ドラッグストアの先駆者「マツキヨ」 投資家に好かれる“高利益率”のワケ
Finasee / 2023年7月14日 17時0分
Finasee(フィナシー)
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ドラッグストアチェーン大手「マツキヨココカラ&カンパニー」の株価が好調です。国内に3300超という業界屈指の店舗数を誇る同社は、コロナ禍で苦戦した業績の改善が進んでおり、株式は2022年から上場来高値の更新が相次ぎました。
【マツキヨココカラ&カンパニーの業績】
※2024年3月期(予想)は、2023年3月期時点における同社の予想出所:マツキヨココカラ&カンパニー 決算短信
【マツキヨココカラ&カンパニーの株価(月足、2020年5月~2023年5月)】
出所:Investing.comより著者作成
JPX総研は2023年7月から算出する「JPXプライム150指数」に同社の株式を採用すると発表しました。今回は国内ドラッグストア大手の一角、マツキヨココカラ&カンパニーに焦点を当ててみましょう。
都心型ドラッグストアの先駆者「マツキヨ」擁する小売りチェーンマツキヨココカラの中核企業「マツモトキヨシ」は1932年に誕生しました。創業者の松本清(まつもと・きよし)氏が「松本薬舗」として開業し、1951年に店名を「薬局マツモトキヨシ」へと変更します。カタカタ表記としたのは、誰にでも読むことができ、また他にない店名とすることで差別化を図る狙いがありました。
マツモトキヨシが躍進するきっかけとなったのが都心型店舗の展開です。1987年に上野(上野アメ横店)、1991年に渋谷(マツモトキヨシ渋谷センター街店)を出店しました。アメリカ式のドラッグストアにならい、明るく開放的にデザインされ、品ぞろえも化粧品や雑貨など薬以外のさまざまな商品を取り扱いました。
これらの店舗は「暗く、体調が悪いときに行くところ」という従来の“薬局”のイメージを刷新し、客層が拡大し話題となります。マツモトキヨシが手掛けた都市型店舗は、今や業界のスタンダードとなりました。
創業者は元市長でアイデアマン 今も残る「すぐやる課」創業者の松本氏には、氏がアイデアマンであったことを物語る数々のエピソードが残されています。上述したカタカナ表記とした店名もその一つで、他に店舗に集客用の猿を展示したほか、空箱を積み上げて品ぞろえをアピールする陳列方法など、さまざまなアイデアを取り入れてきました。
そんな松本氏は、実は政治家としての顔も持っていました。1942年に古金町(現・松戸市)の町会議員となり、1947年に千葉県議会議員に当選。そして1969年に松戸市市長となります。松本氏は市長としての給与を返上し、薬局経営と並行して職務に当たります。
市長時代においても松本氏のアイデアは発揮されました。特に有名なものが「すぐやる課」です。当時は人口の急増で行政サービスが追いつかず、市民の不満が高まっていました。その状況を打開するため、松本氏が同課を発足させます。
すぐやる課は、「すぐやらなければならないもので、すぐやり得るものは、すぐにやります」の旗印の下、市民の要望を受けたら可及的速やかに対処する課として誕生しました。ひらがな表記としたのは、「小学生でも読めるように」という松本氏のアイデアが込められています。ユニークな取り組みは全国的に有名になり、全国の自治体に同様の課が多数誕生しました。
すぐやる課は、50年以上たった今も松戸市役所に存在しています。現在もハチの巣の駆除や道路上の放置物の撤去など、松本氏が残した精神を引き継いで業務にあたっています。
投資家がウエルシアよりマツキヨココカラを選ぶ理由現在まで業界をリードしてきたマツキヨココカラですが、実はシェアは首位というわけではありません。売上高はイオングループの「ウエルシアホールディングス」に劣ります。
しかし株式の時価総額はウエルシアが同業でトップクラスの水準にあり、直近の株価推移も明らかにマツキヨココカラが優位な展開となっています。このことから、より投資家に選好されているのはマツキヨココカラといえそうです。
【主なドラッグストアチェーン大手の時価総額(2023年6月26日終値)】
・マツキヨココカラ&カンパニー:1兆1570.30億円
・ウエルシアHD:6244.61億円
・ツルハHD:5391.77億円
出所:YAHOO!ファイナンス
【主なドラッグストアチェーン大手の株価(月足終値、2023年5月末=100)】
出所:Investing.comより著者作成
なぜマツキヨココカラには投資家の資金が向かっているのでしょうか。理由の一つは利益率の高さにあると考えられます。大手3社の業績を比較すると、マツキヨココカラの営業利益率は他2社と比べ高い水準にあることがわかります。
【主なドラッグストアチェーンの業績】
出所:各社の決算短信
マツキヨココカラの高い利益率は、統合によるシナジー効果も影響していると考えられます。マツキヨココカラは、2021年10月に「マツモトキヨシホールディングス」と「ココカラファイン」が統合して誕生しました。
マツキヨココカラは統合を進め、それまで両者が個別に実施していたマーチャンダイジングやサービスを一本化します。その結果、小売り事業の営業利益率はマツモトキヨシグループで1.3ポイント、ココカラファイングループで4.0ポイント改善しました(2021年3月期比)。
またPB(プライベートブランド)の強さも関係しているとみられます。マツキヨココカラは「RECiPEO(レシピオ)」や「THE RETINOTIME(ザ・レチノタイム)」といった高品質PBを多数展開しており、売上高に占めるPB比率は12.7%にまで高まっています(2023年3月期)。ウエルシアは6.3%(2023年2月期)であり、2026年2月期までに同10%を目指していることを踏まえれば、マツキヨココカラのPB戦略がいかに成功しているかわかります。
PBは開発にコストやリスクを負う一方、他社が作るNB(ナショナルブランド)を販売するよりも利益率が高い傾向にあります。マツキヨココカラの高い利益率は、好調なPBとは無縁ではないでしょう。
マツキヨココカラは、グループ経営目標として2026年3月期までに売上高1.5兆円、営業利益率7.0%を目指しています。今後も投資家を引きつけることができるのか、マツキヨココカラの動向が注目されます。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
Finasee編集部
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