ドリキャスで赤字も「スマスロ」で株価2倍に セガサミーの快進撃とM&A手腕
Finasee / 2023年7月28日 17時0分
![ドリキャスで赤字も「スマスロ」で株価2倍に セガサミーの快進撃とM&A手腕](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/finasee/finasee_12336_0-small.jpg)
Finasee(フィナシー)
セガサミーホールディングスの株価が続伸しています。規制緩和で2022年11月に導入が始まった「スマスロ」(※)関連銘柄の一角としても買いが向かい、株価は3年前の2倍以上に上昇しました(2023年6月末時点)。
※スマスロ:スマートスロットの略。物理的なメダルを使用しない遊技機。
【セガサミーホールディングスの業績】
売上高 純利益 2022年3月期 3209.49億円 370.27億円 2023年3月期 3896.35億円 459.38億円 2024年3月期(予想) 4330.00億円 400.00億円※2024年3月期(予想)は、2023年3月期時点における同社の予想
出所:セガサミーホールディングス 決算短信
【セガサミーホールディングスの株価】
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セガサミーは資本収益性の高さから「JPXプライム150指数」に選ばれています。市場の注目を集めるセガサミーとはどのような企業なのでしょうか。同社の歴史と事業内容を紹介します。
「ドリキャス」で巨額損失のセガをサミーが買収セガサミーは、「セガ」と「サミー」の2社が統合して2004年10月に誕生した企業です。セガは主にゲーム機やゲームソフトを、サミーは主にパチンコ・パチスロなどの遊技機を販売していました。
セガはもともとアーケードゲームで成長していた企業でしたが、1983年に家庭用ゲーム機にも参入し、『メガドライブ』や『セガサターン』といった傑作ハードを送り出します。これらは一定のファンを獲得することに成功しますが、この頃から任天堂やソニーといった競合との争いが激しくなり、セガは次第にシェアの維持に苦労するようになります。
そして1998年11月に発売した『ドリームキャスト』が、セガにとって最後のハードとなりました。大規模なプロモーションを展開するも、供給体制の乱れやライバルとの競争から売れ行きに勢いが生まれず、リリースからおよそ半年で値下げに追い込まれます。
そして2001年1月、セガはドリームキャストの生産を終了し家庭用ハード事業からも撤退しました。巨額の開発費や広告宣伝費を回収することができず、セガは存続が危ぶまれるほど大きな最終赤字を計上することとなります。
【当時のセガの業績(1998年3月期~2001年3月期)】
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同じくエンタテインメント業界に属するサミーは、異なる事業フィールドながらシナジーに期待しセガの親会社だったCSK(現・SCSK)からセガ株式を取得しました。その後、持ち株会社として設立したセガサミーホールディングスにぶら下げる格好でセガとサミーを統合します。
ゲーム・アニメ・パチスロの総合エンタメ企業に昇華救済される形で統合されたセガですが、現在はセガサミーの重要な柱となっています。『龍が如く』シリーズや『ペルソナ』シリーズといった人気ゲームが好調なほか、映画化した『ソニック・ザ・ヘッジホック』を中心にライセンス収入も得られるようになりました。
またセガは傘下にアニメ制作会社も抱えており、『名探偵コナン』や『それいけ!アンパンマン』、『ルパン三世』といった多くの人気作品を手掛けています。これらセガの事業が反映されるエンタテインメントコンテンツ事業は営業利益が大幅に改善しており、今やサミーの遊技機事業を超えセガサミー最大の収益源へと成長しました。
【セグメント営業利益の推移】
![](https://finasee.ismcdn.jp/mwimgs/2/f/800m/img_2f8f9a3f38f81aefcae8d60a8d1053f550511.jpg)
なお、エンタメ事業や遊技機事業の陰に隠れていますが、セガサミーはリゾート事業も手掛けています。2012年に宮崎県のリゾート施設「シーガイア」の運営会社を買収したほか、2017年には韓国発のIR(統合型リゾート)として「パラダイスシティ」を開業しました。しかし新型コロナウイルスの影響もあり、単体では赤字に陥っています。
【セグメント業績(2023年3月期)】
売上高 営業利益 エンタテインメントコンテンツ 2828億円 387億円 遊技機 942億円 200億円 リゾート 115億円 -11億円
出所:セガサミーホールディングス 決算説明資料
セガサミーはリゾートを成長事業の1つに位置付けていましたが、近年はトーンダウンが否めません。横浜市が計画していたIRへの参画は同市が誘致を撤回したため頓挫し、国内外のIRへの成長投資は2023年3月期の決算説明会で完全な見送りを表明しました。リゾート事業の収益化は、当面は既存の設備を活用して目指すこととなりそうです。
1000億円の大型買収で目指すグローバル化IRに代わり、セガサミーの投資で注目されているのがロビオの買収です。フィンランドに本社を置くモバイルゲーム企業で、累計50億ダウンロードを突破した『アングリーバード』の開発元として知られています。
セガサミーは2023年4月、ロビオの全株式を公開買付で取得すると表明しました。費用はおよそ1036億円としており、公開買付が成立すればセガサミーにとって過去最大規模の買収になるとみられています。
大型買収の目的は海外向けモバイルゲームの強化です。セガサミーのコンシューマゲーム事業においてモバイルは約4割を占めますが、その海外売上比率は1割ほどしかありません。ロビオは北米を中心に約3億ユーロ(1ユーロ=155円で約465億円)の売上高を持つ企業で、セガサミーは同社を買収することでモバイルゲーム事業の海外売上比率が約45%に上昇すると試算しています。
【ロビオの地域別売上高(2022年)】
・北米:70%
・欧州・中東・アフリカ:19%
・アジア太平洋:11%
・ラテンアメリカ:1%
出所:セガサミーホールディングス 決算説明資料
世界のゲーム市場はモバイルを中心に成長しており、セガサミーはこれを長く取りこぼしてきました。海外で成功するロビオの買収に成功すれば、セガサミーのもう一段の飛躍につながるかもしれません。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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