35歳投資初心者の悩み 「定年までに2000万円」はどう達成する?
Finasee / 2023年8月10日 18時0分
Finasee(フィナシー)
相談者のプロフィール
【望月さん(仮名)プロフィール】
・年齢:35歳
・性別:男性
・職業:会社員(小売業)
・家族構成:妻(専業主婦)と子(1歳)の3人暮らし
・住居形態:賃貸
【世帯の家計状況】
・月の収入:25万円
・月の支出:23万円
・賞与:50万円(昨年の実績)
・金融資産:200万円
【お悩み】
定年までに2000万円貯めたいが、投資経験がなく、どのような方法がよいのかわからない。
望月さん
「2000万円問題が話題になりましたよね。あれがきっかけで資産運用に興味が出ました。しかし投資未経験で方法がよくわからず、また子どもが生まれたので教育費の準備を優先したこともあり、老後資金は手つかずで気になっています。とりあえず定年までに2000万円を貯めたいと思うのですが、どのような方法があるでしょうか」
アドバイザー
「老後資金を貯めるなら同時に節税も見込める「iDeCo(イデコ)」がおすすめです。途中解約も視野に入れたいなら「NISA(ニーサ)」が選択肢となるでしょう。いずれも主要なネット証券で始めることができます」
望月さんはいわゆる「2000万円問題」がきっかけで投資を検討し始めたようです。しかしやり方がわからず、これまで手を付けずにいました。
アドバイザーが勧めるiDeCoやNISAとはどのような制度なのでしょうか。また老後資金として2000万円を貯めるにはどのような条件をクリアする必要があるのでしょうか。概要を押さえましょう。
iDeCoとNISAの違いiDeCoとNISAはどちらも非課税で運用できる優遇制度です。金融商品の多くは利益に2割の税率がかけられますが、これらの制度を通して購入すると税金はかかりません。
大きな違いは節税効果の有無です。iDeCoには給与などの所得税と住民税を減らす効果がありますが、NISAにはありません。一方、iDeCoは原則として60歳まで解約できませんが、NISAはいつでも可能です。
【iDeCoとNISAの主な違い】
iDeCo NISA 積立額の控除 あり(全額) なし 途中解約 原則不可 可能 投資できる主な商品 投資信託、定期預金 株式、投資信託
iDeCoの節税をもう少し詳しく見てみましょう。税金は所得に税率をかけて計算しますが、所得からはiDeCoに積み立てた金額を差し引くことができます。例えばiDeCoに年間20万円積み立てると、所得が20万円分小さくなります。つまり、「iDeCoの年間積立額×税率」分だけ税金が小さくなる効果が期待できるのです。
2000万円到達に必要な利回りは?望月さんは「定年までに2000万円」という目標を掲げました。高年齢者雇用安定法により、原則として定年は65歳以上となっています。望月さんは現在35歳ですから、リタイアまで30年間の猶予があると考えられるでしょう。
30年間で2000万円を貯めるには年間66.7万円の積み立てが必要です。望月さんの家計収支は年間74万円の黒字(月2万円の黒字×12ヵ月+賞与50万円)ですから、余裕資金のほとんどをつぎ込むこととなります。賞与の変動も考慮すると、少し厳しい条件といえるでしょう。
しかしリスクを取ってある程度のリターンが期待できるなら、積立額はもう少し小さくて済みます。例えば利回りが4%なら、毎月3万円を積み立てれば30年間で2000万円に到達します。
【利回り4%の商品に毎年36万円ずつ積み立てた場合】
投資額 評価額 利益 10年目 360万円 432万円 +72万円 20年目 720万円 1072万円 +352万円 30年目 1080万円 2019万円 +939万円利回り4%を目指せる商品とおすすめの金融機関
4%の利回りを目指す場合、運用資産には株式を組み入れることとなるでしょう。年金積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が分析したところ、各資産の期待リターンは以下のようになりました。債券のみで運用すると利回りが足りず、積立不足が懸念されます。
【GPIFが設定する各資産の期待リターン】
・国内債券:0.7%
・外国債券:2.6%
・国内株式:5.6%
・外国株式:7.2%
出所:GPIF 基本ポートフォリオの変更について
ちなみにGPIFは上記資産を原則25%ずつ組み入れて運用しており、全体で4%のリターンが期待できるとしています。過去34年間(1985年4月~2019年3月)のデータでシミュレートした結果、平均利回り(中央値)は保有期間1年で5.9%、10年で5.6%だったことから、確かに4%の利回りが期待できるといえそうです。
【GPIF基本ポートフォリオの平均利回り(シミュレーション)】
1年単位 10年単位(年率) 最大値 31.3% 7.8% 中央値 5.9% 5.6% 最小値 -21.1% 1.3%
※GPIF基本ポートフォリオは国内外の債券、国内外の株式を25%ずつ組み入れるもの
※1985年4月~2019年3月のデータで分析したもので、GPIFの実績利回りではない
出所:GPIF 基本ポートフォリオの変更について
NISAとiDeCoで株式に投資するなら、株式で運用される投資信託が主な選択肢となるでしょう。これらの制度は専用の口座を金融機関に開設して始められます。金融機関によってコストや商品ラインナップが異なるため注意しましょう。
おすすめはネット証券です。店舗を持たないインターネット専業の証券会社のことで、取扱商品が多くコストが低い特徴があります。特にSBI証券や楽天証券といった主要なネット証券でその傾向があります。
ただしネット証券は実店舗や営業員がいないため、専門家に相談することができません。投資に関する情報も基本的に自分で集める必要があります。投資の際はリスクや手数料などを十分チェックし、納得のうえ行いましょう。
執筆/若山卓也(フィナシー/Ma-Do 投資信託研究会)
Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。
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