部屋は乱れ、貯金は半減…働き者で几帳面な母に現れた“ある異変”
Finasee / 2023年7月13日 11時0分
Finasee(フィナシー)
西崎昇さん(仮名)は一人っ子で、来年80歳になる母親が郷里の滋賀県の実家で一人暮らしをしています。自宅の近くに呼び寄せることも考えましたが、働き者で几帳面な母は一人でも楽しく暮らしているようだったので言い出しそびれていました。
そうこうするうちにコロナのパンデミックが勃発します。勤務先の病院がコロナ感染症患者を受け入れたことから、事務方の西崎さんも「これまでのビジネス人生で一番多忙」な3年間を過ごすはめに……。忙しさにかまけ、母親とのコンタクトもぐんと減ってしまいました。
仕事がようやく一段落したと思ったら母親が脳出血で入院。久しぶりに実家を訪れた西崎さんは、散らかった家の状態から母親の異変を感じ取ります。
さらに、母親の通帳を見たら、1000万円近くが引き出されていることに気づいたのです。母親のお金を詐取していたのは、西崎さんとも顔見知りの従姉妹でした。開き直る従姉妹に業を煮やした西崎さんが頼ったのが、高齢者問題に詳しいお金の専門家でした。
〈西崎昇さんプロフィール〉
東京都在住
51歳
男性
病院勤務(事務職)
ソーシャルワーカーの妻と2人暮らし
金融資産1500万円
私は都内の病院で事務長補佐を務めています。勤務先の病院がコロナ感染症患者を受け入れてきたこともあり、現場の医師や看護師ほどではないにしても、この3年間は相当なハードワークを強いられました。
それもあって、滋賀県の実家に一人で暮らす実母とは電話で年に数回話す程度でした。私はきょうだいがおらず、妻も医療従事者だったため、「様子を見に行ってもらえないか」と頼む相手がいなかったのです。
ですから、先月母が脳出血で倒れた時に久しぶりに実家に戻り、衝撃を受けました。若い頃の母は几帳面できれい好き。家の中は整理整頓が行き届き、台所や風呂場もピカピカに磨いてありました。
しかし、およそ3年ぶりに訪れた実家は「ゴミ屋敷」というほどではありませんが、畳の上にも衣服や書類、書簡などが散乱した何ともひどい状態だったのです。
わずか3年間で半減した母の貯金さらに頭を抱えたのがお金のことです。入院費用などを払うために母の預金通帳を探し出したのですが、最初のページでは2000万円近かった残高が、この3年間でほぼ半減していたのです。
母には父の遺族年金など月額で15万円の年金が振り込まれていますから、どう見ても不自然極まりない減り方をしていました。
不幸中の幸いか母の脳出血は軽度で、内服薬による治療が行われることになりました。容体が落ち着いてきたのを見計らって母に引き出したお金の使途を尋ねたところ、「八重ちゃんに渡した」と言います。
八重ちゃんとは、母の亡くなった長兄の娘で私の従姉妹に当たる八重子さんのこと。私よりひと回りほど年上です。隣町の母の実家に住んでいますが、母は昔から長兄とは不仲で実家と疎遠になっていたので、少々意外でした。
とにかく、「すぐに八重子さんに確認しなければ」と思いました。母が倒れた時に救急搬送や入院の手配をしてくれたのも八重子さんだったので、翌日、お礼も兼ねて菓子折りを持って母の実家を訪問しました。
私の様子から、八重子さんも察するところがあったのでしょう。同居する八重子さんの義姉の目を気にしたのか、「昇ちゃん、これから役場に行かないといかんから、車で送っていってくれない?」と持ち掛けてきました。
八重子さんの言い分道中、母のお金のことを問いただすと、八重子さんは母から約800万円を受け取ったことを認めつつ、こう言ったのです。
「でも、あれは叔母ちゃんが『八重ちゃん、持っていき』とくれたものだから」
母が八重子さんにあげたもの? 一体どういう理由で? しかし、それにしても金額が大き過ぎます。
「どういう事情で母が八重子さんにお金を贈与することになったのか、詳しく話していただけますか」とさらに問い詰めると「それは言いたくない」と口を閉ざす始末でした。
結局その日、八重子さんからそれ以上の情報を聞き出すことはできませんでした。見舞いの際に母に「八重子さんにあげたの? 貸したの?」と尋ねても、その都度答えが異なり、言っていることも要領を得ません。
高齢者の事情に詳しいFPへ相談しかし、800万円は大金ですから、放っておくわけにはいきません。このままではらちが明かないと、仕事関係で知り合った民事の弁護士さんに相談することも考えました。
妻にも経緯を話したら、「親戚だし、大ごとにしない方がいいんじゃないの」とたしなめられ、そういう問題に詳しい優秀な専門家を知っているからと紹介してくれたのが、ファイナンシャルプランナー(FP)の南さんでした。
南さんは終活や相続の相談を専門とするFPで、ソーシャルワーカーの妻とは勉強会で知り合ったそうです。
「南さんは本当に仕事熱心な人。困ったお年寄りに親身になって面倒を見ていたから、お義母さんのこともきっと何かしら解決の道筋を示してくれると思う」という妻の言葉に背中を押され、早速、南さんに直電したのです。
●南さんと共に八重子さんを問い詰めると“800万円の行方”が判明……。続きは、後編【母から800万円奪った従姉妹…ひそかに練っていた“仰天の構想”】で解説します。
※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。
Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。
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