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「保険を解約してインデックス投資に全振り」の選択に潜んでいた“2つの誤解”

Finasee / 2023年7月26日 11時0分

「保険を解約してインデックス投資に全振り」の選択に潜んでいた“2つの誤解”

Finasee(フィナシー)

智明さんは妻と未就学児のお子様2人と暮らす会社員。外貨建ての終身保険へ加入していますが、つみたてNISAの運用益を見るうちに、この保険に加入し続ける意味があるのかお悩みになり相談に訪れました。

外貨建て終身保険の加入を続けることに意味があるのか、そしてその浮いたお金でインデックス投資をした方がいいのではないかと考える智明さんの考えには、2つ誤解があるように思います。

●つみたてNISAの運用益を見て、保険継続への迷いが生まれた男性。
※前編【「保険って意味ある…?」つみたてNISAを始めた男性が抱いた疑問】からの続き

①全てのアクティブがインデックスに勝てないという誤解

智明さんのおっしゃる通り、一般的にアクティブはインデックスに勝てないと言われることが多いですが、それは全ての投資信託にあてはまるわけではありません。

金融庁「プログレスレポート」によると…

2023年4月金融庁の「プログレスレポート」では、米国、欧州、日本の各地域の大型株に投資するアクティブ系ファンドについて、コスト控除後のリターンを各地域のベンチマークと比較したところ、3年、5年、10年、どの時間軸でもアクティブファンドに超過リターンがあったそうです。ここで比較したベンチマークは、米国はS&P500、欧州がMSCI ­Europe、日本がTOPIXです。

その勝率は、各地域で大小あるものの、どの時間軸でも日本が一番大きく、そこに欧州、米国と続きます。具体的な勝率は、10年のケースで言うと、日本33.3%、欧州21.3%、米国13.4%。日本のケースで言うと、なんと約3分の1のアクティブファンドがベンチマークのTOPIXを上回っているという結果だったのです。

この結果を受け、プログレスレポートでは、「資産運用会社は、アクティブ運用の拡大に向けて、人事・報酬制度を柔軟化して、国内外の有能な運用人材を集めるとともに、運用事務及び運用以外の事務の効率化・合理化を追求し、運用力強化に注力して頂きたい」と述べられています。

金融庁「投資信託の共通KPIに関する分析」によると…

また、金融庁では投資信託の販売会社を比較できる共通指標、「投資信託の共通KPI」を公表しています。その指標の1つが運用損益別顧客比率で、運用損益が出ている顧客の割合を主要行等部門、証券会社部門、その他事業者部門などに分けて公表しています。

このうち、2022年3月末基準の共通KPI、その他事業者部門を見てみると、平均より上位に位置する会社のうち、つみたてNISAで採用されているファンドを自ら作って運用・販売している会社は、セゾン投信、コモンズ投信、レオス・キャピタルワークス、鎌倉投信であり、いずれの会社のファンドもアクティブ型です。

どの程度の顧客が、運用損益率がプラスであるかと言うと、セゾン投信99.1%、コモンズ投信94%、レオス・キャピタルワークス82.2%、鎌倉投信81.4%。つまり、セゾン投信の場合、顧客の99.1%が、運用損益率がプラスになっているというわけです。

プログレスレポートと共通KPIは内容がリンクしていないため混同されないようにしていただきたいのですが、いずれにしても優秀なアクティブファンドは確実に存在していることが分かります。

それゆえ、初めからインデックスに絞ってアクティブに全く目を向けないことは、大変もったいないと言えるのです。

アクティブファンドの魅力とは?

智明さんへプログレスレポートのグラフをお見せしながら説明をすると、「アクティブは、インデックスに勝てないというネットの情報がとても多いですし、アクティブ型は手数料が高いので、全く見ていませんでした。でも、コスト控除後でこれだけの勝率があるのですね!」と目から鱗の様子で驚かれていました。

とはいえ、アクティブファンドの魅力は、過去の成績だけではありません。投資信託を選ぶ際に、過去の成績よりも注目していただきたいのが、運用方針と運用者の想いです。

目論見書では、投資先の企業や企業を選ぶ際の判断基準、運用方針などが記載されています。日本株のファンドであれば知っている企業名が掲載されていると思いますから、これについては、外国株のアクティブファンドより日本株のアクティブファンドの方が理解しやすいでしょう。

また、運用報告書では、運用担当者の写真付きでコメントが掲載されたり、コメントを動画配信していたり、運用者と投資家との距離が近くなるような工夫がされています。

銘柄入れ替えが行われ、その経緯が報告されていれば、どのような運用を行ってきたのかも分かり、投資家にとって安心材料となります。

インデックスファンドとの1番の違いは「個性」

インデックス運用はベンチマークに連動するため、価格変動の状況を理解しやすいのが特徴です。経済全体が成長するなら、インデックス運用で今後も利益を上げていくことはできるでしょう。

しかし、持続的で魅力的なサービスやモノを提供する企業に厳選して投資をするアクティブファンドがあるなら、インデックス運用より高いパフォーマンスを見せてくれるかもしれません。

アクティブファンドにはインデックスファンドでは味わえない個性があります。そこに共感や信頼感など心が動かされるものがあると、そのファンドのファンになり、投資に楽しみが増すことでしょう。

②「保険は運用目的で加入するもの」という誤解

さて、それを踏まえて保険を続けた方が良いかどうかですが、まず保険へ加入する意味は「運用のみ」ではないという認識が必要です。

確かに運用という点では、やはり投資信託の方が効率的でしょう。保険は保険会社が運用してくれていますが、運用されている資金は保険料の一部に過ぎないので、保険料にあたる資金を全額自分で運用した方が効率的なのです。

しかし、保障という点ではどうでしょう。智明さんの場合は、未就学児のお子様が2人で、これからますます子育てにお金がかかりますから、智明さんに万一のことがあった場合を考えてみます。

まず、外貨建て終身保険とは別で加入している収入保障保険から、毎月10万円の保険金が下ります。それに加え、妻の会社員としての収入が手取りで毎月約15万円あります。さらに、国から死亡時の保険として遺族年金が支給されます。

これらの収入があれば、毎月の家賃と駐車場代という大きな支出こそあるものの、日々の生活費をカバーできそうです。ただし、教育費までカバーするのは厳しいかもしれません。

仮にお子様1人あたりの大学進学費用の目安が500万円だとすると、2人分で1000万円。智明さんに万一のことが起きた際に、妻が1人で準備するにはあまりにも大きな金額です。

つまり、この時点で、万一の際の保障が不足しているのです。したがって、運用目的でなく保障目的で、かつ為替リスクを受け入れられるなら、外貨建て終身保険に加入し続ける意味があると言えます。

***
 

相談後、智明さんは「保障目的という点では考えたことがなかったです。保険が悩みのタネだったのでスッキリしました」とすっかり不安が解消された様子でした。

さらに、来年からNISA制度の非課税枠が大きくなることを見据えて、「ぜひアクティブファンドも取り入れたいですね」と日々の投資の選択肢も広がったようです。智明さんが、お気に入りのアクティブファンドを見つけることを楽しみにしています。

前田 菜緒/ファイナンシャルプランナー

FP事務所AndAsset代表。ファイナンシャルプランナー(CFP、1級FP技能士)。大手保険代理店に7年間勤務後、独立。子育て世代向けにライフプラン相談、セミナー、執筆などを行っている。子連れでセミナーに行けなかった自身の経験から、子連れOK、子どもが寝てから開催するなど、未就学児ママに配慮した体制で相談やセミナーを実施。経済的理由で進学をあきらめる子をなくしたいとの想いを持ち、活動中。

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