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定年直前の金融マンが掴んだ「第2の人生」―“好き”を続け、見えた糸口

Finasee / 2023年7月11日 11時0分

定年直前の金融マンが掴んだ「第2の人生」―“好き”を続け、見えた糸口

Finasee(フィナシー)

金融業界で長年サラリーマンをやってきたMさんは、定年退職を控えた58歳の時、「今までやってきた資産運用の仕事をこのままサラリーマンとして続けていいのだろうか」と悩み始めました。

そんな時、ある雑誌で読んだ経済コラムニストの大江英樹さんの「定年後は好きな仕事をするべきだ」という趣旨の記事を読み、「自分に必要だったのはこの考え方だ」と気付いたのです。

そうして定年後は好きなことをしようと思ったものの、今度は自分の好きなこととは何か、という悩みに直面。その後、付き合いがあった僧侶をしている先輩からのアドバイスを受け、「仏教を学ぶ」という答えを見つけ、仏教の通信教育を受け始めます。

●Mさんはどうやって自分の“好き”を思い出したのか?
※前編【業界一筋の58歳金融マンが悩んだ定年後の道―背中を押したある言葉】からの続き

そして訪れた人生の転機

通信教育も終わりに近づいた頃、なんと先輩に「次は得度(とくど)をしたら?」とアドバイスをされました。

得度とは、お坊さんになるための修行の1つです。Mさんは自分が得度を⁉ と一瞬驚きましたが、別に修行をしたからと言って僧侶を仕事にしなくてもいいのだからと思い、そんなに躊躇することなくアドバイスに従ってみることにしました。

こうして次第に深くお寺と関わる機会も増え、今後もさらに学びを続けたいと思うようになった頃、先輩から人生の転機となる誘いを受けることになりました。

「ここで働いてみないか?」

これまでのキャリアとはまったく異なる大きな方向変換の申し出でしたが、その頃にはこれが自分の進む道だと考えるようになり、いよいよ64歳の時に会社を辞めることを決意しました。

新たな道で感じる確かなやりがい

それからは週に3回お寺で働くことに。お寺では、来訪者の悩みを聞き相談に乗ることになりました。相談者も真剣ですから、Mさんも真剣に傾聴します。週末には時々法事もこなしています。

また、主にはお寺での仕事をしていますが、前にいた会社とも関わりが続いています。資産運用の記事投稿など、一部の仕事を業務委託の形で請け負っているのだそうです。

「仏教の勉強が一番興味を持っている分野ですが、長年続けてきた金融関係の知識や経験は自身の強みとなっていて、人に貢献もできるので、細々と続けていきたい」とMさんは言います。「学び」がMさんの人生の基軸になっているので、資産運用においては今後も専門家の勉強会などで学び続けたいと思っているそうです。

トリプルキャリアのすすめ

キャリアは1つに絞る必要はなく、キャリア理論では「トリプルキャリア」と言って複数の仕事を無理なく同時にやるという考え方があります。

Mさんのケースで言えば、自分の価値観に基づいてやっていることは「僧侶」の道、自分の強みを活かす仕事は「資産運用」の道、そして2つとも、それを求めている人に貢献していることになります。また2つ道での学びが関連し参考になることもあります。

現役サラリーマンの方も、いま関わっている仕事の知識・スキルを広め深めることで、定年後のキャリアを複数に広げられるでしょう。

Mさんの体験談から学ぶこと

今回のMさんの体験談からは多くの学びがありました。

1.一人で悩まず周囲の意見も取り入れてみる

Mさんは同じ金融業界出身の先輩に相談をして、人生が変わるアドバイスをもらいました。一人で悩んでもなかなか答えが出ない時は、信頼している人に話してみて、フィードバックを受けることで拓ける道があります。

2.思い立ったら行動を起こすのみ

仏教への関心を思い出し、「これを突き詰めよう!」と通信教育を受講し始めたMさん。自分にとって必要だと感じることがあれば、行動を起こして自ら手に入れることが大切です。

3.新しいキャリアを選んでも、現役時代の経験は無駄にならない

現役時代の金融業界からはまったく異なる仏教の道へと進んだMさんですが、現在でも現役時代の仕事を一部継続しています。現役時代から自分の専門知識を深め、会社から必要とされる知識を身に付けている場合は、雇用形態を変えながら長くつながりを持ち続けられるのです。

4.キャリアは1つに絞らなくてもいい

定年後は自分の好きなこと、価値観に基づいたことを仕事にすることで、ストレスの少ない楽しい日々を送れます。

Mさんが仏教と金融業界の仕事を両立しているように、興味のある分野が複数あるなら、決してキャリアを1つに絞る必要はありません。複数のキャリア(トリプルキャリア)を持つことで精神的にも充実し、収入も安定していきます。

***
 

Mさんはいまサラリーマン時代とはまったく違う世界で新しいやりがいを発見しました。今も興味が尽きない「仏教の学び」を深めながら、これまでの強みを活かした資産運用にまつわる仕事をこなし、楽しんで毎日を送っています。

シニアのセカンドキャリアは「将来のために稼がなくてはいけない」というよりは、自分の好きなことを好きな形でやることが生きがいにつながります。好きなことはその人の価値観につながります。大切なことは多くの葛藤の中から掴み取っていくものなのですね。

髙橋 伸典/セカンドキャリアコンサルタント・モチベーション総合研究所代表・東京定年男女の会主宰

1957年生まれ。57歳で早期退職するも、多くのつまずき、苦労を経験する。しかし試行錯誤を重ねることで乗り越え、リスクなく独立する道をつかみ取る。東京都主催の東京セカンドキャリア塾、各自治体などでセミナーを行う。雑誌やウェブメディアでは、セカンドキャリアに関する寄稿の実績多数。著書に「定年1年目の教科書」(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

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