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投資経験者3分の2が不正解…金利上昇で債券価額は上がるor下がる? 正解は…

Finasee / 2023年7月20日 17時0分

投資経験者3分の2が不正解…金利上昇で債券価額は上がるor下がる? 正解は…

Finasee(フィナシー)

金融関係のニュースで、「消費者物価指数の上昇率が、前年同月比で低下し、債券相場が堅調に推移」という類いの文章を目にすることがあります。この意味が分かりますか?

金融リテラシーをチェック

いささか古い内容で恐縮ですが、金融庁が行っている「リスク性金融商品販売に係る顧客意識調査結果(令和3年6月30日)」という統計データで、金融リテラシーについて問う項目がいくつかあります。

その項目のトップは「金利と債券価格の関係」というもので、「金利が上昇すると、(固定金利の)債券の価格はどうなると思いますか?」という設問です。これに対する回答率は、次の通りでした。

<投資経験者>

・上がる・・・・・・22.7%
・下がる・・・・・・34.1%
・変化しない・・・・12.0%
・債券価格と金利の間には何の関係もない・・・3.8%
・分からない・・・・27.5%
 

<投資未経験者>

・上がる・・・・・・17.7%
・下がる・・・・・・15.0%
・変化しない・・・・11.6%
・債券価格と金利の間には何の関係もない・・・4.4%
・分からない・・・・51.4%

実際の調査では、20代から60代以上まで5つの年齢階層に分かれているのですが、上記の数字はすべて全年齢階層を対象にした場合の数字です。

正解は?

では、「金利が上昇すると、(固定金利の)債券の価格はどうなると思いますか?」という設問の正解は何でしょうか。正解は「下がる」です。

正解者の割合は、投資経験者で34.1%、投資未経験者で15.0%。投資経験者でも金利と債券価格の関係を正しく理解している人は、全体の3分の1程度でしかないのです。

債券のニュースを読み解くための2つの知識

では、冒頭に書いたニュース記事例に話を戻します。経済誌には、このような記事がさらっと書かれています。しかし、金融庁調査の正解率を見ると、たとえ投資経験者であったとしても、3分の1の人はこの記事の意味するところが分からない、ということになります。

特に新聞記事は、決まった紙面の中に膨大な情報量を盛り込む必要があることから、細かく解説するような書き方はしません。ある一定レベルの知識を持っている人が読むことを前提に、記事が書かれています。

つまり、「消費者物価指数の上昇率が、前年同月比で低下し、債券相場が堅調に推移」という記事の意味は、「物価と金利の関係」、「金利と債券価格の関係」を理解していないと分かりません。

①物価と金利の関係

まず、「消費者物価指数の上昇率が、前年同月比で低下」という部分は、インフレの話です。消費者物価指数の前年同月比上昇率が、例えば前月が4%だったのに対し、今月が2.5%になったとしたら、これはインフレの勢いが弱まったことを意味します。

金利は物価上昇率が高まると上昇します。日銀は金利水準や、世の中に流通するお金の量を調整する「金融政策」を通じて、景気や物価に影響を与えます。

景気が悪い時はデフレ懸念が強まるため、金利を下げて消費や投資が活発になるようにします。一方、景気が過熱気味の時はインフレ懸念が強まるため、金利を上げて消費や投資にブレーキをかけます。

つまり記事の例にあるように、消費者物価指数の上昇率が落ち着きを見せた時は、「やがて景気も停滞に向かうから、日銀の金融緩和政策によって金利は低下するだろう」という連想につながります。

②金利と債券価格の関係

上記の「物価と金利」の関係に加え、「金利と債券価格の関係」も理解しておく必要があります。これについては、「金利が上がると債券価格は下がる」、「金利が下がると債券価格は上がる」という不変とも言うべき関係があるので、丸暗記してもらって良いでしょう。

ですが、中には丸暗記では納得できない方もいらっしゃるでしょうから、「金利が下がるとなぜ債券価格は上がるのか」を例に説明したいと思いますが、その前に、そもそも「債券価格」とは何か、というところから説明していきましょう。

債券価格とは?

債券価格は、債券を売買する際に適用される価格です。また、債券には「額面価格」があり、一般的には100円と決められており、この価格が変動することはありません。

額面100円に対して年3%の利率であれば、毎年3円の利子を受け取れます。額面100円の債券を100万円分購入すれば、毎年の利子は3万円になります。

ただ、多くの債券は「債券市場」で自由に売り買いできます。売り買いする際には、「いくらで売るか」、「いくらで買うか」が決められていないと、何もできません。そのため、債券市場で債券を売り買いする際の価格として、「債券価格」が存在します。

債券価格は株価と同様、市場の需給関係によって値動きします。その債券を買いたいという投資家が多ければ、債券価格は値上がりしますし、売りたいという投資家が多ければ、債券価格は値下がりします。

仮に償還まで1年の債券があるとしましょう。額面価格は100円で、利率は3%です。これから金利がさらに下がるという見通しが強まると、利率3%の債券は投資妙味が高まります。金利低下によって、新しく発行される債券の利率は、2.5%、2.0%というように低下する可能性が高まるからです。

例えば、額面100円の債券を、100円25銭の債券価格で買ったとしましょう。債券は1年後の償還日に、あくまでも額面価格で償還金が戻ってきます。つまり、額面価格よりも25銭高い債券価格で購入した場合、この25銭が「償還差損」になります。

3%の利率だと、100円に対して3円の利子を受け取れますが、額面価格よりも25銭高く買っているので、この3円から25銭を差し引いた2円75銭が、実質的な収益になります。つまり、この債券を償還まで保有した時の利回りは2.75%になります。

少しややこしいとは思いますが、3%の利率が2.75%まで下がるのと同時に、債券価格は額面100円から100円25銭に値上がりしたことになります。つまり「金利が下がると債券価格は上がる」のです。

債券に投資するなら最低限理解したいコト

国債や社債など、債券に投資する時は、ここまでに説明した金利と債券価額の関係性をしっかり理解しておく必要があります。

某債券を購入した後、金利が上がるようなことになれば、恐らく購入した債券の価格は下落しているはずなので、償還前に売却すると、売却損を被る恐れが強まります。

金利と債券価格の関係は、恐らく金融機関で働いている人たちにとっては当たり前の話ですが、冒頭の金融庁調査の結果からすると、恐らく金融リテラシーを持ち合わせていない人にとっては、意味不明ということになってしまいます。

これは非常に怖いことです。世にはたくさんの債券型投資信託が存在します。投資初心者だけれども、「債券型投資信託なら、何となく安全性が高そうだから」という理由で投資している人も少なくないでしょう。

しかし、たとえ債券型投資信託であったとしても、金利水準が上昇傾向をたどれば、組入債券の債券価格が下落し、基準価額が値下がりすることも十分にあり得ます。本来なら、その点を理解していないと、債券型投資信託を買うことはできないはずなのです。

複数の資産クラスに分散するにあたって、ポートフォリオに債券、もしくは債券型投資信託を組み入れる方もいらっしゃるでしょう。今後債券、債券型投資信託の購入を検討する場合は、金利と債券価格の関係をしっかり頭に入れておくことをおすすめします。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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