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年金暮らしがさらに厳しく…70代男性を追い詰めた“想定外の支出”

Finasee / 2023年7月28日 11時0分

年金暮らしがさらに厳しく…70代男性を追い詰めた“想定外の支出”

Finasee(フィナシー)

地方の建設会社に40年勤務した私と専業主婦の妻が受給している年金は、月額に換算して22万円、手取りだと18万~19万円程度です。退職時は預金残高が2000万円くらいありましたが、自宅のリフォーム代や息子たちへの資金援助などで半減してしまいました。

●普通のサラリーマンを待ち受ける年金生活の現実とは?
※前編【「年金22万円」ではカツカツ…“普通の会社員”が迎えた厳しい老後】からの続き

経済基盤を揺るがした想定外の出来事

会社を辞めてから10数年は何とかやってきましたが、ここに来てわが家の経済基盤を揺るがす大きな問題が生じました。2歳年下の妻の認知症の症状が進み、最近は私の手に負えなくなったのです。

妻は元々明るく社交的な性格で、現役時代に私が仕事で苦境に陥った時は、その屈託のない笑顔がどれだけ救いになったかしれません。しかし、3年ほど前からふさぎ込みがちになり、かかりつけ医の勧めで脳ドックを受診したところ、アルツハイマー型認知症と診断されました。

妻は料理が得意で、息子たちがいる頃はいつもテーブルいっぱいに手の込んだおかずが並んだものです。にもかかわらず、近年は習慣で台所に立っても、自分が何を作ろうとしているのが分からなくなってしまうようでした。

買い物に出掛けて家に帰れなくなり、警察に保護された妻を迎えに行ったことも何度かありました。そればかりか、夜中にトイレに行って自室に戻れなくなったり、時には錯乱して大声を上げたりもしました。

介護保険で要介護3と認定され、デイケアや訪問介護のサポートを受けていましたが、とうとう妻の介護計画を担当するケアマネジャーから、「ご主人も大変でしょうから、そろそろ施設介護を検討した方がいいかもしれませんね」と勧められました。

施設にかかる高いコスト

問題はその施設にかかるコストです。

私の住む地方は高齢化がピークに達し、隣近所を見渡しても同世代の高齢者世帯ばかりです。そのため、特別養護老人ホームやグループホームといった低料金で利用できるような施設はどこも順番待ちの状態。すぐに入れるところと言えば民間の老人ホームしかありません。

ケアマネジャーが近隣のホームの入居案内をいくつか取り寄せてくれたのですが、いずれも何百万円という入居金に加え、月額20万円近い費用がかかります。わが家の収入や蓄えではとても手が届きません。

息子たちは2人ともマイホームを購入したばかり。これから孫たちの教育費もかかるでしょうし、とても援助を切り出せる状態ではありません。私自身が働いて収入を得る手もありますが、現役を離れて10年以上経つ老兵が稼げる額などたかが知れています。

ようやく見つけた理想の施設だったが…

ケアマネジャーはわが家の事情を汲んで、今の居住地からかなり離れた過疎地の特別養護老人ホームを紹介してくれました。

妻を連れて見学に出掛けたところ、思いのほか新しく掃除も行き届いた施設で、何より若い介護スタッフの方々がてきぱきと働いている姿が印象的でした。入居者の顔も生き生きと輝いて見えました。

お金のことを考えると他に選択肢もなく、妻をその特別養護老人ホームに入居させることに決めました。自宅からは電車やバスを乗り継いで2時間近くかかります。交通費もかさむので、そう頻繁に顔を見に行けませんが、あの環境とあのスタッフなら、安心して妻を任せられると思いました。

しかし、妻の実家を継いだ義弟に電話で報告したところ「課長まで務めた人が、嫁をそんな過疎地のホームにやるんかね」と毒づかれ、苦々しい気持ちになりました。妻の実家は代々続く農家です。土地持ちで、首都圏から移転した企業に工場用地を貸していて、それなりの収入もあるようです。

義弟に頭を下げれば妻を近くの老人ホームに入れてやれたのでしょうが、それは“地元の名士”を気取る義弟と距離を置いていた妻の本意でもないと思い、ハナから当てにはしていませんでした。

サラリーマンが人並みの老後も送れない現実

それにしても、ごく普通のサラリーマン人生を真面目に歩んできたはずの私が、70代になってこんな思いをするとは想像もしていませんでした。現役時代にコツコツと投資でもしていればもう少しは懐具合が良くなっていたのかもしれませんが、今さら何を言ってもあとの祭りです。

これからの日本は「異次元の少子化対策」が強化され、われわれ高齢者はますます冷遇されることになりそうです。年金は増えないのに、税金や社会保険料の負担は重くなる。人生100年時代と言っても、このままでは自分の寿命を全うできる自信がありません。

思えば、私の親世代の高齢者はもっと豊かでした。亡くなった父もサラリーマンで母は妻と同じ専業主婦でしたが、退職して家督を兄に譲った後は2人して日本の名所や温泉を巡って余生を楽しんでいました。それに加えて、私の息子2人の大学資金まで援助してくれたのです。

今の私に、とても同じことができる余裕はありません。時代の違いと言ってしまえばそれまでですが、普通のサラリーマンが人並みの老後すら送れない国で、果たして若い人たちが子供を持ちたいと思えるのでしょうか。

妻と離れ一人暮らしになった今は、毎晩届く500円の宅配弁当が唯一の楽しみです。

※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。

Finasee編集部

金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。

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