年金いつから、いくらもらえる? 50代は「ねんきん定期便」のチェックが必須なワケ
Finasee / 2023年8月2日 11時0分
Finasee(フィナシー)
あなたの年金にも、「未納」期間があるかも!?
20歳になったら年金に加入する――今では当たり前ですが、50代女子の私たちの場合はちょっと状況が違います。
少し歴史を振り返ると、国民皆年金となったのは昭和36年4月からです。それまでは、お勤めの方用の年金制度はありましたが、農業や自営業といった方たちも含め20歳以上の日本居住者全てが年金に加入することになったのは、後からなのです。
ただし、第3号被保険者の年金加入が義務化されたのは昭和61年4月からです。それまでは任意加入でしたから、加入していない人もたくさんいました。第3号被保険者というのは、会社員または公務員の扶養の配偶者です。
また平成3年3月までは20歳以上の学生に年金加入の義務はなく、任意加入でした。やはり、任意だとわざわざ保険料を払ってまでという人は少なく、多くの学生が未納だったと言われています。
おそらく読者の皆さんの中には、早くに結婚して家庭に入った方、あるいは当時学生だったので任意加入でしたという方もいらっしゃるでしょう。
でもそうなると、年金は少なくしかもらえないってご存じでしたか?
将来受け取る老齢年金額=保険料の支払額で決まる年金には、「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」の3つの給付がありますが、このうち年をとってから支給される老齢年金は、保険料の支払額に応じて受給できる年金額が決まります。従って、任意加入期間中に保険料を支払っていないと、将来受け取る老齢年金の金額が少なくなるのです。
ご存じの通り、年金制度は2種類あります。全国民が加入する国民年金と会社員と公務員が上乗せで加入する厚生年金です。国民年金の加入義務期間は20歳から60歳までの40年間。従って40年間年金保険料を負担した人が受け取る年金額のことを「老齢基礎年金満額」と呼んでいます。
国民年金から支給される老齢年金をなぜ「老齢基礎年金」と呼ぶのかと不思議に思う方もいるかも知れませんが、国民年金はすべての国民が共通して加入する「基礎」となる年金なので、加入期間中は「国民年金」と言いますが、給付の際は「基礎年金」と言い方が変わります。
老齢基礎年金満額は毎年の経済状況により変動します。例えば、長い老後の時間の中で、年金額が全く変わらないとしたらどうでしょう? 昨今の物価上昇を例に考えると、どんどん生活が苦しくなることが想像できます。長生きすれば長生きするほど、貧乏になりますよね。
もちろん国は、高齢者が不自由な暮らしをしないようにと、一定のルールにのっとり年金額を物価に連動して調整しているのです。
従って「老齢基礎年金満額」は毎年変わるのですが、今回の解説では分かりやすいようにここ最近の金額から80万円とさせていただきます。すると40年の加入期間をもって80万円が満額なので、80万円÷40年=2万円という式が成り立ち、国民年金は1年の加入で老齢基礎年金2万円を受け取れるのだということが理解できます。
ということは、第3号被保険者あるいは学生だったので、国民年金に任意加入していなかったという期間が3年あれば、2万円×3年=6万円となり老齢基礎年金は40年加入した人に比べると6万円少ないということになります。
年間6万円は、「一月にならすと5000円だし大したことはないわ」と侮るなかれ。私たちは長生きです。90歳どころか100歳まで生きるとすれば、65歳からの35年間でなんと210万円も差がついてしまうのです。
ただし、「任意」だった期間は合算対象期間に「えっ、だって任意だったのに、そんなの不公平」って声も聞こえそうですね。もちろん国は任意加入期間については、「年金保険料を払った期間」として取り扱ってくれています。毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」をご覧ください。「合算対象期間」という表示がありませんか? そこに記載されている月数がそれです。
合算対象期間は、年金受給要件を満たすためにはとても重要な期間です。なぜならば、将来老齢年金を受給するためには年金保険料を10年以上払わなければならないというルールがあるからです。この受給要件もかつては25年だったので、任意加入があることで老齢年金が受けられないなんてことにならないようにという配慮なのです。
つまり、将来受け取る年金額を増やすために最も有効なことは「できるだけ長い期間保険料を支払うこと」なのです。なんとなく私たちは年金を「もらう」という言葉で表現しがちですが、本来年金は「創るもの」。自分で保険料を払って、自分で創るものなのです。
年金は後からでも“増やす”手段がある!残念ながら、過去にさかのぼって任意加入期間分の保険料を払うことはできません。払っていない保険料は2年で時効になるからです。
では、年金額を増やすためにはどうしたら良いのか? 60歳以降、国民年金に「任意加入」をして保険料を払うことで過去分を埋め、老齢基礎年金満額を受け取れます。
国民年金の任意加入をしなくても増やせる方法がもう一つあります。「厚生年金に加入して長く働く」ことです。厚生年金に加入している期間は同時に国民年金にも加入していますから、ある意味、自動的に過去分が埋められていきます。さらに厚生年金が上乗せされますから、効率的です。
厚生年金は別名「報酬比例」と呼ばれています。私たちが負担する厚生年金保険料は給与の額に連動しています。そして将来受け取る老齢厚生年金も給与の額に連動しています。実際には、賞与も含めた報酬に連動するので報酬比例と呼ばれているのです。
老齢厚生年金の式は……
厚生年金加入期間中の平均年収×5.481÷1000×厚生年金加入期間
で導き出されます。でもこれまで厚生年金で働いた期間の平均年収っていきなり言われても答えられませんよね。
加えて老齢厚生年金の計算式は平成15年3月までと4月以降で、年収の考え方と掛け率に変更があったので、それも加味しなければなりませんから、自分で計算するのは“絶望的”です。
ねんきん定期便は情報の宝庫! 必ずチェックを老後が不安といいながら、老後の暮らしの基盤となる老齢年金のことを知らなすぎる私たち……。これでは、いつまでも老後は不安なままです。
でもこの問題を解決してくれるのが、ねんきん定期便です。これまでの加入歴をもとに個々の年金情報を毎年更新して届けてくれるのです。
ちなみに、「消えた年金問題」って覚えていますか? 納めたはずの保険料の記録がすっぽり抜け落ちていたってことが昔、話題になりました。あの問題、実は100%解決はしていないのです。なぜならば、国はみなさんがいつまで学生だったとか、就職した時の給与がいくらだったとか、全てを把握することは不可能だからです。
でも、年金記録が消えていたり、誤って登録されていたりすると、不利益を被るのは本人です。だから、ねんきん定期便が毎年届けられ、各々で年金記録が間違っていないかどうかをチェックできるようになっているのです。
35歳、45歳、59歳の節目年齢の年に発行されるねんきん定期便は、20歳からの履歴がすべて掲載されています。またねんきんネットに登録をすれば、いつでも過去の履歴を確認できます。
特に私たちが若い頃は、まだまだアナログ時代ですから当時のお役所が、名前の読み間違いや数字の見間違いなどをしている可能性もあります。ぜひこの機会にご自身の年金記録を調べてみてくださいね。
山中 伸枝/ファイナンシャルプランナー
FP相談ねっと代表。1993年米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業後、メーカーに勤務。これからはひとりひとりが自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、お金のアドバイザーであるファイナンシャルプランナー(FP)として2002年に独立。年金と資産運用、特に確定拠出年金やNISAの講演、ライフプラン相談を多数手掛ける。『50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話』(東洋経済新報社)ほか著書多数、金融庁サイト 有識者コラム連載。心とお財布を幸せにする専門家、ファイナンシャルプランナー(CFP®)、株式会社アセット・アドバンテージ代表取締役、一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事。
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