会社の場合、ライセンスを取らずにその業を営んだことが過去にあった時点で、アウトです。

「投資アドバイスをします」と言われたら、すぐにライセンスの有無を確認する。それが、この手の投資詐欺に引っ掛からないための最大のポイントです。

●金融詐欺のターゲットは高齢者から若年層にシフトしている――。 詳しくは、【若年層が標的の詐欺が増加…「将来への不安」利用した悪質すぎる手口】(本サイト記事)で解説します。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください