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多数の日本人も被害? 約20年前に米国市場を低迷させた巨大企業2社の倒産

Finasee / 2023年7月21日 7時0分

多数の日本人も被害? 約20年前に米国市場を低迷させた巨大企業2社の倒産

Finasee(フィナシー)

・AIブームで注目 ソフトバンクが巨額買収した半導体大手の驚異的飛躍

アメリカ株式にとって、2000年初頭は試練のときでした。ITバブルの崩壊が表面化し、2001年には米国同時多発テロによって一気に不透明感が台頭します。現在では高パフォーマンスで人気の「S&P500」も、当時は大きく値下がりしました。

【S&P500の推移】
・1999年末:1469.25ポイント
・2000年末:1320.28ポイント(前年比-10.1%)
・2001年末:1148.08ポイント(同-13.0%)
・2002年末:879.82ポイント(同-23.4%)

相場の足を引っ張ったのはマクロ要因ばかりではありません。「エンロン」と「ワールドコム」という巨大企業が連鎖的に倒産したことも関係しています。しかも、両社はいずれも粉飾に手を染めたことが明らかになっており、大企業に対する不信感が広がりました。

7月21日はワールドコムが経営破綻した日です。なぜ大企業が2社続けて破綻したのか、当時を振り返ってみましょう。

粉飾で資産規模20兆円の大企業2社が破綻

エンロンは天然ガスや電力など多くのエネルギー関連商品を取り扱う巨大商社でした。1990年代に業容を大きく拡大し、2000年には売上高が全米7位を記録します。

ワールドコムもアメリカを代表する大企業でした。通信事業を手掛けていた同社は1990年代に大型のM&Aを繰り返し、業界2位にまで上り詰めます。

倒産の連鎖はエンロンから始まりました。2001年10月に同社で不適切な会計処理が明らかになり、過去にさかのぼって利益と資本の巨額な減少が生じ、翌月に破綻します。これを機に米国証券取引委員会(SEC)は不正会計の取り締まりを強め、多くの企業で粉飾が明らかになりました。そしてワールドコムも2002年6月に利益の水増しを行っていたことを認め、翌月に破産の申請に追い込まれます。

破綻時の資産規模は2社で1688億ドル(エンロン:618億ドル、ワールドコム:1070億ドル)と、当時の為替(およそ1ドル=120円)で20兆円を超える大型の破綻劇は、アメリカ株式市場に強い下押し圧力として働きました。

【S&P500(月足、1999年12月~2002年12月)】

 元本割れで話題を集めた「MMF」とは?

エンロンの破綻が顕在化したときは、「MMF(マネー・マーケット・ファンド)」が元本割れしたことも話題でした。

MMFは公社債投信の1つです。リスクが低い短期資産で運用される商品で、安全性が高く証券会社において待機資金の受け皿のような役割を持っていました。税制上も、分配金が利子所得になるなど、債券や預金に近い仕組みとなっています。

しかし、当時は多くのMMFが資産の一部をエンロン債で運用していたため、元本割れが相次ぎました。エンロンは、破綻が明らかになるまでは安全性の高い企業と見なされており、MMFの運用に用いられていたことが原因です。

MMFの元本は保証されていないとはいえ、商品性からほとんどの保有者は元本割れを想定していなかったと考えられます。安全だと考えていた商品で損失が発生したことで、解約の動きが一挙に生じました。当時の報道では、MMFなどの公社債投信から1日で2兆円近い資金流出が起こったと伝えられています。

外貨三大商品「外貨預金」「外貨MMF」「FX」 おすすめは?

円建てのMMFはマイナス金利の影響を受け全て運用を終了していますが、「外貨MMF」は現在でも取り扱う金融機関があります。「外貨預金」や「FX」のように為替差益が期待できるほか、利子のように金利に由来する収益もあることから、運用の効果は同じようなものとなるでしょう。

【利子または利子に相当する収益】
・外貨預金:利子
・外貨MMF:収益分配金
・FX:スワップポイント(スワップ益)

ただし税金の取り扱いは異なり、以下のように整理できます。

【外貨預金、外貨MMF、FXの税制】

※1.2037年までは所得税×2.1%の復興特別所得税がかかる
※2.特定口座(源泉徴収あり)なら申告不要を選べる

「分離課税」とは他の所得と分離して税金を計算する方法で、給与など他の所得がどれほど大きくても税率に影響はありません。上述した3商品における分離課税の税率は全て20%(2037年までは20.315%)です。分離課税は、原則として確定申告が必要となる「申告分離課税」と、原則として確定申告が不要な「源泉分離課税」に分かれます。

「総合課税」とは、他の所得と合算して税金を計算する方法です。給与など他の所得が大きいほど税率が上昇します。税率は、住民税の所得割部分がおおむね10%、所得税が所得に応じて5~45%であり、合わせて15~55%(2037年までは15.105~55.945%)となります。

3商品では外貨預金の為替差益が総合課税の対象で、一定以上の所得があれば原則として申告しなければいけません。確定申告は「配偶者控除」といった各種の扶養に影響を与える可能性があるため注意してください。一定以上の利益が生じれば原則として確定申告の義務が生じるFXも同様です。

他にも大まかなポイントを以下にまとめました。混同しやすい商品のため、違いに気を付けて選ぶようにしてください。

【外貨預金、外貨MMF、FXの主な特徴】

 

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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