新NISAで「不動産投資」の選択肢も! 資産状況にあわせて賢く運用する方法とは?
Finasee / 2023年7月24日 17時0分
Finasee(フィナシー)
ニッセイ基礎研究所レポート(2023年7月号)に、「『新NISA』×『Jリート』で考える資産形成」というコラムが掲載されています。内容は、2024年1月からスタートする新NISAの口座を利用して、J-REITに投資した際の投資効果についての検証です。
J-REITへの投資は新NISA活用が有利分配金利回りを4%、キャピタルリターンを0%、運用収益に対する税率を20%として100万円を20年間運用した場合、「非課税&再投資あり」の元利合計額が219万円、「課税あり&再投資なし」の元利合計金額が164万円になるという計算例を挙げて、新NISAの口座を用いて分配金を再投資運用した場合の有利性を説明しています。
また、2003年3月から2023年3月までの20年間、東証REIT指数を用いて、J-REITで100万円を運用した場合の成果についても計算しています。この場合、「非課税&再投資あり」の元利合計額が420万円、「課税あり&再投資なし」の元利合計金額が264万円になったということです。
J-REITへの投資は分配金の安定性が魅力のひとつですが、実は株式と同様、取引価格の値上がり期待もあるので、それも加味して収益性を計算すると、先に挙げた例のように20年間で大きく元本が増える計算になります。
「非課税&再投資あり」では20年間運用した場合の元利合計額が4倍になる計算ですから、収益性としては決して悪くありません。これなら、資産形成層の運用対象としても、J-REITは十分に魅力的であると考えられます。
再投資の難しさただし、前述の計算例でひとつ注意しなければならないのは、分配金の再投資が可能かどうかという点です。
「非課税&再投資あり」の数字は、決算日に受け取ることのできる分配金を再投資するという前提であると考えられます。この場合、支払われた分配金でもって、同一のJ-REITを買い付けて、それを再運用していくことになります。
それを20年間続けることによって、20年後に100万円が219万円になるという計算ですが、現実問題として、J-REITの再投資運用はそう簡単にはできません。
現状、J-REITの最低投資口数は1口単位となっています。では、1口あたりの投資口価格がいくらになるのかというと、なかには5万円前後の銘柄もありますが、多くのJ-REITは10万円以上です。
最も高い日本ビルファンド投資法人になると、1口の投資口価格は、7月14日時点で59万8000円です。つまり、1回の分配金額が60万円程度にならないと、日本ビルファンド投資法人で再投資効果を得ることはできないのです。
日本ビルファンドの場合、年2回の決算が設けられ、その都度、分配金が支払われます。ちなみに直近2期の分配金額は、42期が1万3476円で、43期が1万1500円でした。つまり年間で合計2万4976円です。
1口あたりの分配金額が年間2万4976円ですから、これではとても1口あたりの投資口価格が59万8000円の日本ビルファンドに再投資することはできません。単純に計算すると、約24口が必要です。24口ということは、1435万2000円を投じなければなりません。資産形成層にとっては、いささか難しい額といえるでしょう。
J-REITへの投資に向いているのは「資産活用層」「新NISA」×「J-REIT」というフォーマットで運用するのであれば、私は資産形成層よりも、資産活用層の人たちにこそ向いているのではないかと考えています。
J-REITは確かに1口から投資できますし、不動産の現物投資に比べれば、はるかに低い金額で、より優良な物件に投資できます。
その意味では、J-REITを活用することによって、ポートフォリオの分散を図ることはできるのですが、資産形成層が長期の資産形成を行うに際して、強い武器になるものと考えられている再投資効果を期待することはできません。
J-REITはどちらかというと、ある程度まとまった資金で投資し、そこから得られる分配金を非課税で受け取るという使い方が、むしろしっくり来ると思うのです。
新NISAの成長投資枠を活用するメリットたとえば成長投資枠を活用して、日本ビルファンド投資法人を買い付けたとしましょう。7月14日時点の投資口価格である59万8000円で購入すると、年間の非課税枠は240万円なので、4口まで投資できます。
かつ成長投資枠のみで投資した場合の非課税枠は総額1200万円ですから、1口あたりの投資口価格が不変だとすると、5年間で合計20口分まで投資できます。
この20口分から得られる分配金を、非課税で受け取ることができます。直近2期の1口あたり分配金合計額は、前述したように2万4976円ですから、20口分だと49万9520円になります。
本来であれば、49万9520円に対して20.315%の税金がかかりますから、10万1477円が税金として差し引かれ、手取りは39万8043円になってしまうところですが、新NISAの成長投資枠を活用して非課税運用すれば、分配金に対して20.315%の税金を取られることなく、49万9520円をまるまる受け取れることになるのです。
この金額を12で割ると4万1626円です。月々の公的年金額に対して、4万1626円がオンされれば、リタイヤメント後の生活も少しは楽になるでしょう。
こうした点で、「新NISA」×「J-REIT」のフォーマットは、むしろ築き上げた資産から生じるインカムゲインを有利に活用する手段としての方が合理的であるように思えるのです。
資産形成層に向いているのは「J-REITファンド」J-REITの場合、ファンドに組み入れられている物件から得られる家賃収入が分配金の原資であり、得られる家賃収入の9割以上を分配金として支払わなければならないというルールが設けられています。つまり、分配金の透明性が高いというメリットがあります。
これに対して投資信託の場合、前決算日から今決算日までの間の運用で得られた収益のうち、どの程度を分配金に回すかの判断が、運用会社に委ねられています。その点、投資信託の場合、投資対象がJ-REITだったとしても、安定的かつ継続的な分配金収入に期待したい資産活用層の投資対象には不向きです。
ただし、分配金を当てにせず、長期的な元本の成長を必要とする資産形成層ならば、J-REITを組み入れて運用するJ-REITファンドを積立購入していくという方法も、まんざらではありません。J-REITファンドなら1口単位での再投資ができますし、何よりも少額資金での積立購入ができるためです。
***つまり、資産活用層には「新NISA(成長投資枠)」×「J-REIT」、資産形成層にとっては、「新NISA(積立購入)」×「J-REITファンド」という組み合わせが合理的であると考えられるのです。
鈴木 雅光/金融ジャーナリスト
有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。
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