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投資信託で「為替ヘッジあり・なし」を選べるなら…どちらにするのがベスト?

Finasee / 2023年7月10日 17時0分

投資信託で「為替ヘッジあり・なし」を選べるなら…どちらにするのがベスト?

Finasee(フィナシー)

再び、ドル高・円安が進んでいます。このような状況になると、多くの人が「ああ、やはり米ドル建ての金融商品を買っておけば良かった」などと思って後悔しがちですが、逆に米ドル安・円高が進んだとしても、「どうしてこんなものに投資してしまったのだろう」と後悔しがちです。

2022年3月から10月にかけては、恐らく前者の方が多かったでしょう。なぜなら米ドル/円が、1米ドル=115円前後から、151円94銭まで米ドル高・円安が進んだからです。

しかし、その後は後者の方が多かったのではないでしょうか。2022年10月21日に1米ドル=151円94銭という高値をつけた米ドルは、2023年1月20日にかけて、1米ドル=127円23銭まで急落したからです。

この間、米国の長期金利は3%台半ばから4%前後で推移していましたが、米ドルは対円で16.26%も下落したので、いくら相対的に金利の高い米国国債を購入したとしても、この間の為替差損によって、実質的には含み損を抱えることになります。嘆きたい気持ちになるには十分でしょう。

そして今、再び米ドル高・円安が進んでいる状況を見て、米ドル安・円高局面で後悔していた人たちは、少し明るい気分になっているのではないでしょうか。

外貨建て金融商品の為替リスク

こういう時に、よく聞かれるのが「だったら為替リスクをヘッジして投資したら良いのでは?」という意見です。それをレポートにしたのが、日興アセットマネジメントが定期的に作成している「こよみ vol.173」で取り上げられたテーマです。

米ドル安・円高が進むと、米ドル建て金融商品の円建て時価評価額には含み損が生じます。米ドル建てをはじめとする、外貨建て金融商品での運用を敬遠する人は、大体において、この為替リスクを嫌気しているケースが多く見られます。

ですが、為替リスクをヘッジしておけば、たとえば米ドル安・円高が進んだとしても、為替差損の発生を最小限に抑えられます。実際、海外の株式や債券に投資する投資信託の中には、為替リスクをヘッジしたものと、ヘッジしないものとを選べるようになっているものもあります。

そうなると、為替リスクをヘッジした投資信託を選べば良いのか、という話になるのですが、選ぶ前に、為替リスクをヘッジする際の仕組みを理解しておいた方が良いでしょう。

仕組みと注意点

現在、1米ドル=145円で米ドルを買うのと同時に、将来、その米ドルを売却する際の為替レートを現時点で予約するという取引があります。これを為替先物予約と言います。

為替先物予約を用いて、将来、米ドルを売却する際の為替レートを確定させるためには、日本と米国の金利差を調整して算出します。

たとえば1米ドル=145円だとします。仮に、米国の1年金利が5%で、日本のそれが1%だとしましょう。両者間には4%の金利差があります。1米ドル=145円ということは、100米ドル=1万4500円です。

米国で、100米ドルを年5%で1年間、運用した場合の元利合計額は105米ドルになります。日本で、1万4500円を年1%で1年間運用した場合の元利合計額は1万4514円です。

上記の計算式で求められた米ドルと日本円の1年後の元利合計額をベースにして、1米ドルはいくらになるのかを計算すると、

1万4514円÷105米ドル=138円22銭

つまり1米ドル=138円22銭という数字が算出されます。これが、1米ドル=145円で米ドルを買い、1年後に売却する際の米ドルの為替レートを予約した際に適用される為替レートになります。

もうお気づきかと思いますが、より低い金利の国の通貨で、より金利の高い国の通貨を先物で売り予約すると、両国の金利差分だけ、米ドルを売って円を買い戻す際に適用される為替レートは、円高水準に確定されるのです。これが為替コストと呼ばれるものです。

したがって、より低い金利の国の通貨(このケースだと日本円)でもって、より高い金利の国の通貨(このケースだと米ドル)の先物売り予約を行う時は、金利差分以上のリターンが期待できる資産に投資しないと、利益が出ません。

為替リスクをヘッジすれば、大きく米ドル安・円高が進んだとしても、為替差損が大きくなるのをある程度まで抑えられますが、為替コストの分だけ、投資先となる株式や債券が値上がりしないと、むしろ損失が生じてしまう恐れがあるのです。

もうひとつ、為替リスクをヘッジするに際して注意点があります。それは、外貨の売り予約をした後、その外貨が大きく値上がりしたとしても、為替差益は一切取れないということです。

前出の例で言うと、1米ドル=145円から150円まで米ドル高・円安が進んだとしても、1年後に米ドルを売る際に適用される為替レートは、あくまでも1米ドル=138円22銭なのです。

為替ヘッジあり・なし、どう選ぶ?

では、海外の株式や債券を組み入れている投資信託で、為替ヘッジありと為替ヘッジなしが選べる場合、どちらにした方が良いのでしょうか。

もちろん、どうしても為替リスクに馴染めないというのであれば、為替ヘッジありを選ぶのもありだと思いますが、実は長期の為替レートの推移を見ると、特に米ドル/円は案外、大きく動いていないことが分かります。

たとえば1979年からの米ドル/円を見ると、1987年に米ドルの高値、1米ドル278円50銭があり、そこから1995年の1米ドル=79円75銭まで大きな米ドル安・円高局面があったものの、それ以降の推移を見ると、米ドルの安値が1米ドル=75円52銭、高値が2022年の1米ドル=151円94銭というように、大体75円から150円のレンジ内に納まっています。

それでも、確かにかなりワイドなレンジではありますが、長期的にこのレンジ内で推移しているということを考えれば、将来的に米ドル安・円高が進んだとしても、また再び米ドル高・円安に戻ることも十分に考えられます。

そこから考えると、長期的な時間軸で海外資産に投資するのであれば、為替ヘッジなしで投資したとしても、為替差損によって円ベースの資産価値が大きく毀損する恐れは小さいと考えられます。

もちろん、あくまでも長期投資を前提にしますが、外貨建て金融商品を購入するにあたって、必要以上に為替リスクを怖がることはないのです。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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