お金を増やすためではない!? 富裕層が“投資を楽しむ”意外な理由とは…
Finasee / 2023年8月1日 11時0分
Finasee(フィナシー)
老後不安を抱える人も多い昨今。自由に使えるお金の多さだけが幸せとは言い切れませんが、お金がある分だけ人生の選択肢が増えていくのは紛れもない事実です。将来に対する不安と向き合うためにも、投資のリテラシーを学びながら資産設計する必要性は高まっているといえるでしょう。
話題の書籍『“こわい”がなくなる投資1年生の教科書』では、お金やキャリアに関する個人相談、ライフプラン等に関する企業研修に従事するファイナンシャルプランナー佐藤彰氏が、読者のレベルや志向にあわせてステップアップできる“マネトレ投資”について優しく解説。今回は本書の第1章「投資初心者はマネトレから始めるのが正解」の一部を特別に公開します。(全3回)
●第1回:それは免許もとらずに車に乗るようなもの…“いきなり投資”はNGといえる「これだけの理由」
※本稿は、佐藤彰著『“こわい”がなくなる投資1年生の教科書』(自由国民社)の一部を再編集したものです。
投資をリスクのレベルで3つに分ける第1回のような失敗をしないためにまず覚えていただきたいのは、投資には実にさまざまな種類があるということです。
例えば、いま投資初心者に人気の高いiDeCoやつみたてNISA以外にも、株式投資、投資信託への投資、国債や社債などへの債券投資、FX(外国為替証拠金取引)、原油や大豆などの商品先物取引などのほか、金(GOLD)、アンティークコインやワイン、不動産といった実物資産への投資などもあります。
さらに、最近ではビットコインに代表される暗号資産(仮想通貨)への投資もあり、投資対象はますます増え続けています。
世間一般にはその多くの種類をごっちゃにして話されることが多く、それが投資を始める上での障害になっているというのが、投資に携わる仕事を15年間続けてきた中での私の実感でもあります。
そこで私が、これから投資を始めたいと考える皆さんにお勧めしているのが、個々の投資の種類はひとまず置いておき、「投資」を主にリスクのレベルによって3つのステージ(段階)に分けて考えていただくことです。これからその詳細について、説明していきます。
学びの投資とは?1つ目は「学びの投資」です。学びの投資とは、「資産を増やす」本来の投資を行う前に「投資の入門」として実施する「投資の練習」のことです。
最近、学校教育でアクティブラーニングという手法が盛んだと聞きますが、それと似ています。学びの投資の「学び」とは、机の上での「お勉強」ではなく、自ら能動的に動いて学ぶ体験学習中心の「学び」を意味します。
投資は当然、「資産を増やす」ために行うわけです。しかし、投資を始めていきなり短期間で資産が増えるわけではありません。投資で失敗する原因も、「投資を始めてすぐに大儲けしたい」という欲求が背景にあると思います。
実際には、投資を始めてから次第にお金の知識や経験値が増えてきて、その後にお金が増え始めるというのが真っ当な過程になります。このお金の知識と経験値を、投資しながら増やしていくのが最初のステップです。お金を増やすのではなく、まずは「お金を学ぶ」ことを目的とした「投資」が必要です。
知識・経験とともに着実にお金が増えるのが理想テレビやネットの世界では、株で大金を稼いだとか、ほったらかし投資で1億円といった話もよく話題になりますし、投資系ユーチューバーといった人々が人気を集めています。ただ、こういう人たちの中で本当に成功している人は投資を始めてすぐに儲けたというよりも、そこに至るまでにさまざまなことを勉強したり、失敗を繰り返しながらようやくそこまで到達しているのが実際の姿なのです。
中には、投資を始めていきなり大きく儲けたという話題も出てくることもありますが、実際にそういうケースはまれで、参考にはなりません。宝くじに当たるのと同じで運がよかっただけです。
自動車の運転だと免許があって初めて路上で運転できます。運転前に一定レベルに達することが強制されています。しかし、投資はフリーです。「免許」がなくても金融市場という「路上」で投資を始められます。これでは「事故」に遭っても文句はいえません。
ですから、自分から意識的に、「教習所で学ぶ期間」を設定することが必要になるのです。「学びの投資」を実践する期間は、自動車の教習所に通う期間があるのと同じイメージと考えてください。
