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ある意味、利回り10%を享受している⁉ iDeCoが最強の老後対策と言えるワケ

Finasee / 2023年8月16日 11時0分

ある意味、利回り10%を享受している⁉ iDeCoが最強の老後対策と言えるワケ

Finasee(フィナシー)

定年まで約10年――いよいよ“リタイア”も見えてきたけれど、この先の仕事、お金の準備は十分だろうか? そんな不安を抱える50代は少なくないようです。

話題の書籍『お金の壁の乗り越え方 50歳から人生を大逆転させる』では、そんな不安に寄り添うべく、米国公認会計士の午堂登紀雄氏が、今こそ知っておくべき“人生後半をごきげんに過ごすお金との関わり方”について分かりやすく解説しています。今回は本書第1章『人生100年時代に備えよう』、第4章『投資と上手につき合って「壁」を越える』の一部を特別に公開します。(全3回)

●第2回:なぜローンでベンツを買う? お金持ちが実践している“そろばんのはじき方”

※本稿は、午堂登紀雄著『お金の壁の乗り越え方 50歳から人生を大逆転させる』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

iDeCoは最強の老後対策のひとつ

歳を迎えて「NINJA」になる人が急増するといわれています。ここでいうNINJAとは「忍者」のことではなく、「No Income,No Job or Asset」、つまり収入も仕事も資産もないことを意味します。

年金支給開始年齢も70歳への引き上げ説が出ているなど、無策のままで老後に突入すると、かなりしんどい状況になりかねません。

その対策の中でも有力な方法のひとつが日本版401kともいわれる「確定拠出年金」です。「確定拠出年金」は「DC(=Defined Contribution pension plan)」という略称で呼ばれています。本記事でも以下DCとします。

次に、DCには「個人型確定拠出年金=個人型DC」と「企業型確定拠出年金=企業型DC」の2種類があります。

「iDeCo(イデコ)」という呼称を耳にする機会が増えましたが、これは2016年秋、厚生労働省が公募して決めた個人型DCの愛称です(individual-type Defined Contribution pension planだそうです)。

「企業型DC」は制度の導入を決めるのが「企業」ですので、ここでは主に個人が自由に加入できる個人型DC、つまりiDeCoを念頭に解説します。

景気や能力とは関係なくメリットを享受できる

DCは、会社員も自営業者も経営者も、加入条件を満たすあらゆる働き方をする人が等しくトクをする制度です(非課税世帯を除く)。

DCは、収入の低い人でも年利15%、平均的な年収500万円~800万円の人なら年利20%、年収1000万円を超えるような人なら年利33%もの高利回り商品となり得ます(独身者の場合。家族構成や所得によって異なります)。

ゼロ金利時代の現在、資産運用で年利10%という数字を上げ続けるのは至難の業ですが、それがDCを活用すれば、本人の努力や才能とはまったく関係なく、15%や30%といった年利を稼げるのです。

でも、本当にそんな夢のような話があるのでしょうか。実は――この利回りは、「減税効果」によるものです。

DCの掛け金は“全額所得控除される”ため、所得税と住民税が安くなります(会社員の場合は年末調整による所得税の還付、住民税減税による毎月の手取り額アップとなります)。

「増やす」というより「(税金という)支出を減らす」ことで、実質的な経済的メリットを得られるわけです。

この減税効果は加入期間中ずっと続きますから、今30歳の人であれば、DCの年金を受け取れる60歳まで30年間もこの恩恵を得られます。これは景気に左右されることもありませんから、株価や為替とはほぼ無関係に、長期間メリットを享受できる制度なのです。

さらに、加入期間中に得られた運用益(金融商品の売却益、分配金、利息など)も全額非課税で、投資信託にかかる手数料も一般の証券口座で買うよりもずっと安い。60歳を迎えてDCの年金を受け取るときは、一括で受け取る「一時金方式」か、毎年少しずつ受け取る「年金方式」、あるいはその併用から選べますが、一時金方式なら「退職所得控除」、年金方式なら「公的年金等控除」の適用を受けることができます。

これは、民間の保険の満期返戻金が一時所得や雑所得扱いとなり、総合課税となるのと比べても非常に優遇されています。このように目を皿のようにして「DCをやらない理由」を探しても、私には見つからないのです。

何と言ってもこれを、国家が「合法的な制度」として用意しているわけですから、フル活用しない手はないと思います。

弱点をあえて挙げるとすれば

では、弱点はないのでしょうか?

