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デジカメ普及で窮地に… 富士フイルム「大規模リストラ」でヘルスケア企業へ転身

Finasee / 2023年7月18日 17時0分

デジカメ普及で窮地に… 富士フイルム「大規模リストラ」でヘルスケア企業へ転身

Finasee(フィナシー)

・ドラッグストアの先駆者「マツキヨ」 投資家に好かれる“高利益率”のワケ

「富士フイルムホールディングス」の株価が反発しています。売上高が大幅に伸び、翌期も増収増益を予想した2023年3月期の決算が好感され、月足は大きな陽線を描きました。2021年9月の上場来高値(1万55円)を更新できるか関心が集まっています

【富士フイルムHDの業績】

※2024年3月期(予想)は、2023年3月期時点における同社の予想

出所:富士フイルムホールディングス 決算短信

【富士フイルムHDの株価(月足、2020年5月~2023年5月)】

 

出所:Investing.comより著者作成

好調な業績が投資家に支持され、JPX総研が算出する「JPXプライム150指数」にも選ばれた富士フイルムですが、実は危機的な状況に陥った時期もありました。富士フイルムはどのようにしてピンチを乗り越えたのでしょうか。

デジカメ普及で市場消失 大苦戦した2000年代

富士フイルムは、大日本セルロイド(現・ダイセル)の写真フィルム事業を承継して1934年に誕生しました。当時は写真産業の拡大期にあり、カメラの普及に伴い富士フイルムは大きく成長します。同社の質の高い製品は引き合いが強く、一時はライバルの米コダックと世界シェアの大部分を握っていました。

しかし2000年頃からデジタルカメラが普及し始め、写真フィルム市場は急速に縮小します。富士フイルムのカラーフィルムも販売が急減し、それらが含まれる「イメージングソリューション」セグメントは2005年3月期から赤字が常態化しました。

【カラーフィルム事業の売上高】
2004年3月期:2039億円
2010年3月期:328億円

出所:富士フイルムホールディングス 決算説明会資料

【イメージングソリューションのセグメント利益(2004~2010年3月期)】

 

出所:富士フイルムホールディングス 決算説明会資料

デジタルカメラによる市場破壊はすさまじく、富士フイルムと激しいシェア争いを繰り広げ、“フィルムの巨人”とも称されたコダックは2012年に破綻しています。富士フイルムも構造改革に伴う費用負担が重く、またリーマンショックに伴う不況もあり、2010年3月期には最終赤字に陥りました。

【富士フイルムの当時の業績(2008~2010年3月期)】

 

出所:富士フイルムホールディングス 有価証券報告書

大規模リストラで世界トップクラスのヘルスケア企業へ変身

デジタルカメラの普及で稼ぎ柱を失った富士フイルムは、軸足を医療領域や高機能材料へ移します。写真やフィルムの企業として培った技術を生かし、医療向けでは画像診断システムなど、高機能材ではディスプレーに用いられるフィルム材などを重点戦略と位置付け、経営資源を集約させました。

思い切った事業転換は奏功し、富士フイルムの業績は回復に向かいます。現在では内視鏡といった医療機器の販売やバイオ医薬品の開発などを請け負う「ヘルスケア」が同社の主力事業となりました。医療用画像情報システム(PACS)や医薬品受託開発事業(CDMO)など、世界トップクラスのシェアを持つ領域も多数生まれています。

【富士フイルムHDの純利益(2011~2023年3月期)】

 

出所:富士フイルムホールディングス 有価証券報告書および決算短信

【セグメント別の業績(2023年3月期)】

 

出所:富士フイルムホールディングス 決算説明会資料

もちろん、この改革は簡単なものではありませんでした。2010年3月期までの5年間でおよそ3900億円もの構造改革費が発生したほか、大規模な人員削減にも踏み切っています。

痛みを伴う改革を断行したからこそ、今日の富士フイルムがあるといえるでしょう。

M&A巧者の富士フイルムが次に投資するのはどこ?

富士フイルムはM&Aに積極的な企業としても知られます。同社が重視するヘルスケアや電子材料の領域で国内外の企業や事業を相次いで買収しており、今日の富士フイルムグループを構成しています。

【富士フイルムの主な買収実績】

 

出所:富士フイルムホールディングス プレスリリース

積極的なM&Aにもかかわらず、株主資本比率は60%を超えており、同社の財務状況に懸念は見られません。これは積み上げてきた巨額の利益剰余金のほか、2023年2月に実施した自己株式の消却が効いていると考えられます。

【株主資本の推移(2018~2023年3月期】

 

出所:富士フイルムホールディングス 決算短信

富士フイルムは2021年に公表した中期経営計画において、2023年度までの3年間で1.2兆円の成長投資を行うと表明しました。うち1兆円をヘルスケアや機能材などの重要領域へ投資するとしており、中期的な視点として医療用機器や半導体材料など、長期的視点ではAIやバイオ医薬品などをテーマに投資するようです。

文/若山卓也(わかやまFPサービス) 

Finasee編集部

金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。

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