資産形成の投資とは?2つ目は「資産形成」の投資です。これは名前の通り本格的に投資を始め、資産を増やしていくことを目的にした投資です。いわば「当たり前」の投資かもしれません。世間一般的には、このタイプの投資を勧められることが多いですが、これがすべての投資のしかたではありません。
この投資は、セオリーに則った手堅い投資で、言い換えれば「つまらない」投資になりがちです。基本的なことを地道に継続していくだけですし、よくも悪くも考えたり、悩んだりする手間がかかりません。
だからこそ、誰にでも実践可能で再現性の高い投資法でもあります。また投資は将来の何かしらの目的のための資産づくりとして始めるわけです。その意味では「失敗できない」投資です。勝つよりも「負けない投資」と表現することもできるでしょう。
私は野球が好きなのですが、資産形成の投資は野球でいえば、国際試合の野球です。野球だとどんな試合をするのかで選ぶ選手が変わってきます。
例えば、国内のオールスターの試合であれば、ファン投票で選ばれた選手が一堂に会して試合をします。その選手はもちろん、実力のある選手ではありますが、それに加えて人気もないと選ばれません。いわば、オールスターの試合は「ファンが喜ぶ野球」です。
一方で、WBCなど国際試合のときは、日本代表監督が選手を選びます。国際試合の場合は一発勝負で、負けが許されない場合が多いでしょう。そのため点を取ることより、点を取られないことを重視して選手を選びます。それは金メダルを取るためです。いわば国際試合の試合は確実に勝つためで、言い換えれば「負けない野球」です。
「資産形成の投資」はまさにこれと同じです。人生も一発勝負でやり直しがききません。だからこそ、考えなくてはならないのが「負ける」リスクです。そのリスクを極力減らした手堅い手段で投資するのが、資産形成の投資です。
楽しむ投資とは?3つ目が「楽しむ投資」です。これは資産を増やすことだけでなく、「ワクワク感」を大切にした投資です。「資産形成の投資」はガチガチのやり方で投資の裁量が少ないため、やっていても楽しくないという話をときどき耳にします。こういった投資とは一線を画した投資です。
私は証券会社出身ということもあり、昔から多くの人にどういった投資をしたらよいのかとよく聞かれます。投資ですから、当然資産を作りたいからやりたいと思っている人ばかりと思われがちですが、むしろ値段が上がるか下がるかのドキドキ感を味わいたい、というのが主な目的なんだなと感じる方も実は意外と少なくありません。
そういった投資をやってみたい方にお勧めの投資が「楽しむ投資」です。
こういう投資を普段からやっているのは、昔ながらの対面型の証券会社で取引をしている、いわゆる富裕層の顧客です。このような方々は既に十分な資産を持っていて、老後資金が心配だからという方はほとんどいません。投資で損をしたからといって生活に困るという方は少数派です。
では、どうして投資をしているのかというと、「楽しい」からです。証券会社と取引すると、残念ながら投資資産にマイナスが出る方も少なくはありません。それでも証券会社は長い日本の歴史の中でなくなることなく、今でも存在しています。
一般的に顧客が損をしても企業として成り立つという業種はあまりありませんが、証券会社はその例外に当たります。なぜそうかといえば、顧客に提供しているのが値上がり益だけではなく、「ワクワク感」もあるからです。
昔ながらの証券会社で取引している顧客は、金銭的な利益を得ることだけでなく感情的なベネフィットも、投資のモチベーションになっているわけです。
〈POINT〉
・投資をリスクのレベルによって、3つのステージに分けて考える。
・資産が増えるのが楽しみな「ワクワク感」という動機も無視できない。
●第3回(「興味はあるが…損するのがこわい!」投資アレルギーに効く、“練習方法”)では、初心者におすすめのマネトレ投資法と、その効果について解説します。
『“こわい”がなくなる投資1年生の教科書』佐藤彰 著
発行所 自由国民社
定価 1,540円(税込)
佐藤 彰/ファイナンシャルプランナー
2006年中央大学法学部法律学科卒業。佐藤彰コーチングFP事務所代表。大手と新興の2社の証券会社を経て現職。証券会社勤務時代はコンプライアンスと人材育成部門に従事。現在はお金やキャリアに関する個人相談、ライフプラン・確定拠出年金・コーチング等に関する企業研修に従事。女性メディア、金融メディアでの執筆・監修多数。FP以外に米国のコーチ資格も保有。金融教育を重視しており、コーチングの手法を用いて「ひとり立ち」できるところまでの継続支援がモットー。
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