DCは金融商品を自分で選んで自分で運用する制度なので、うまくやれば資産の増加が期待できます。その反面、相場の変動によって元本が減る可能性もあります。

それが不安な場合、定期預金や貯蓄型の保険商品を使えば、途中解約しない限り基本的に元本が減ることはありません。ただし、インフレ時には実質的に目減りすることになります。

とはいえ、仮に運用で利益が出なくても、インフレで若干目減りしたとしても、節税分だけは確実にメリットが得られます。DCはいったん始めたら60歳までは引き出せない制度なので、「使いたいときに使えない」という点を指摘する人もいます。

でも、逆に「老後資金を強制的に貯められる」と考えれば、むしろ長所とも言えるでしょう。

DCと通常の年金との違い

DC制度を単純化して言うと、「加入者が毎月掛け金を払って、定期預金や保険、投資信託などで運用し、60歳以降に年金として受け取る制度」です。

言い換えると、「自己責任で運用することを引き受ける代わりに、国が税制の面で優遇してくれる年金制度」でしょうか。これは、サラリーマンが加入している厚生年金、自営業者が加入している国民年金とはまったく別の年金制度です。

もうひとつ通常の年金と大きく異なるのは、年金が「賦課方式(ふかほうしき)」※1であるのに対し、DCは「積立方式」である点です。
※1 現役世代から広く保険料を徴収し、受給者にそのままスライドして分配する。

賦課方式の年金は、「将来いくらもらえそうか」というシミュレーションはできても、徴収された年金保険料は全員の分がごちゃまぜにされるため、自分が預けたお金がいったいいくらになっているのかはわかりません。逆にこれが不公平感のもとにもなっています。

一方、積立方式のDCは、自分がもらう年金は自分で積み立てるもので、「自分で積み立てたお金はすべて自分で受け取る」年金制度です。さらに、「見える化」と「持ち運び」も可能です。

積立をしている金融機関の専用ウェブサイトにログインすれば、自分のお金が今いくらになっているかがすぐにわかります。転職・離職する場合でも、自分のDCを持ち運ぶことができます。

DCでは、払い込みの窓口となる民間の金融機関(銀行や証券会社など)を自分で決め、そこが用意している金融商品の中から自ら運用する銘柄を選びます。商品の種類は、大きく「元本確保型」のものと、「元本変動型」のものに分けられます。

前者には定期積立預金や確定給付型の生命保険が、後者には株式や投資信託があります。加入期間は「最低10年」で、「10年以上加入すれば60歳から受け取り」ができます。

仮に52歳で加入した場合、受け取りは62歳からと後ろにずれる形になります。このように、自分で積み立て、運用方法も自分で選ぶ。何から何まで自己責任の年金です。

DCの加入条件と掛け金

先に説明したように、DCには大きく分けて「企業型DC」と「個人型DC=iDeCo」の2種類があります。企業型DCの場合、会社が制度を導入し、社員のために掛け金を拠出します。会社が負担する金額に加えて、個人が追加で拠出できる「マッチング拠出」も可能です。

個人型DCの場合は、各人が自分で掛け金の金額を決め、自分のお金で積み立てていきます。

毎月の掛け金は最低5000円からで、1000円単位で指定できます。途中で金額の変更も可能で、届け出をすれば年1回変更が可能です。家計が苦しいときは、会社や金融機関に届け出をして一時的にストップすることもできます(その間は退職所得控除の加入期間にカウントされません)。

拠出できる掛け金の金額は、会社員か自営業か、あるいは会社の制度の有無によって上限が決まっています。自営業者の場合は個人型DCで、掛け金は国民年金基金と合わせて月6万8000円までです。たとえば国民年金基金に毎月2万円払っていれば、確定拠出年金の掛け金は月4万8000円までということになります。

