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賃金、GDP…世界各国との比較データで浮き彫りになる、日本の“衝撃的なマズさ”

Finasee / 2023年7月5日 11時0分

賃金、GDP…世界各国との比較データで浮き彫りになる、日本の“衝撃的なマズさ”

Finasee(フィナシー)

計画的な資産形成には、経済分野へのアンテナ感度を高めることが不可欠。しかし、豊富なデータの中から自分が知りたい内容のものを選び数値変化を把握するには、正しい知識と情報の読み解き方を身につける必要があります。もちろん、その背景にある歴史的な出来事への深い理解も外せません。

話題の書籍『データで見る日本経済の現在地 働くときに知っておきたい「自分ごと」のお金の話』では、著者で弁護士の明石順平氏が賃金や物価など、日常生活にまつわる数値データから読み解ける客観的事実について優しく解説。今回は本書の第1章「僕の給料は、この国の経済を映している」の一部を特別に公開します。(全4回)

※本稿は、明石順平著『データで見る日本経済の現在地 働くときに知っておきたい「自分ごと」のお金の話』(大和書房)の一部を再編集したものです。

日本の賃金を世界と比較してみると…
(図1-1)賃金を25年前と比べてみたら

――まずは、太郎 ※1が心配している賃金のデータを見てみよう。賃金を見れば、その国の経済状況もよく分かる。

この図はOECD ※2加盟国中34カ国の名目賃金について、1996年と比較した2021年の伸び率を示したものだ。ちなみに名目賃金とは、見た目の金額そのままの賃金を言う。この中で唯一、日本だけが1996年より2021年の名目賃金が下がっているね。3.6%下がっている。

※1 同書内に登場する聞き手。
※2 OECDは「Organisation for Economic Co-operation and Development」の略。経済協力開発機構。ヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め、2023年1月現在、38カ国の先進国が加盟する国際機関。

太郎:これは衝撃的……。日本の次に伸びてないのがスイスだけど、それでも34.4%伸びているから、日本の異常さが突出しているね。

――次に実質賃金を見てみよう。実質賃金は、名目賃金を消費者物価指数で割った値のことだ。物価変動の影響を取り除いた、賃金の真の値打ちを表す数値になる。

例えば、名目賃金が2倍になっても、物価が同じく2倍になった場合、実質賃金は変わらない。なお、ここで言う指数とは、ある時点を100とした場合の数値のこと。

(図1-2)より実際的な賃金の伸び率

太郎:名目賃金よりはましだね。1996年より2.9%だけ伸びている。……まあでもほとんど変わってないね。日本より伸びてないのはスペインだけ。

――そう。そして、この名目賃金と実質賃金の状況は、名目GDP、実質GDPの状況とほとんど一致している。ちなみにGDPとは、「Gross Domestic Product」の略で、国内総生産のことだ。一定期間内(通常1年間)に国内で産出された付加価値の総額で、国の経済水準を測る基本的指標となる。

また付加価値とは、サービスや商品などを販売したときの価値から、原材料費や流通費用などを差し引いた価値のこと。一言でいえば「儲け」ということだね。

「先進国」の中でも日本のGDPはダントツでビリ
(図1-3)GDPを25年前と比べてみたら

――では、IMF ※3が「先進国」にカテゴライズしている国の名目・実質GDPの、1996年と比較した2021年の伸び率を見てみよう。まずは名目GDPから。

※3 「International Monetary Fund」の略。国際通貨基金。通貨と為替相場、国際金融システムの安定化を目的とした国際連合の専門機関。

太郎:日本は1.2%しか伸びてないから、これもまた、ダントツでビリだね。次に伸びてないイタリアですら69.8%。日本は文字どおり桁違いに伸びてない。

――次は実質GDPの伸び率を見てみよう。

(図1-4)そして、より実際的なGDPの伸び率は

太郎:一番伸びてないのがイタリア(10.5%)、次がプエルトリコ(13.2%)、その次が日本(13.6%)だから、名目よりはマシだけど、やっぱり全然ダメだね。

――そう。このように、賃金の低迷がGDPの低迷と名目・実質ともにほとんど同じであることが分かるだろう。

太郎:賃金が低迷していることはつまり、日本の経済が低迷していることを表しているわけだね。とても大きなモノを相手に考えないといけないんだな……。でも、なんで日本はこんなに低迷しているの?

――それを理解するには、少し歴史を遡って見てみる必要がある。具体的に言うと、バブル崩壊後の金融危機が大きく影響しているんだ。今度はそれを見てみよう。

●第2回(山一証券、長銀etc.金融機関が破綻する事態に…バブルはいかにして崩壊したのかでは、金融危機を背景に異常な値上がりを見せた“株と不動産”の価格推移について解説します。

『データで見る日本経済の現在地 働くときに知っておきたい「自分ごと」のお金の話』

明石順平 著
発行所 大和書房
定価 1,760円(税込)

明石 順平/弁護士

1984年、和歌山県生まれ、栃木県育ち。東京都立大学法学部、法政大学法科大学院を卒業。主に労働事件、消費者被害事件を担当。ブラック企業被害対策弁護団所属。著書に『アベノミクスによろしく』『データが語る日本財政の未来』(集英社インターナショナル新書)など。

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