コロナショックから復活した東急 成長のカギは渋谷にあり?
Finasee / 2023年8月8日 17時0分
![コロナショックから復活した東急 成長のカギは渋谷にあり?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/finasee/finasee_12341_0-small.jpg)
Finasee(フィナシー)
東急の株価がコロナショックから回復しつつあります。2020年7月にかけて1100円台まで下落し、2021年からおおむね右肩上がりに上昇してきました。陸運業や小売業を営む東急は大打撃を受けたものの、最悪期からは脱しつつあるようです。
【東急の業績】
売上高 純利益 2022年3月期 8791.12億円 87.82億円 2023年3月期 9312.93億円 259.95億円 2024年3月期(予想) 1兆306.00億円 400.00億円※2024年3月期(予想)は、2023年3月期時点における同社の予想
出所:東急 決算短信
【東急の株価(月足、2019年6月~2023年6月)】
![](https://finasee.ismcdn.jp/mwimgs/1/4/800m/img_146845a936bd009fe2cc8e20ad6a152e68120.jpg)
東急は私鉄でトップクラスの規模を持つ企業で、市場評価(PBR基準)から「JPXプライム150指数」にも選ばれています。渋谷の開発実績から身近に感じる人も少なくないでしょう。今回は東急の歴史と、渋谷で進む開発プロジェクトを紹介します。
不動産と百貨店で稼ぐ100年企業東急は1922年、渋沢栄一が設立した田園都市株式会社の鉄道事業を分離する形で誕生しました。当初は目黒蒲田電鉄として目黒線(目黒~丸子)で開業し、1924年に武蔵電気鉄道を買収してからは東横線(渋谷~桜木町)も開通します。両社は1939年に合併し東京横浜電鉄へ、さらに1942年には京浜電気鉄道・小田急電鉄を合併して東京急行電鉄となりました(両社は1948年に分離)。社名を現在の東急に改めたのは2019年のことです。
東急の交通事業は、関東私鉄のなかでもトップクラスの規模を誇ります。売上高に相当する営業収益は1840億円(2022年3月期)に上り、東武鉄道に次いで2番目に位置しています。
【私鉄の交通・運輸セグメント営業収益ランキング(2023年3月期)】
1.東武鉄道:1891.89億円
2.東急:1840.54億円
3.小田急電鉄:1517.04億円
4.京成電鉄:1478.59億円
5.西武HD:1437.07億円
6.京王電鉄:1111.93億円
7.京浜急行電鉄:988.00億円
8.相鉄HD:356.79億円
出所:各社の決算短信
もっとも、東急にとって最大の稼ぎ頭は交通事業ではありません。決算を確認すると、営業収益や営業利益の大半は不動産事業や生活サービス事業(百貨店など)で稼いでいることがわかります。交通事業は、コロナ前までは不動産事業に並ぶ収益源でしたが、まだ完全な回復には至っていないようです。
【東急のセグメント業績】
2020年3月期 2023年3月期 営業収益 営業利益 営業収益 営業利益 交通事業 2136億円 270億円 1840億円 85億円 不動産事業 2101億円 290億円 2204億円 288億円 生活サービス事業 7079億円 134億円 5172億円 110億円 ホテル・リゾート事業 961億円 -14億円 708億円 -41億円
出所:東急 決算説明資料
東急は1990年に「東急アクションプラン21」を発表し、大規模な投資に打って出ます。しかし1997年に北海道拓殖銀行や山一證券が破綻すると強い信用収縮が起こり、大型投資を実施していた東急の業績は悪化し、1999年3月期には約280億円の最終赤字に転落しました。さらにグループ全体で退職給付に約700億円の積立不足が生じたことから、2001年3月期には再び300億円を超える大型の純損失が生じます。
【東急の当時の純利益(1997年3月期~2001年3月期)】
・1997年3月期:308億円
・1998年3月期:22億円
・1999年3月期:-279億円
・2000年3月期:18億円
・2001年3月期:-302億円
出所:東急 決算説明資料
東急はグループ企業および事業の再編を進め、業績は回復に向かいます。土地などの評価損を前倒しして減損処理したことで2004年3月期には再び純損失を計上しますが、翌期からコロナショックに見舞われるまで16期連続で黒字を確保しました。
【東急の純利益の推移(2001年3月期~2023年3月期)】
![](https://finasee.ismcdn.jp/mwimgs/a/e/800m/img_ae9f39a7fcf5fe2ee70ecb831218634b77197.jpg)
東急は創業期から渋谷を重要拠点に位置付けており、戦後は「東急会館(東急百貨店東横店西館)」や「東急文化会館」、2000年代には「渋谷マークシティ」や「セルリアンタワー」、2010年代には「渋谷ヒカリエ」や「渋谷スクランブルスクエア」など、渋谷のランドマークとなる施設を相次いで開発してきました。
しかし現在、渋谷は100年に1度といわれる大規模な再開発が進んでおり、これらの建物は急速に姿を消しつつあります。ドラマ『東京ラブストーリー』の待ち合わせシーンで有名となった映画館・渋谷パンテオンを構える東急文化会館は2003年に閉館となり、渋谷文化の原点ともいえる「東横劇場(東急ホール)」を備えた東急百貨店東横店も2020年に営業を終了しました。
渋谷の再開発にはさまざまな企業が乗り出していますが、そのメインプレーヤーはやはり東急です。2021年には「Greater SHIBUYA 2.0」を策定し、渋谷地区のさらなる開発を公表しました。渋谷がさらに発展すれば、東急の業績にも恩恵がありそうです。
【開発中のプロジェクト】
所在(渋谷区) 竣工・開業
(予定) 渋谷サクラステージ 桜丘町、道玄坂など 2023年11月竣工 フォレストゲート代官山 代官山 2023年10月開業 東急プラザ原宿「ハラカド」 神宮前 2024年春開業 渋谷アクシュ 渋谷 2024年5月竣工 渋谷スクランブルスクエア
(中央棟・西棟) 渋谷 2027年度開業 渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト 道玄坂
(東急百貨店本店跡地) 2027年度竣工
出所:東急 渋谷再開発情報サイトおよびリリース
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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