2017年からは専業主婦(夫)も対象となり、月額2万3000円まで。公務員は月額1万2000円まで。会社員の場合、会社が採用している企業年金制度によって変わるため、勤務先の人事部、総務部などに聞いてみましょう。勤務先に企業年金がない会社員の場合、掛け金の上限額は2万3000円となっています。

掛け金は、通常の年金などと同じく「全額所得控除」ですから、民間の保険と同様に、会社員なら年末調整(会社に控除証明書を提出)、自営業者なら控除証明書を添付して確定申告をします。

では、実際にどのくらいのトクになるか

多くの人に当てはまる月額2万3000円の掛け金にした場合。家族構成などによっても変わりますが、一般的な所得税率10%の人の場合、年間の掛け金27万6000円が全額所得控除され、その10%分となる2万7600円の減税効果になります(所得税は年末調整で還付 、もしくは給与天引きで給与支払い時に控除されます)。

住民税は10%ですが、控除で所得が減るため、これも減税となり、翌年の給与からは住民税の天引きが少なくなります。

つまり、その分手取りが増えるので、拠出した金額に対し、単純計算で利回り20%になるというわけです(住民税の計算は実際にはもう少し複雑なので、厳密にはこのとおりではありません)。

もっと収入の多い、たとえば所得税率20%の人なら住民税10%と合わせて30%の利回りになり、これが加入期間中は毎年続くわけです。

民間の保険会社が販売している個人年金保険や満期返戻型(貯蓄型)の生命保険は、所得控除額に上限があるため、減税効果も限られます。しかし、DCは掛け金全額が控除されるため、減税による利回りアップ効果が格段に高いのです。

受け取るときも手取りが増える

国民年金や厚生年金、個人年金などを受け取る場合、その収入は「雑所得」として、ほかの所得と合算して総合課税の対象となります。所得税は累進税率が適用されますから、年金を受け取ると所得が増え、税率も高くなって税負担が増えます。その分、住民税も高くなります。

DCも年金形式で受け取る場合はこれと同じですが、前述のとおり一括で受け取ることも選べます。この場合は雑所得ではなく退職所得扱いとなり、「退職所得控除」が使えます。

退職所得控除額の計算式は、次のとおりです。

【加入年数20年以下】
40万円×加入年数
【加入年数20年超】
800万円+70万円×(加入年数-20)

たとえば15年加入した人は600万円まで非課税、30年加入した人は1500万円まで非課税となり、受け取ったDC年金に税金はかかりません。20年超加入すれば控除額も大きくなるため、若いうちからDCを始めれば、それだけメリットも大きくなるということです。

もし受け取る金額が退職所得控除額を超えても、課税金額は超過額の2分の1となるので、やはりおトクです(ただし現時点では復興特別所得税0.21%がプラスされます)。

なので、一時金として受け取るか年金形式で受け取るか、全体でどちらの税額が少なくなるかを比べて選ぶこともできます。

『お金の壁の乗り越え方 50歳から人生を大逆転させる』

午堂登紀雄 著
発行所 かんき出版
定価 1,650円(税込)

午堂 登紀雄/米国公認会計士

中央大学経済学部卒業後、会計事務所、コンビニエンスストアチェーンを経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。IT・情報通信・流通業などの経営戦略立案および企業変革プロジェクトに従事。本業のかたわら不動産投資を開始、独立後にプレミアム・インベストメント&パートナーズ、エデュビジョンを設立し、不動産投資コンサルティング事業、ビジネスマッチング事業、教育事業などを手掛ける。現在は起業家、個人投資家、ビジネス書作家、講演家として活動している。『33歳で資産3億円をつくった私の方法』(三笠書房)、『決定版 年収1億を稼ぐ人、年収300万で終わる人』(Gakken)、『「いい人」をやめれば人生はうまくいく」(日本実業出版社)、『お金の才能』(かんき出版)など著書多数。

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