「ケータイ0円」で大もうけ ITバブル崩壊から復活した光通信の華麗なる収益源
Finasee / 2023年7月25日 17時0分
Finasee(フィナシー)
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光通信の株価がV字回復の兆しを見せています。増配を発表した2022年8月から反転し、2021年からの下落分のおおむね半分程度を取り戻しました。2023年5月にはさらなる増配に加えて自社株買いも発表しており、このまま上昇が続くか注目されています。
【光通信の業績】
※2024年3月期(予想)は、2023年3月期時点における同社の予想出所:光通信 決算短信
【光通信の株価(月足、2020年6月~2023年6月)】
出所:Investing.comより著者作成
光通信は、“価値創造が推定されるわが国を代表する企業で構成される指数”をコンセプトに2023年7月から算出される「JPXプライム150指数」の構成銘柄に選ばれています。株式市場では有名な企業ですが、意外に知らない人も多いかもしれません。
光通信とはどのような企業なのでしょうか。同社の知名度を一気に押し上げたITバブル期の事件と現在の収益源について紹介します。
「寝かせ問題」で20営業日連続ストップ安を記録光通信は1988年2月に設立されました。携帯電話端末を無料で配布し、通信キャリアから報奨金を受けるビジネスモデルが潮流をつかみ急拡大します。1997年には売上高が1000億円を突破、1999年9月には東証一部への上場も果たしました。当時はITバブルだったこともあり、同社株式は成長銘柄の一つとして注目され大きく値上がりします。
しかし2000年3月、光通信に「寝かせ(通信回線契約の水増し)」が発覚します。業績は一転して大幅に悪化したことから、株式市場で強く売り込まれました。あまりに売りが殺到したことから取引が成立せず、20営業日連続のストップ安を記録します。
【ITバブル期の株価(日足、1999年10月~2000年5月)】
出所:YAHOO!ファイナンスより著者作成
ITバブルの崩壊を象徴するほどの急落を見せた光通信株式ですが、投資家はこのとき投資すべきだったのかもしれません。その後株価は大きく値上がりしており、配当金も2004年3月期に復配してから20期連続で支払い続けています。特に2012年3月期からは連続増配が続いており、当時に投資していれば値上がりだけでなく配当でも大きな利益を得ることができたでしょう。
【ITバブル崩壊~現在の株価(月足終値、2000年6月~2023年6月)】
出所:Investing.comより著者作成
【年間配当金の推移(2004年3月期~2024年3月期)】
出所:光通信 決算説明資料
シンプル過ぎる公式ページ 光通信はなにで稼ぐ?快走が続く光通信ですが、同社はどうやって収益を得ているのでしょうか。同社の公式ウェブサイトはテキスト中心のシンプルなもので、情報に乏しく投資をためらう人もいるかもしれません。
光通信の報告セグメントは自社商材を扱う「法人サービス事業」と「個人サービス事業」、他社商材を扱う「取次販売事業」の三つで構成されています。売り上げは法人サービス事業が最も大きなシェアを占めますが、営業利益は個人サービス事業が、営業利益率では取次販売事業が最大です。
【セグメント業績(2023年3月期)】
出所:光通信 決算短信
セグメントは商材別に以下のように分類できます。祖業の携帯電話やOA機器の販売のほか、電力や宅配水といった従来とは異なる領域まで手広く展開しています。光通信という社名ですが、事業を俯瞰(ふかん)すれば単なる通信会社とは言えないでしょう。
【主力事業とセグメント】
出所:光通信 決算説明資料
【主な子会社と主要事業】
ハイホー:インターネット回線
ハルエネ:電力
E・PARK(イーパーク):業種別ITソリューション
さくら損害保険:保険
プレミアムウォーターホールディングス:宅配水
テレコムサービス:携帯電話
エフティグループ:OA機器
出所:光通信 主要子会社一覧
電力や宅配水への進出は比較的最近ですが、すでに一定の成果が上がっています。2017年に本格化した電力事業は業界4位のシェアを獲得(2022年12月、みなし小売電気事業者を除く)したほか、2015年に本格参入した宅配水事業では32%ものシェアを獲得(2022年)しています。
このように、光通信はさまざまな業界で主要なプレーヤーとなっており、特定の事業に対する依存は強くありません。分散された事業ポートフォリオは、全体の業績の安定に寄与することが期待されます。
上場企業500社に投資 光通信の投資会社としての顔光通信は株式投資に積極的な企業としても有名です。2023年3月末時点で494社の上場株式に投資しており、その取得額は5326億円にも上りました。時価評価額は7592億円であることから、2266億円もの評価益を得ていることがわかります 。
直近ではシイエム・シイやナラサキ産業、東京日産コンピュータシステムなどへの投資が大量保有報告書※から明らかになっており、報告義務発生日から考えるといずれも1~3割ほど値上がりしています(2023年7月4日終値時点)。
※大量保有報告書:発行済株式の5%超を保有した際に提出が義務付けられている書類
【投資先企業の株価(日足終値、報告義務発生日=100)】
出所:EDINETおよびInvesting.comより著者作成
投資で大きな利益を得る光通信ですが、どのような基準で銘柄を選んでいるのでしょうか。同社によると、投資対象は株価ではなくビジネスを見て選定しているようです。特にキャッシュフローが良好なストック事業を展開している企業、また財務基盤が強固な安定した企業に投資するとしています。
これらに合致するなら流動性の低い銘柄も対象であり、また期間や保有比率にも制限を設けず投資しています。事実、単純な株式投資にとどまらず、連結子会社化に発展した企業も少なくありません。
光通信は近年、上場株式への投資を増やしています。投資戦略が奏功すれば、同社の業績はさらに飛躍するかもしれません。
【上場株式の投資簿価(取得額)の推移】
2021年3月末:3573億円
2022年3月末:4560億円
2023年3月末:5326億円
出所:光通信 決算説明資料
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。
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