知財戦略が成長の鍵? JPXプライム150に選ばれたバンダイナムコの挑戦
Finasee / 2023年6月27日 17時0分
Finasee(フィナシー)
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JPX総研が2023年7月から算出を開始する「JPXプライム150指数」に、国内トップクラスのエンターテインメント企業「バンダイナムコホールディングス」が選ばれました。足元の業績は好調で、2023年度に売上高1兆円を目指す予想も公表しています。今後はますます投資家から注目されそうです。
【バンダイナムコホールディングスの株価(月足、2020年5月~2023年5月)】
出所:Investing.comより著者作成
【バンダイナムコホールディングスの業績】
※2024年3月期(予想)は2023年3月期時点における同社の予想出所:バンダイナムコホールディングス 決算短信
そんなバンダイナムコも、実は経営不振に苦しんでいた時代がありました。順風満帆に見える同社になにがあったのでしょうか。
おもちゃとアミューズメントのビッグメーカーが統合して誕生バンダイナムコは「バンダイ」と「ナムコ」が2005年に統合して誕生しました。
バンダイは1950年に「萬代屋」の商号で設立されたおもちゃメーカーです。業界で初めて品質保証制度を実施したほか、『1/144ガンダム』プラモデルや『たまごっち』といったヒット商品を連発し、おもちゃでトップクラスのシェアを握っていました。
ナムコは「中村製作所」として創業しました。1955年に百貨店の屋上に2台の木馬を設置し、同社のアミューズメント事業がスタートします。『リッジレーサー』や『鉄拳』といった人気アーケードゲームを世に送り出し、1999年に「モノリスソフト」を設立してからは家庭用ゲームにも進出しました(モノリスソフトは2007年に任天堂が買収)。
両社が経営統合を決めたのは厳しい競争環境があったといわれています。国内は少子化で市場の縮小が予想され、また娯楽が多様化しおもちゃやゲーム以外に需要が流れていました。またネット環境が拡大しグローバルな競争力も求められるようになります。
そこで、キャラクタービジネスに強みがあるバンダイと、ゲームの開発力に定評のあるナムコが手を組み、総合的なエンターテインメント企業となることで競争に勝ち抜く方法を選択しました。こういった経緯でバンダイナムコが誕生します。
300億円の赤字でリストラ…実は失敗続きだった経営統合今でこそバンダイナムコは2社の開発力を合わせさまざまなコンテンツをリリースしていますが、当初からうまく融合が進んだわけではありません。統合して最初の中期経営計画(2006~2008年度)の多くが未達に終わったばかりか、2010年3月期には約300億円の最終赤字に転落してしまいます。
【2006~2008年度中期経営計画と実績(2009年3月期)】
出所:バンダイナムコホールディングス アニュアルリポート
【統合後の純利益の推移】
出所:バンダイナムコホールディングス 決算短信より著者作成
なぜ統合はうまくいかなかったのでしょうか。2010年2月に公表した「バンダイナムコグループ・リスタートプラン」によると、同社は統合を優先するあまり、シナジーを発揮するどころか両社の強みを打ち消してしまったと明かしています。事業の進め方は2社で異なっていましたが、それをトップダウン型の指示系統に統一した結果、現場のスピードが低下し環境やユーザーの変化に対応できなくなってしまったようです。
バンダイナムコは事業の進め方を旧バンダイと旧ナムコの方法に戻すとともに、事業と人員の整理にも乗り出します。募った希望退職者はグループ全体では600人にも上りました。これらの取り組みが奏功し、現在ではROE 14.6%の高収益企業へと成長しています(2023年3月期)。
キャラクターに物流 バンナムで育つ次の成長ドライバーバンダイナムコは2022年4月に3カ年の中期経営計画を公表し、IP(知的財産)を軸とした戦略の強化を発表しました。『機動戦士ガンダム』や『アイドルマスター』など、同社が持つ多くのキャラクターコンテンツなどを、事業の域を超えて横断的に活用する戦略です。計画ではIP価値最大化やメタバース領域の開発に向け400億円の投資を行うことも明かされました。
これに伴い、バンダイナムコは2023年3月期から映像音楽事業とクリエイション事業を「IPプロデュース事業」に一本化しています。事業規模は家庭用ゲームなどの「デジタル事業」やおもちゃの「トイホビー事業」に劣りますが、利益率はこれらに匹敵しており、第三の柱に育つことが期待されています。
【IPプロデュース事業のセグメント利益の推移】
出所:バンダイナムコホールディングス 決算短信より著者作成
【セグメント別の業績(2023年3月期)】
出所:バンダイナムコホールディングス 決算短信
また、バンダイナムコが子会社に物流会社を持つことはあまり知られていません。1963年に「バンダイ運輸」として設立され、2007年に「バンダイロジパル」と「ロジパルエクスプレス」の2社に分かれました。グループ物流会社としてのノウハウを生かし、おもちゃやアミューズメント機器の配送などで検査やメンテナンスも一貫して行う付加価値の高いサービスを提供しており、業績も好調です。
【グループ物流会社の業績】
出所:各社の決算公告
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。
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