金融機関が倒産したら私のDCやiDeCoはどうなる?
Finasee / 2023年6月23日 11時0分
![金融機関が倒産したら私のDCやiDeCoはどうなる?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/finasee/finasee_12199_0-small.jpg)
Finasee(フィナシー)
かつて日本でも銀行破綻はあった
アメリカでは、この春いくつかの銀行が経営破綻するという事件が起きました。日本での銀行の破綻といえばDCという制度がスタートする直前の1990年代末に北海道拓殖銀行、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行といった規模の大きな銀行で破綻が相次ぎました。ですから2001年のDC制度が始まった当時は、金融機関が破綻した時の扱いについて関心が高く、必ず説明していました。
しかし、それから20年以上たった今では、説明する側も、される側もこの話題に触れることがめっきり少なくなっています。そこで、万が一に備えて、今回は金融機関が破綻した場合の企業型DCやiDeCoへの影響について確認したいと思います。
銀行が破綻したら、預金はどうなる?企業型DCやiDeCoにおいて、銀行・保険会社・証券会社のいずれも、運用商品である預金・保険・投資信託の販売会社として関わる場合と、運営管理機関として加入者サイトを通じて商品や制度の情報提供をしたり、手続きの窓口になったりという形で関わる場合に大きく分かれます。
まずは前者の運用商品販売会社の立場である金融機関が破綻するケースから解説します。「定期預金」を提供している銀行が破綻してしまった場合には、その金融機関に保有している預金を合算して、元本1,000万円までと破綻日までの利息が預金保険機構によって保護されます。ペイオフと言われる預金者保護の仕組みです。合算して1,000万円を超える部分は、ペイオフの対象ではないので、破綻金融機関の財産の状況に応じて支払われることになります。つまり、一部カットされる場合があるということです。
合算対象の預金は、当座預金、利息の付かない決済用預金や外貨預金は含まれません。それ以外の普通預金、定期預金、そして、企業型DCやiDeCoで保有している定期預金が対象です。合算して1000万円を超える場合、企業型DCやiDeCoで保有している定期預金よりも、それ以外の定期預金等が優先して保護されます。
ですから企業型DCやiDeCoの運用商品として定期預金を利用する場合、ペイオフのことを考えると、多くの預金をお持ちのメインバンク以外に預けるというのが対策になります。
保険会社が破綻したら、保険はどうなる?次に「保険」を提供している保険会社が破綻してしまった場合です。保険会社も生・損保別に設立されている保険契約者保護機構があり、セーフティネットがあります。保険会社が破綻した場合、他の保険会社への移転・合併等によって保障が継続されるのが一般的です。移転によって預入時に提示されていた利率等の条件が変更されることがあります。
保険契約者保護機構は保険契約者保護のため、移転等を資金援助し、補償対象の保険については保険金等を将来支払う時のために積み立ておくべきとされている責任準備金の90%までは補償します。企業型DCやiDeCoで提供されている利率保証型の年金保険はこの補償の対象保険です。
投資信託の運用会社・販売会社が破綻したら結論から先に申し上げると、投資信託の販売会社・運用会社が破綻しても皆さんの企業型DCやiDeCoで保有している投資信託が毀損することはありません。
投資信託は運用会社が皆さんからお預かりしたお金をその投資信託の運用方針に沿って株式や債券等に投資をするわけですが、その株式や債券等の資産を預かっているのは、受託銀行と呼ばれる信託銀行です。ですから、運用会社が破綻したとしても、投資信託の資産には影響がありません。では、資産を預かっている信託銀行が破綻したとしたら、どうかというと、これも影響がありません。なぜなら、投資信託の資産は信託銀行自体の資産とは分けて分別管理されているからです。
販売会社として信託報酬(運用管理費用)の一部を受け取っている銀行、証券会社、または保険会社が破綻したとしても、投資信託の資産を保有しているわけではありませんから、関係はありません。つまり、投資信託は元本保証もなく、価格が変動するリスクはあるものの、金融機関の破綻という面では最も堅牢に保護されている金融商品であると言えます。
こういった加入者保護の仕組みが整っていることを知っておいていただくと、いざという時に慌てたり、SNSで要らぬ不安をかき立てられたりすることがなくて安心ですね。次回も、iDeCoで「困った!」にならないように知っておいていただきたい、転職時の手続きについてご説明します。
大江 加代/確定拠出年金アナリスト
オフィス・リベルタス取締役。大手証券会社にて22年間勤務、一貫して「サラリーマンの資産形成ビジネス」に携わる。確定拠出年金には制度スタート前から関わり、25万人の投資教育も主導。確定拠出年金教育協会の理事として、月間20万人以上が利用するサイト「iDeCoナビ」を立ち上げるなどiDeCoの普及・活用のための活動も行っている。
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