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「結婚したら家を買う」の考えはもう古い⁉ これからの住まいの正解は…

Finasee / 2023年7月18日 16時0分

「結婚したら家を買う」の考えはもう古い⁉ これからの住まいの正解は…

Finasee(フィナシー)

7月4日、厚生労働省が2022年の「国民生活基礎調査の概況」を発表しました。この調査結果の概要には、「世帯数と世帯人員の状況」「各種世帯の所得等の状況」「世帯員の健康状況」「介護の状況」について、統計データと簡単な解説文が掲載されています。

今の日本で生活している人たちの状況を把握するうえで参考になる統計なので、興味のある方は目を通してみてください。

「世帯数の増加」が意味すること

この統計で注目したいのは、「世帯構造別の世帯数」です。この数字の推移を見ると、これまで当たり前とされてきた「お金の常識」を、少し見直さなければならないような気がするのです。

まず世帯構造の類型は、「単独世帯」「夫婦のみの世帯」「夫婦と未婚の子のみの世帯」「ひとり親と未婚の子のみの世帯」「三世代世帯」「その他の世帯」という6類型があります。

全体の世帯数は、1986年の3754万4000世帯から、2022年は5431万世帯まで増加しました。とはいえ、世帯数の増加と人口の増加は必ずしも一致しません。恐らく、大半の方はご存じのように、日本の総人口はすでにピークを打ち、合計特殊出生率の低下に伴い、減少傾向をたどり始めています。

人口が減少するなかで世帯数が大幅に増加しているのは、それだけ数世代が同じ屋根の下で暮らす大家族が減る一方、核家族や単身者で生活している世帯が増えていることを意味します。

36年間で世帯数はどう変化したのか?

現に、世帯数と世帯人員の状況から、世帯数と構成の推移を見てみましょう。数字は1986年と2022年を比較したもので、カッコ内の数字は構成比です。

<世帯数と構成の推移>

・単独世帯
 682万6000世帯(18.2%)→1785万2000世帯(32.9%)

・夫婦のみの世帯
 540万1000世帯(14.4%)→1333万世帯(24.5%)

・夫婦と未婚の子のみの世帯
 1552万5000世帯(41.4%)→1402万2000世帯(25.8%)

・ひとり親と未婚の子のみの世帯
 190万8000世帯(5.1%)→366万6000世帯(6.8%)

・三世代世帯
 575万7000世帯(15.3%)→208万6000世帯(3.8%)

・その他の世帯
 212万7000世帯(5.7%)→335万3000世帯(6.2%)

出所:「国民生活基礎調査の概況」(2023年7月4日)

実数、構成比が共に上昇したのは「単独世帯」と「夫婦のみの世帯」、「ひとり親と未婚の子のみの世帯」でした。一方、低下したのは「夫婦と未婚の子のみの世帯」と「三世代世帯」でした。「その他の世帯」については、さまざまな世帯類型が含まれると考えられるので、ここでは念のため除外して考えます。

単独世帯が増加した背景

これらの数字を見て最も印象的なのは、やはり「単独世帯」の増加でしょう。1986年から2022年までの36年間で、実数だと2.6倍にもなっています。

また、「夫婦のみの世帯」も、それと同じくらいのペースで増え続けていますが、夫婦のみの世帯とは、結婚しても子供がいない夫婦の世帯だけでなく、同居していた子供が大人になって独立し、その親が夫婦で生活している世帯も含まれます。

後者の場合、いずれは夫婦のどちらかが先立つので、そうなった時は「単独世帯」に移行します。それを考えると、単独世帯の世帯数と構成比は、これからもしばらく増加傾向をたどると思われます。

三世代世帯の減少による懸念点

一方、この36年間で大幅に減少したのが「三世代世帯」です。簡単に言うと、祖父母、両親、その子供がひとつ屋根の下で生活している世帯のことです。

1986年当時の構成比は15.3%で、それこそ「夫婦のみの世帯」よりも高かったのですが、2022年では3.8%まで低下しています。これが意味するところは、「自分の老後は自分で見なければならない」ということです。

三世代世帯では、高齢の親の面倒を、その子供を中心にして家族皆で支えることが可能ですが、夫婦のみの世帯や単独世帯になると、自分の老後を誰かに頼ることができなくなります。

夫婦で生活していれば、そのどちらかが高齢になって身体が不自由になったとしても、いずれか片方がサポートすれば良いとも言えますが、そうなると「老々介護」になり、やはり社会問題化します。

大きく変わらざるを得ない“お金の常識”

このように世帯の形が変わると、これまで当たり前としてきた「お金の常識」も大きく変わらざるを得ません。

資産形成は預貯金のみでは不十分

まず、自分の面倒を自分で見るためには、とりもなおさずお金が必要です。1人で住んでいた高齢者が、いよいよ自分の力だけで自立した生活が困難になれば、高齢者施設への入居を考えなければなりません。その時、頼りになるのは、何はともあれ「お金」です。

とはいえ、成熟期に入った日本経済が再び高度経済成長の軌道を描く可能性は極めて低く、当時のように年功序列賃金と終身雇用制度によって、収入増と雇用が保障されているような環境も期待できません。

高い経済成長率が期待できなければ、インフレの期待値も下がるため、金利水準は上がりにくくなります。預貯金のみの運用だけでは、老後に向けて十分な資産形成がおぼつかなくなるでしょう。

今、政府が「貯蓄から資産形成」を掲げ、新NISA制度や確定拠出年金制度の拡充に乗り出しているのは、このような背景があるからです。

不動産の価値は二極化が進んでいる

さて、もう1つ大きなお金の問題があります。それは「家」の問題です。恐らく今も、「家を持って一人前」という価値観を持った人がいると思います。確かに、高度経済成長期から1980年代のバブル経済にかけては、間違った考え方ではありませんでした。

そもそも賃貸住宅の整備が貧弱だったので、多くの人は「結婚したら家を買う」ことを人生の目標に掲げたのです。しかし、これから先は果たして家を買うことが正しいのかどうか、判断しにくいところです。

昔のように、誰も彼もが収入増の恩恵を受けられる時代ならともかく、これからは賃金の優勝劣敗がはっきり分かれてくるでしょう。収入が増える立場なら、高額の住宅ローンも負担になりませんが、収入が増えないのに住宅ローンの負担が増えると、下手をすると破綻の道をまっしぐらということになりかねません。

そのうえ、子供が結婚して独立すれば、無駄に広い家に老夫婦で住み続けることになります。持ち家を売却して得た資金を元手に高齢者施設に入居するという手もありますが、この場合、問題になるのが不動産の売却価格です。

日本全国どこでも地価が上昇している時ならともかく、今は不動産価格も二極化が進んでいます。東京を中心とする大都市圏は不動産の需要が旺盛なので、不動産価格が高止まりしていますが、地方のように不動産に対する需要が低いところでは、不動産価格の上昇は期待できません。

35年という長期のローンを払い終わる頃には、不動産価格が大きく下落した築古物件になってしまい、高齢者施設に移るのに必要な資金を賄えないかもしれません。不動産が負動産になる恐れがあるのです。

***
 

これまでの日本人は、預貯金と不動産(持ち家)で資産形成するのが一般的でした。しかし、これから先は、そうも言っていられなくなると思います。

預貯金のみの運用では満足に金融資産を増やせず、かといって長期ローンを組んで購入した持ち家の不動産価格が下落してしまったら、老後の生活が窮することにもなりかねません。「預貯金と不動産があれば資産形成は何とかなる」と思っている人は、その考え方を改める方が無難と言えるでしょう。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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