75億円→2330億円の“大もうけ” 出光興産が2年前に最高益を出した納得の理由
Finasee / 2023年7月10日 7時0分
Finasee(フィナシー)
・保険料の“値上げ”が止まらない? きっかけは「平成最悪」の豪雨被害
2018年7月10日、業界2位の「出光興産」と5位の「昭和シェル」が経営統合を発表しました。2014年に持ち上がった大手同士の統合計画は、当初反対した出光創業家の理解を得て3年越しにやっと成就しました。
再編が相次いだ石油元売り出光興産のような大手石油会社は「石油元売り会社」と呼ばれることがあります。あまり聞きなじみのない言葉ですから、混乱する人もいるかもしれません。
単に石油会社という場合、石油に携わる広範な企業を指すことが多い傾向にありますが、特に石油元売り会社という場合、販売網を通じて石油製品を運送業者や工場などの需要家に販売する会社を指すことが一般的です。大まかに自社の製油所で精製から行う企業と、他の石油精製会社から石油製品を調達して販売する企業があります。
石油元売りは再編が顕著に進んだ業界の1つです。背景には石油製品に対する需要が低迷し、生産設備の稼働率が低下するようになったことが挙げられます。政府も過剰設備の削減に動いたこともあり、業界で提携や合併の動きが活性化しました。1985年に12社あった石油元売り会社は、現在ではその多くが大手3社に集約されています。
【石油元売り大手3社の概要】
出所:エネオス「石油便覧」および各社の決算短信
石油元売り会社はどんな仕事をしている?石油元売り会社は、大まかに言えば海外から調達した原油をガソリンなどの石油製品に精製し、それを販売するビジネスを展開しています。このためタンカーや石油製品の精製工場といった大規模な設備を持つほか、広く販売するための大きな流通網も備えています。
また石油元売り会社は化学メーカーとしての面も持っています。原油は石油ガスやガソリンといった燃料に精製されますが、その過程で生まれる「ナフサ」はさらにエチレンといった基礎的な製品に分解され、誘導品(中間品)を経て多種多様な製品の原料に生まれ変わります。あなたの身の回りにも石油由来の製品がきっと見つかるでしょう。ちなみに出光興産は、エチレンでトップクラスの生産能力を持つ企業です。
【ナフサの主な用途】
出所:石油化学工業協会 石油化学製品はこうしてつくる
【エチレンの年間生産能力上位5社(2020年末時点)】
・出光興産:99万7000トン
・ENEOS:89万5000トン
・京葉エチレン:69万トン
・昭和電工:61万8000トン
・三井化学:55万3000トン
出所:石油化学工業協会 主要石油化学製品のメーカー別生産能力
このように石油ビジネスの裾野は広く、燃料の需要家である発電所のほか、他の化学メーカーの工場も石油精製工場の周辺に集積される傾向にあります。こうして形成される大規模な工業団地を「コンビナート」と呼び、原油を運ぶタンカーが利用しやすいよう沿岸部でよく見られます。
原油価格の上昇で石油元売り会社の利益が増加する理由近年は原油価格の上昇を受け、石油元売り会社の利益が増加傾向にあります。出光興産も2022年3月期に最高益を更新しました。しかし翌期は原油の値段が下落したことから最終利益は約9%減少しており、2024年3月期も6割の大幅な減益予想となっています。
【出光興産の業績】
※2024年3月期(予想)は、2023年3月期時点における同社の予想出所:出光興産 決算短信
石油元売り会社は原油を仕入れて製品を作るわけですから、原油価格が安い方が利益に結び付きそうです。しかし実際には逆の動きとなりました。なぜこのようなことになるのでしょうか。
原因は、石油元売り会社の備蓄が関係しています。石油会社は法令や事業上の制約から、在庫として大量に原油を備えています。そのため、原油の値段が上がると在庫に評価益が生じるのです。出光興産も最高益を達成した2022年3月期では、前期に75億円だった在庫評価益が2330億円にまで拡大しました。
また原油価格の上昇は一般に石油製品の価格を押し上げる傾向にあるため、仕入れと販売の価格差が拡大し利益が増加する効果もあるでしょう。このような理由から、原油価格が上昇すると石油元売り会社の利益が増えると考えられます。
【原油価格と出光興産の四半期営業利益(2022年3月期)】
Investing.comおよび出光興産 決算短信より著者作成執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
マネー・トリビア
過去の「今日」にはどんな出来事があった? 金融知識の豊富な著者陣が独自の視点でお金にまつわるその日のトピックをセレクトし、奥深い豆知識をお届けします。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
エンソート、出光興産とのパートナーシップを拡大 マテリアルズインフォマティクスを活用した製品のイノベーションを加速
PR TIMES / 2024年11月14日 16時40分
-
ウイルスバスターの「トレンドマイクロ」が配当と自社株買いで「利益100%還元」宣言、 気になる株価と業績予想、進捗は?
Finasee / 2024年11月7日 6時0分
-
ツウは知っている「豊田通商」株価5年で2倍に上昇&配当利回り3.7% 株式分割で新NISAでも買いやすく 将来担う「再エネ」に1兆円投資
Finasee / 2024年11月5日 6時0分
-
出光興産が“全固体電池”を最短27年に実用化へ 大型パイロット装置開始で次の開発ステージに! トヨタ車に搭載予定
くるまのニュース / 2024年10月29日 5時50分
-
知る人ぞ知る「INPEX」株価は5年で2倍、今後どうなる? 2四半期連続「上方修正」の今期、増配&自社株買いも実施 業績とリスクに迫る
Finasee / 2024年10月28日 6時0分
ランキング
-
1副業を探す人が知らない「看板広告」意外な儲け方 病院の看板広告をやけにみかける納得の理由
東洋経済オンライン / 2024年11月23日 19時0分
-
2ローソンストア100「だけ弁当」第12弾は「イシイのミートボール」とコラボした「だけ弁当(イシイのミートボール)」
食品新聞 / 2024年11月23日 20時40分
-
3【独自】所得減税、富裕層の適用制限案 「103万円の壁」引き上げで
共同通信 / 2024年11月23日 18時57分
-
4《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン / 2024年11月23日 16時15分
-
5ドーミーイン系4つ星ホテル「3300円朝食」に驚愕 コスパ最高、味も絶品!極上のモーニングがここに
東洋経済オンライン / 2024年11月23日 8時40分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください