株価V字回復! 驚安の殿堂 ドン・キホーテの起源「泥棒市場」の意外な由来
Finasee / 2023年8月1日 17時0分
Finasee(フィナシー)
パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(旧:ドン・キホーテHD)の株価がV字回復しています。大幅な減益だった2022年6月期第1四半期の決算などから売りが集まりますが、通期では増収増益を果たしており、株価もおおむね元の水準まで回復しました。
【パン・パシフィック・インターナショナルHDの業績】
売上高 純利益 2021年6月期 1兆7086.35億円 537.34億円 2022年6月期 1兆8312.80億円 619.28億円 2023年6月期(予想) 1兆9200.00億円 620.00億円※2023年6月期(予想)は同第3四半期時点における同社の予想
出所:パン・パシフィック・インターナショナルHD 決算短信
【パン・パシフィック・インターナショナルHDの株価(月足)】
出所:Investing.comより著者作成パン・パシフィック・インターナショナルは、収益性と市場評価の高さから「JPXプライム150指数」に選ばれています。パン・パシフィック・インターナショナルはどのような企業なのか、歴史と事業内容を押さえましょう。
「泥棒市場」からスタートした総合小売グループパン・パシフィック・インターナショナルは安田隆夫(やすだ・たかお)氏が1978年に29歳で創業しました。当初は主に企業倒産にともなう金融処分品を販売する業態でスタートします。わずか18坪の店舗に付けた名前はなんと「泥棒市場」。由来は「とにかく目立ちたかったから」、また「店名看板のスペースが小さくて、せいぜい四文字しか入らなかったから」というものでした(引用:安田隆夫『安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生』文春新書)。
同社の看板ディスカウントストア「ドン・キホーテ」は、1989年に1号店が誕生します。泥棒市場時代に培った商品を高く積み上げる「圧縮陳列」や手書きのPOPを大量に貼り付ける「POP洪水」など、ユニークな売り場づくりが顧客を呼び大きく成長します。1996年には株式の店頭登録、1998年には上場を果たしました。
その後も成長は止まらず、2007年に長崎屋を買収し総合スーパー(GMS)事業へ進出したほか、2013年に日本アセットマーケティングを子会社化しテナント賃貸業も強化してきました。2019年6月期には初めて売上高が1兆円を突破し、ドン・キホーテ1号店の出店以来33期連続で増収を果たしています(2022年6月期)。
【セグメント業績(2022年6月期)】
売上高 営業利益 ディスカウントストア事業 1兆3274.51億円 722.30億円 総合スーパー事業 4295.98億円 145.79億円 テナント賃貸事業 595.58億円 103.66億円 その他事業 146.73億円 -84.27億円
出所:パン・パシフィック・インターナショナルHD 決算短信
パン・パシフィック・インターナショナルの強みはオリジナル商品にあります。2009年にPB(プライベートブランド)の「情熱価格」の販売を開始し、食品や日用品はもちろん、テレビやソファーに至るまで実にさまざまな商品を開発・販売してきました。
情熱価格は好調で、2022年6月期にはディスカウントストア事業のPB・OEM(委託製造)比率は14.2%を占めるほどになっています。特に同期は化粧品や自転車、玩具の売り上げが順調だったようです。PB商品は一般に他社メーカーが製造するNB(ナショナルブランド)よりも利益が厚く、ディスカウントストア事業の利益率も改善が進みました。
【ディスカウントストア事業の業績(2010年6月期および2022年6月期)】
売上高 営業利益 営業利益率 2010年6月期 4161.83億円 165.43億円 3.97% 2022年6月期 1兆3274.51億円 722.30億円 5.44%
出所:パン・パシフィック・インターナショナルHD 決算短信
パン・パシフィック・インターナショナルは総合スーパー事業でも「スタイルワン」や「プライムワン」といった自社ブランドを展開しています。利益の多くをディスカウントストアで稼ぐ同社ですが、これらの販売が伸びれば総合スーパーも稼ぎ柱に成長するかもしれません。
海外100店舗突破 “驚安の殿堂”は世界に通用するかパン・パシフィック・インターナショナルの海外事業は、2006年2月にダイエーからハワイ3店舗を買収したことで始まりました。積極的なM&Aで海外店舗を増やし、2017年にはシンガポールにオリジナル店舗「DON DON DONKI」を出店しています。現在では海外に100店舗以上の店を超え、2600億円以上の売り上げを得るようになりました(2022年6月期)。
【海外店舗数の推移(2009年6月~2023年6月)】
出所:パン・パシフィック・インターナショナルHD 決算説明資料および公式サイトより著者作成【海外売上高(2010年6月期および2022年6月期)】
出所:パン・パシフィック・インターナショナルHD 決算短信より著者作成パン・パシフィック・インターナショナルは2025年6月期までの中期経営計画で、海外事業の強化をうたっています。特にアジア地域への進出を強めるようで、3年で店舗数の倍増を目指す計画です。
【中期経営計画(~2025年6月期)の目標】
2022年6月期 2025年6月期(計画値) 北米 売上高 1982億円 2340億円 営業利益 104億円 158億円 店舗数 65店舗 78店舗 アジア 売上高 690億円 1360億円 営業利益 17億円 112億円 店舗数 30店舗 64店舗
出所:パン・パシフィック・インターナショナルHD 中長期経営計画
国内で多くのファンを獲得したドンキ流の経営は海外でも受け入れられるのでしょうか。投資家の注目が集まります。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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