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新NISA成長投資枠の対象商品第1弾—リストになかった“あるタイプ”の投資信託とは

Finasee / 2023年7月12日 17時0分

新NISA成長投資枠の対象商品第1弾—リストになかった“あるタイプ”の投資信託とは

Finasee(フィナシー)

去る6月21日、当初の予定から大幅に遅れる形で、新NISAの成長投資枠の対象投資信託の第1弾が公表された

投資信託協会のホームページ上で公表

そこで今回は、ファンドアナリストとしての所感と、現時点で把握しておきたい注意点について見ていく。

成長投資枠は、文字通り、長期資産形成にふさわしい投資信託のラインナップとすべく、以下の3つの除外条件が設けられている。

①信託期間20年未満
②毎月分配型
③ヘッジ目的以外のデリバティブ(金融派生商品)使用

運用会社各社は、上記の除外条件に加え、税法上の要件等を踏まえた上で、対象として判断した商品について投資信託協会に届出を行う。そして、届出のあった商品について、協会が取りまとめを行い、12月まで毎月1回リストが更新されていく。これが、成長投資枠の商品追加の流れである。

意外と多い? テーマ型投資信託のラインナップ

さて、今回、第1弾として公表された投資信託941本の内訳を見て、最も印象的だったのは、筆者が想像していたよりも、テーマ型や、特定の国・地域を投資対象とする投資信託の数が多かったということだ。

かねてより金融庁は、投資初心者に資産運用で致命的な失敗をさせないよう、万人向けではない、リスク性の高い商品について目を光らせてきた。その典型例がテーマ型投信である。また、テーマ型は、販売会社による、いわゆる回転売買を誘発しやすい商品としても指摘されてきた。

確かに過去、テーマ型の一部にそうした側面があったことは否定できないが、前回(上昇相場の立役者「半導体関連銘柄」へ投資するなら、テーマ型投信が有効な理由)でも触れた通り、付き合い方さえ間違えなければ、その商品性を一律に否定できるほど悪い商品ではない。特に新NISAでは、非課税投資枠が簿価管理になることで、ライフプラン等に応じて「使いながら増やす」ことが可能になるだけでなく、個別株投資も認められるようになる。テーマ型が多様なニーズの受け皿になる可能性は十分あり、そうした意味で多少“尖った”、特徴のある投資信託が完全に排除されなかったことは歓迎したい。

先述した通り、成長投資枠の対象商品はあくまでも運用会社側が、長期投資に資すると判断した上で必要に応じて約款変更を行い、最終的に投資信託協会に届出を行うことでラインナップへの追加がなされる。言い換えれば、成長投資枠の商品には、運用会社側に「長期で販売(運用)し続けられる」というコミットメントが存在するということになる。運用や情報開示の面で、この点には大いに期待したい。

一方で、投資家側も「新NISA対象だから安心」という考えは禁物だ。繰り返しになるが、テーマ型のほか、特定の業種や地域に投資対象を集中させた投資信託のリスクが総じて高いことは事実である。また、このようなタイプの投資信託で成功するには、解約のタイミング、つまり、テーマに取り残されないための“出口戦略”も重要な要素となる。自分で解約のタイミングを見極める自信がないなら投資しない方が良い。

新NISAは制度自体が恒久化され、現行制度のようなタイムリミットはなくなる。成長投資枠の利用についても、決して焦る必要はないので、順を追って検討していけば良いだろう。

リスクコントロール型がラインナップに入らなかった理由

冒頭で紹介した、現行の成長投資枠の除外条件で実に“厄介”なのが、③の「ヘッジ目的以外のデリバティブ使用」である。

というのも、デリバティブ取引は、運用効率を高める目的で、主にリスクコントロール型のバランス型ファンドなどで多用されているためである。デリバティブを活用することで、結果的に運用にかかる総コストを抑えられるというメリットもある。

当局が規制したいのは、ブル・ベア型やレバレッジ型など、投機的な運用を目的としたデリバティブ取引なのだが、今回の除外条件に照らし合わせると、リスクを抑えながら安定的な運用を行うタイプのバランス型も対象から外れてしまう。

実際に、6月に公表された第1弾のラインナップには、このようなバランス型が含まれていない。運用会社によっては今後、約款変更を行うなどして対応する可能性もあるが、現時点ではあまり期待しない方が良い。

NISAのデメリットは、損益通算ができないという点にある。したがって、少しずつでも着実にリターンを獲得・積み重ねていくことが重要であり、リスクコントロール機能の付いたバランス型は、本来なら“使い勝手のよい”商品なのである。なお、債券の組み入れ比率が高い投資信託についても、同様の理由で届出が見送られているケースが多い。本末転倒ではあるが、この点については当面様子見とするほかないだろう。

冒頭でも触れた通り、新NISAの対象銘柄は今後、制度開始前の12月まで月1回追加されていく予定だ。もし、自身の保有する、あるいは、新NISAで購入を検討している投資信託(特にバランス型)が今後もラインナップに入らない場合、通常の課税口座で保有することも選択肢に入れる必要がある。成長投資枠の対象商品は、投資信託協会のホームページで誰でも閲覧できるので、運用会社に問い合わせる前にまずは確認してほしい。

篠田 尚子/楽天証券資産づくり研究所 副所長 兼 ファンドアナリスト

慶應義塾大学卒業後、国内銀行を経て2006年ロイター・ジャパン入社。傘下の投資信託評価機関リッパーにて、投信業界の分析レポート執筆、評価分析などの業務に従事。2013年、楽天証券経済研究所入所。日本には数少ないファンドアナリストとして、評価分析業務の他、資産形成セミナーの講師も務めるなど投資教育にも積極的に取り組む。近著に『【2024年新制度対応版】NISA&iDeCo完全ガイド』(SBクリエイティブ)。

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