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実は多くの投資家が誤解している? 投資信託にまつわる“基礎知識”

Finasee / 2023年6月12日 17時0分

実は多くの投資家が誤解している? 投資信託にまつわる“基礎知識”

Finasee(フィナシー)

今回は、投資信託会社である日興アセットマネジメントが、コールセンターに寄せられたお客さまからの素朴な疑問に対して回答する「こよみ」というコンテンツのテーマについて、取り上げたいと思います。そのテーマとは「基準価額」です。

基準価額はいつの相場が適用される?

恐らく投資信託を保有している人なら、一度は「基準価額」という単語を耳にしたことがあるでしょう。5月31日に発行された「こよみ」では、基準価額についてありがちな誤解を取り上げています。

株価のようでいて株価と全く異なる基準価額がどういうものなのか、改めて理解するには良い機会だと思いますので、ぜひ1度目を通してみてください。

さて、「こよみ」では、「基準価額はいつの相場が適用されるのか」という点を中心にして解説されています。

株価と基準価額は似て非なるものですが、最大の違いは、株価はその銘柄に対する買い手と売り手の需給バランスによって変動するのに対し、投資信託の基準価額は、ファンドに組み入れられている株式や債券など有価証券の、その日の取引が終了した時点での株価や債券価格をベースにして計算されていることです。

つまり投資信託の基準価額は、受益証券の買い手と売り手の需給バランスで決まるものではない、という点が、大きな違いと言って良いでしょう。

そのため株価は、午前9時の取引開始時点から午後3時の取引終了時点までの間、時々刻々と変動しますが、投資信託の基準価額は、1日のなかで1回だけ、それもその日の取引が完全に終了した時点で算出されます。したがって、投資信託の基準価額は、1日のなかで1回しか公表されないのです。

そして、前述したように「その日の取引が終了した時点での株価や債券価格をベースにして計算されている」ことから、日本の取引所で取引されている株式や債券を組み入れて運用されている投資信託の場合、当日の基準価額の公表は午後3時以降になります。個別ファンドによって前後しますが、大体、午後4~5時には算出が終わります。

そして、投資信託の購入・解約注文は午後3時に締め切られ、それまでに購入・解約注文を出した分に適用されるのは、この午後4~5時に算出される基準価額が適用されるのです。

ただ、これも詳細は「こよみ」に書かれているので、ここでは簡単にしか説明しませんが、米国や欧州など、海外の株式や債券を組み入れて運用しているファンドの場合だと、時差の関係があるので、やや複雑になります。

当日の購入・解約注文の締切時間までに出した注文に適用される基準価額は、その翌営業日に算出されたものになるのです。

誤解によって起こる行き違い

このように、基準価額の算出が「その日の取引が終了した時点での株価や債券価格をベースにして計算されている」ため、ちょっとした行き違いが生じるケースもあります。

たとえば、日本株に投資しているファンドを保有していたとしましょう。午前9時、場が開くのと同時に株価が大きく上昇し始めました。今日、このファンドを解約すれば、基準価額も値上がりして大きなリターンを稼げるともくろんで解約注文を出しました。

ところが、株式市場の勢いが良かったのは午前中まで。午後から売りに押され、株価は大きく下げ、基準価額も前日に比べて下がってしまいました。

結果、どうなるかというと、この解約注文には、午後からの株価下落によって下がった基準価額が適用されてしまうのです。値上がりをもくろんで解約した人からすれば、とんだ計算違いです。

だからこそ、自分が持っている投資信託の注文の締切時間と、その際に適用される基準価額がいつ時点のものになるのかという点は、しっかり把握しておく必要があるのです。

基準価額の水準の考え方

さて、基準価額にはもうひとつ、大きな誤解があります。それは「基準価額の水準は安い方が割安」というものです。

「こよみ」では指摘されていませんが、結構多くの方がこの誤解をしており、そのため基準価額が高くなった投資信託は、資金流入が落ちるという問題が、かねてから指摘されています。つまり「基準価額が3000円の投資信託は割安で、3万円の投資信託は割高」というイメージが定着しているのです。

これこそ完全な誤解です。

そもそも基準価額とは何か、ということですが、これは受益権1口あたりの純資産総額を示しています。純資産総額とは、ファンドに組み入れられている株式や債券など有価証券の時価総額です。分かりやすいように、特定の株式だけを組み入れたファンドを事例にして説明していきましょう。

たとえば1株の株価が1000円の株式を100万株組み入れると、このファンドの時価総額は10億円になります。そして、この投資信託に資金を集めるために発行された受益権が10万口だとすると、基準価額は、

10億円÷10万口=1万円

になります。ちなみに受益権とは、投資信託の運用で生じた利益を受け取る権利のことで、その権利が自分自身にあることを示すのが受益証券であり、保有数は「受益権=口数」で表示されます。

ところで、上記の事例では株価を1000円として計算していますが、1000円の株価が割高か割安かを判断するためには、その会社の業績(利益)や、会社が保有している純資産額と比べたうえで、今の株価はどうなのか、という観点で考えます。

したがって、業績が非常に良く、この先の業績に対する増益期待も高いうえ、さらに豊富な純資産を持っているような超優良企業であれば、株価が2000円でも割安と判断される可能性がありますし、逆に株価が500円でも割高と判断されることもあるのです。

では、前出の事例と同様、組入株式数を100万株、発行している受益権を10万口とした投資信託があるとして、組入株式の株価が1株2000円だとすると、基準価額は2万円になりますが、この株価が割安だとしたら、2万円の基準価額は決して割高とは言えません。逆に、組入株式の株価が1株500円でも、それが割高であれば、5000円の株価は割安であると言えないのです。

つまり、基準価額の水準の高低は、割高、割安をはかるための基準にはならないということです。運用方針などを見て、そこに「割安銘柄に投資します」と書かれていたら、たとえ基準価額が3万円を超えていたとしても、組入銘柄のポートフォリオ全体は、決して割高ではないと考えられます。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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