親を介護する理由、女性「家族が行うのが当然」 男性はまさかの回答
Finasee / 2023年7月20日 11時0分
Finasee(フィナシー)
●父(82歳)が接触事故で入院、そのとき母(79歳)は…
※前半記事【妻と離婚、高齢両親と同居の52歳営業部長が直面した“過酷すぎる”現実】からの続き
仕事をしながら家族の介護をする人を近年「ビジネスケアラー」と呼びます。介護のために仕事を辞める「介護離職」の防止は重要な政策課題となっていて、厚生労働省のホームページ(※)では労働者向け・事業主向けに、利用できる制度などが紹介されています。
※厚生労働省「仕事と介護の両立 ~介護離職を防ぐために~」
経済産業省の調査研究事業によると、仕事をしながら家族の介護をしているビジネスケアラーは増加しており、2030年には約318万人に上り、経済損失は9.1兆円になると推計されています。介護の心身への負担と、仕事を休むことによる生産性の低下は、個人に対する影響にとどまらず、企業の生産性の低下やコストの増加につながります。介護離職者は約10万人で推移していますが、ビジネスケアラーの数はもっと多く、これからますます企業内での両立支援が重要になるでしょう。
同じ調査研究事業では、ビジネスケアラーにアンケートを取っていますが、男女や職位を問わず、家族の介護を始めてから自分の仕事のパフォーマンスが低下していると感じる人が3割を超えていました。介護離職をした人へのアンケートによると、自身が介護をしていた理由として、女性では「家族の介護は家族が行うのが当然と考えていたから」「他に任せられる人がいなかったから」という回答が多いのに対して、男性では「介護保険サービスの使い方がわからなかったから」という回答が多い傾向がありました。
介護保険制度は40歳以上の国民は加入が義務付けられており、大輔さんも両親も当然保険料を毎月払っていますが、いつどのように使ったらいいのかはこれまで考えたことがなかったようです。
仕事と介護の両立厚生労働省の「仕事と介護の両立 ~介護離職を防ぐために~」というホームページでは、育児・介護休業法に定められた介護休業制度などの周知を図ったり、企業・労働者の課題に基づいて事例集を作成したりするなど、仕事を辞めずに働く方法についてさまざまな情報を提供しています。特設サイトから、労働者向けの介護しながら働き続けるためのポイントを紹介します。
ポイント1:職場に「家族等の介護を行っていること」を伝え、必要に応じて勤務先の「仕事と介護の両立支援制度」を利用する。
ポイント2:介護保険サービスを利用し、自分で「介護をしすぎない」。
ポイント3:介護保険の申請は早めに行い、要介護認定前から調整を開始する。
ポイント4:ケアマネジャーを信頼し、「何でも相談する」。
ポイント5:日頃から「家族や要介護者宅の近所の方々等と良好な関係」を築く。
ポイント6:介護を深刻に捉えすぎずに、「自分の時間を確保」する。
特にポイント4については、突然介護に直面した時に、ケアマネジャーへの相談を行うためのポイント集も用意されています。
ケアマネジャーとは、要介護認定を受けた人がどのようなサービスを受けたらよいかという「ケアプラン」を立てる専門職です。ケアマネジャー(が所属している居宅介護支援事業所)を市区町村がリストにしているので、その中から選ぶこともできますし、「地域包括支援センター」に相談して紹介することもできます。ケアマネジャーには、介護を受ける人の状態や生活を伝えるのはもちろん、家族の生活や介護への考え方を伝えることも重要です。
さらに、介護はいつ始まるかわかりませんから、日頃から基本的な知識は得ておいた方が慌てずに済みます。そのためのポイントは次のようなものが挙げられています。
ポイント1:介護保険制度・介護サービス、両立支援制度の概要を把握しておくこと。
ポイント2:介護に直面した時にどこに相談すればよいか、その窓口を知っておくこと。
また、介護を受ける可能性がある人(親だけでなく、配偶者やその他親族もあり得ます)について、生き方の希望や生活環境や経済状況、周囲の環境や地域とのつながり、健康状態を整理するためのシートも用意されています。この中では兄弟姉妹の状態も整理できる、いざ家族の介護が必要になった時にどのように助け合えるかを想像できるようになっています。また、住んでいる地域の地域包括支援センターについても調べることになっています。
近年では、親や配偶者であってもお互いの情報が得にくくなっていて、例えば銀行口座ひとつとっても、通帳やカードの発行がない場合は、口座を持っていることがわかりません。きっかけは難しいですが、年齢の節目などでお互いに情報を共有したり更新したりすることは大事でしょう。
両立のために次の日の通勤電車で、介護と仕事の両立についていろいろ調べてみると、大輔さんの気持ちも落ち着いてきました。そういえば、同期会で何人かが介護のために休暇を取得した話をしていましたし、会社でも何度か介護保険制度や介護休業についての勉強会があったように記憶しています。これまでは関心がなく勉強会には出ていませんでしたが、人事の担当者に相談して、利用できる制度について聞いてみようと大輔さんは思いました。
●おひとりさま高齢者は必要な医療が受けられない? 詳しくは【妻の死で近所付き合いが断絶 けがで気付いた「このままではまずい…」】(本サイト記事)で紹介します。
沢村 香苗/日本総合研究所 スペシャリスト
東京大学文学部卒業。同大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻博士課程単位取得済み退学。研究機関勤務を経て、2014年に株式会社日本総合研究所に入社。研究・専門分野は高齢者心理学、消費者行動論で、「高齢者の身元保証人、身元保証等高齢者サポート事業に関する調査研究」など実績多数。著書に『自治体・地域で出来る!シニアのデジタル化が拓く豊かな未来』(学陽書房)。
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