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「ピンチをチャンスに」株価予想の“達人”ニトリ会長が見る日本経済の行方

Finasee / 2023年6月13日 17時0分

「ピンチをチャンスに」株価予想の“達人”ニトリ会長が見る日本経済の行方

Finasee(フィナシー)

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家具・インテリアの製造小売りでトップクラスのシェアを持つ「ニトリホールディングス」は学生人気の高い企業です。業績も優良で、2022年2月期までに35期連続で増収増益を達成しました。投資家にとってニトリホールディングス株式は安心感のある銘柄だったといえるでしょう。

しかし近年は陰りが見え始めています。2023年3月期は円安などの影響から最終減益に転じ、翌期の予想では減収を見込みました。株価もそれを織り込んでいたのか、2021年後半から値下がり基調を強めています。

【ニトリホールディングスの株価(月足、2020年4月~2023年4月)】

 

出所:Investing.comより著者作成

【ニトリホールディングスの業績】

※2023年3月期から3月決算に移行
※2024年3月期(予想)は、2023年3月期における同社の予想

出所:ニトリホールディングス 決算短信

市場の注目を集めるニトリはどのような企業なのでしょうか。焦点を当ててみましょう。

ライバル店の出現で倒産の危機… ピンチをチャンスに変えた出来事とは

ニトリは似鳥昭雄(にとり・あきお)氏が一代で築き上げた巨大家具グループです。1967年、札幌に「似鳥家具卸センター北支店」という小さな家具店を出店し、その歴史がスタートします。この店名には仕掛けがあり、小売店ながら「卸センター」を冠することで安くて広い印象を与え、また1店舗目ながら「北支店」とすることでいくつも店舗があるように思わせる狙いがありました。

近くに家具店がなかったこともあり、初号店の売上高は順調に拡大します。しかし国道沿いに出店した大型の2号店は、近くにさらに大規模なライバル店が出店し、売り上げが激減しました。借金が膨らみ、ニトリは早くも倒産の危機を迎えます。

しかし、このピンチはニトリにとって成長のきっかけとなりました。廃業の危機にひんした似鳥氏は、いちるの望みをかけアメリカへの視察を決定します。そこで日本より品ぞろえや機能が充実した家具が日本の3分の1ほどの値段で販売される現場を目にし、大きなショックを受けました。

似鳥氏は同様のビジネスモデル、つまり品質の高い商品を低価格で販売する戦略の実施を決意します。これは現在までニトリが標榜する「お、ねだん以上。」に他なりません。

ニトリは1973年にメーカーからの直接仕入れに乗り出し、より安く商品を提供できる体制を目指しました。さらに1985年には海外商品の直輸入を始め、1994年には海外の工場で自社生産を始めます。これらの取り組みはニトリの価格競争力を飛躍的に向上させ、同社の販売力を強力に押し上げました。

ニトリの発展を支えた物流戦略

ニトリが成功した理由は、同社の物流戦略にもあるでしょう。

ニトリは早くから物流の効率化に取り組んだ企業としても知られます。1980年には流通業界で初めて自動立体倉庫を稼働させ、1993年に本州へ初進出したあとは同様の物流拠点を関東や関西に積極的に配置しました。同社の物流部門は2010年に「ホームロジスティクス」として独立し、現在は国内人口の98%をカバーするほどの物流網を敷いています。

自社で物流を確保したことは、ニトリにとって僥倖でした。近年はECの台頭やトラックドライバーの減少問題から物流の現場はひっ迫しており、物流コストは増加傾向にあります。しかし自社に物流会社を持つニトリは、比較的小さい物流コストを実現してきました。

【売上高物流コスト比率(2022年度)】

 

出所:ニトリホールディングス「2022年3月期決算説明会資料」および日本ロジスティクスシステム協会「2022 年度 物流コスト調査報告書」より著者作成

物流を自社で賄うメリットは単に費用面にとどまりません。家具の組みたてや設置などを行う「組立配送」や、アプリを通じ店舗から注文できる「アプリde注文」など、ニトリの柔軟なサービスにつながっています。

株価見通しで一目置かれる似鳥会長

似鳥氏は経済予測の達人としても知られます。ニトリは海外から商品を仕入れて国内で販売するビジネスモデルから、円安下では利益が圧迫されてしまいます。これを緩和するため、ニトリは円高時に為替予約を行い割安に輸入する戦略を取っています。そのタイミングを計る似鳥氏の相場見通しは、これまで多くのメディアで取り上げられてきました。

特に2018年の見通しはほぼ的中したことから大きな話題を集めます。似鳥氏は2017年末に「2018年のドル円は年平均108円、日経平均株価は2018年末に19500円」と見込み、マーケットはそれをなぞるように動きました。以来、似鳥氏の予測には多くの投資家が関心を寄せるようになり、相場展望を語る姿は年末年始の風物詩となっています。

【日経平均株価とドル円(日足終値、2017年末~2018年末)】

 

出所:Investing.comより著者作成

しかし経済予測の達人も、2022年度の荒れたドル円相場は見通せなかったようです。当時のドル円はアメリカの金利上昇を受け150円台に向かって強く円安が進んだあと、日本政府の為替介入や日本銀行の金融政策方針の変更などから一転して130円台まで円高が進みました。

ニトリは円安に備え2022年9月分までは1ドル=114.90円で為替予約していたものの、10月以降の予約レートは147.80円でした。このため、下半期では為替取引に伴って損失が生じたとみられています。

【ドル円(日足終値、2022年4月~2023年3月)】

 

出所:Investing.comより著者作成

しかし、実は似鳥氏は2022年2月期の決算説明会では「2022年10月以降は円高・ドル安傾向になる」との見通しを示していました。説明会は2022年3月末に開催されたもので、この予測はぴしゃりと当たっているのですが、迷いが出たのか実際の取引に生かすことはできなかったようです。

なお、似鳥氏は2022年12月に開催された決算説明会で、2023年のドル円相場は110~120円の円高方向、2023年末の日経平均株価は3万1000円との見通しを示しました。この予想は当たるのでしょうか。相場の行方が注目されます。

文/若山卓也(わかやまFPサービス) 

Finasee編集部

金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。

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