53歳男性が会社の「追い出し部屋」からの脱出に成功! 見栄を捨てて見つけた居場所
Finasee / 2023年8月17日 11時0分
Finasee(フィナシー)
私は大手メーカーの勤務先で営業の1部門を率いる立場にありましたが、会社で営業部門の大きな見直しが行われることになり、4月からはリスキニング(学び直し)研修を受講しています。
●会社が用意した学び直し研修室は、実質「追い出し部屋」の状態だった。
※前編【会社に「学び直し」を要求された営業職男性…迫られた“究極の選択”】からの続き
会社は「50代、60代で新しいキャリアを構築していただくための学び直し」と耳障りのいいことを言いますが、実際に行われている内容は会社が進めるDX(デジタルトランスフォーメーション)のコア人材の育成。
入社以来30年以上、現場で切った張ったの営業をしてきたわれわれに今からDXをやれと言うのは、どう考えても無理筋の話です。
来年度からは給与体系が固定報酬型から成功報酬型に切り替えられて大幅減収となることも決まっており、私も含めた営業の幹部の多くは転職や独立を考え始めていました。
しかし、いざ次を探すに当たり、自分のキャリアに対する市場ニーズなどないに等しいということを痛感しました。
最近、転職サイトをよく見るようになったのですが、その中で面接官から「あなたのキャリアの強みは何か」と聞かれた面接者が「部長です」と答えたという笑い話が掲載されていました。まさにそれこそが私なのです。ひとごととは思えず全く笑えません。
妻が自宅近くの商店街で海外雑貨のショップを兼ねた小さな喫茶店を営んでおり、いざとなったらそこでバリスタでもやらせてほしいと冗談交じりに話したら、妻から断固拒否されました。
とはいえ、金がかかった上の息子は研修医となり独立した一方、下の息子は高校生でこれからが教育費のピークです。住宅ローンもたっぷり残っていて、このまま早期リタイアというわけにはいきません。
これまで営業という業務上、人脈作りが重要と、プライベートでも仕事仲間とゴルフや旅行に出かけたり、ホームパーティーを開いてもてなしたりしてきたため、収入の割には貯蓄が少ないのもネックです。
このままDX部門に行かされて低待遇と低収入に甘んじるしかないのかと絶望的な気分になっていた時、妻が紹介してくれたのが、妻の店のお得意さんであるファイナンシャルプランナー(FP)で社会保険労務士の桐谷さんでした。
中小企業とつながりが強いFPに相談上の息子と大して変わらない年齢の桐谷さんに対して最初は懐疑的でした。ですが、桐谷さんのウェブサイトをのぞいて、中小企業の労務管理を「そこまでやらなくてもいいだろう」と思うくらい熱心にサポートし、個人の相談者からは絶大な信頼を寄せられている様子に好感を持ち、一度会ってみることにしたのです。それが1カ月ほど前のことでした。
桐谷さんは非常に礼儀正しい好青年で、「これなら中小企業の社長の受けもいいだろうな」と思いました。半面、なかなか油断ならない人物であることも分かりました。私が事前に送った経歴書を見ながら、現状について極めて的確な質問を繰り出してきたからです。
ただ、私が自虐的に「私のような人間を必要とする会社はないんです」と話した時には、「それは違うと思います」と真っ向から反論してきました。そして、桐谷さんのクライアントである中小企業各社が置かれている現状と、それらの会社が人材の確保にいかに苦心しているかという内情を切々と語り始めたのです。
上から目線と思われても仕方がないのですが、正直、最初は地元の中小企業には全く関心がありませんでした。転職先を探す際も「大手メーカーで働いてきた自分にふさわしい会社を選ぼう」という観念が頭を離れず、無意識にえり好みをしていたようです。
しかし、桐谷さんの話を聞いて心が動き、思わず「私にお手伝いさせていただけないでしょうか?」と口にしてしまったのです。そこからは、とんとん拍子で話が進みました。
見つけた居場所は小さな商社の営業部私は、100年続く地元の小さな商社の営業部長を務めることになりました。同じ営業部長の肩書でも、従業員数は前の会社の100分の1、給料は3割近く減ってしまいます。
とはいえ、今の会社にいても来年度からは減収を免れないわけですし、商社の5代目の若社長からは「沢崎さんさえ良ければ、働ける限りは働いてほしい」と言われています。この急展開には、桐谷さんを紹介した妻も仰天したようです。
「あなたは結局、今の会社にしがみついていると思った」と本音をこぼされ、妻にさえそんなふうに思われていたのかと少々気落ちしました。
それからは久しぶりに密度の濃い1カ月を過ごしました。会社にはすぐに退職の意思を伝え、手続きに入りました。追い出し部屋からの脱出はどうやら私が第1号だったようで、同僚たちからは驚きと羨望の入り交じった視線を向けられました。
ザルな家計を見直し、将来への不安も解消転職先の社長や役員と打ち合わせが立て込む中、桐谷さんからは家計の早期リセットも迫られていました。先日、妻と桐谷さんの事務所を訪れたところ、非常にドラスティックで、しかも子細に渡る家計の見直しプランを提示してきたので驚きました。
そこには、現在は夫婦別々の家計を統一すること、妻は事業と個人の財布をきっちり分けること、私はこの半年ほどほとんど乗っていないマイカーを手放し駐車場も解約すること、そして月額で小遣いの予算を立ててゴルフや飲み代はそこから工面すること……などが事細かに記されていました。桐谷さんから指摘されて、改めてわが家の家計がいかにザルだったかを思い知らされました。
さらに、今の会社からの退職金は一時金で受け取れば退職所得控除でほぼ非課税になるので、一部を住宅ローンの繰り上げ返済に充てて後の返済を楽にし、一部は投資を勧められました。
「ちょうど来年からはNISA(少額投資非課税制度)の制度が刷新され、生涯投資枠1800万円(つみたてNISAと成長投資枠の合計)までは利益や配当から税金を取られずに運用できます。成長投資枠の方は一般的な株式に加え、今人気の米国ETF(上場投資信託)なども対象になりますから、老後を見据えて、今後は『お金に働いてもらう』ことも考えていきましょう」
桐谷さんの指摘はまさに一事が万事“目からウロコ”で、こうした世界やこうした考え方もあるのだなと夫婦で腹落ちした次第です。わが家にとっては、これこそ真の意味での「リスキニング」です。
つい1カ月前まで真っ暗なトンネルの中にいるようだった私を日の当たる場所に引っ張り出してくれた桐谷さんには本当に感謝に堪えません。これからも公私共にお世話になります!
※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。
Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。
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