日銀株ってもうかるの? 誰でも買えるの? いま急騰している理由を解説
Finasee / 2023年7月20日 18時0分
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Finasee(フィナシー)
日本銀行(日銀)の株価が値上がりしている。6月末に2万5,450円だった株価は、7月10日に2万7,000円台に乗せ、7月14日には終値で2万9,300円を付けた。そして、3連休明けの7月18日に高値2万9,800円まで買い進まれている。わずか2週間の間に値上がり率は15%を超えた。日銀株は、これまでも短期間に大幅高を演じてきた。直近では2021年3月に、前月末(2万8,000円)比で2倍強の5万8,000円までの急騰があった。市場の好転時など、節目になるような時期に、日銀の株価は大きく動く傾向がある。今また、日銀が10年にわたって続いた「黒田・異次元金融緩和」からの政策転換を狙っているタイミングでの動きになっている。今回の動きは、どこまで大きな変化になるのだろうか?
そもそも「日銀株」とは?日銀は、日本の中央銀行だ。日本の金融政策を担っている銀行で、みずほ銀行や三井住友銀行などの民間の銀行と違って、収益を追求しない銀行ともいえる。そもそも、日銀は株式会社でもない。日銀法に基づく認可法人という特殊な法人になっているため、株式を発行しているわけでもない。一般に流通している「日銀株」は、実は、「出資証券」という株式に準じる証券だ。一般の個人や外部の金融機関などの機関投資家が株主になっても株主総会に参加して議決権を行使するようなことはできない。日銀法という法律で、日銀の資本金は1億円で、その55%は政府が保有することになっている。出資者に対する配当率の決定には財務大臣の認可が必要なほか、配当率は年100分の5(100円の額面に対し、年5円)を超えることはできないと決まっている。発行済み証券数は100万証券と非常に少ないため、「出資証券」の値動きは一方通行になりやすい。売買単位(1単元)は100口で、現在の株価2万9,700円で1単元の取引金額は297万円になる。
そもそも、利益を追求し、株主に利益を積極的に還元して株価の評価を高めるような必要のない日銀が、株式(出資証券)を上場しているのは、なぜなのだろう。一般的にいわれているのは、「日銀の独立性の象徴」という意味合いだ。日銀は、日本の金利水準を決定するという重要な任務があり、それは、時の政府と緊密な連携のもとで政策決定されているが、その決定は政府の意向を忖度(そんたく)するものではない。日銀法で定める「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」という金融政策の理念を実現するものでなければならない。この独立性を維持するため、政府とは別に、機関投資家や個人からも資金調達をする手段を確保しているということだろう。
日銀の出資証券が東証で取引開始されたのは、1983年11月1日のことだ。JASDAQスタンダード市場で売買されてきたが、東証の市場再編に伴い、2022年4月4日からは、市場区分なしで取引されている。証券コードは8301だ。
急騰した過去が株価を動かす「需給相場」の様相日銀の株価の動きは、その時々に市場環境を反映したものになりやすい。上場後の最高値を付けたのは、バブル期の1988年12月で75万5,000円という記録が残っている。その後は、日本のバブル崩壊にともなって株価も低迷した。1998年8月に株価が10万円程度となり、2003年3月に4万1,000円。そして、2005年の小泉政権下の「郵政相場」で6万円の株価が3カ月間で16万円に急騰する場面があり、リーマンショック前の株価上昇があった2007年にも10万円の株価が半年で17万円を超えるという上昇があった。その後、リーマンショックによる景気低迷で日銀株も下落し、2012年10月には3万1,000円の安値を付けた。そして、「アベノミクス」で2012年12月から急伸し、2013年3月には9万4,000円の高値をつけるという株価3倍増を演じた。しかし、その後は、徐々に株価の下値が切り下がるという長期低迷相場だった。
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さて、現在は株価が2万5,000円の水準を割り込むまでに低迷した後の反発局面になっている。日銀が7月27日~28日に開催する金融政策決定会合で大規模金融緩和策の一部を見直すという見方が強まっている中での株価の動きだ。日本の消費者物価指数は2022年12月に4.0%上昇し、1980年代の第二次オイルショック(1980年6月に8.5%の上昇)以来41年ぶりの高いインフレ率を記録したことになる。もっとも、この高いインフレ率は、今後、輸入インフレの落ち着きなどから徐々に低下していくとみられている。日銀がめざす2%のインフレ率を維持するためには、今後、中小企業も含めた「賃上げ」が広く日本全体におよぶかどうかという点にかかっている。日銀の株価上昇を確実なものにするためには、賃金上昇を伴う穏やかなインフレの定着が必要条件といえる。そのような時代の変化は訪れるだろうか?
ただ、かつての値動きの習性では、株価の動きを裏付けるような材料を評価したというより、その時々の勢いで上値を伸ばすような場面も少なくなかった。そのような「買うから(株価が)上がる」、「(株価が)上がるから買う」といった需給相場が、流通する証券数が少ない「日銀株」の特徴的な動きともいえるだろう。さて今回の相場では、どの値段の高さまで買いの手が続いていくだろうか? 過去の高値と比較すると、大きく値下がりした後の動きだけに、気になるところだ。
文/ 徳永 浩
Finasee編集部
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