3年で株価3倍!ディスコの好調を支える世界トップシェアの製品とは
Finasee / 2023年8月18日 17時0分
Finasee(フィナシー)
ディスコが株式市場で注目を集めています。25%以上の最終増益となった2023年3月期の決算が発表されたことをきっかけに上昇傾向を強め、株価は3年前の3倍以上に急騰しました。
【ディスコの業績】
売上高 純利益 2022年3月期 2537.81億円 662.06億円 2023年3月期 2841.35億円 828.91億円 2024年3月期(予想) 非開示 非開示※2024年3月期(予想)は、同第1四半期時点の同社の予想(第2四半期までの予想は売上高1193億円、純利益287億円)
出所:ディスコ 決算短信
【ディスコの株価】
出所:Investing.comより著者作成ディスコは収益性、市場評価制の両面から「JPXプライム150指数」に選ばれる大企業です。足元の株価も好調なことから、今後も話題に上ることが多いでしょう。
今回は世界トップクラスのシェアを握る精密加工装置メーカー、ディスコを紹介します。
「切る・削る・磨く」で世界トップシェアの機械メーカーディスコ1937年、第一製砥所として広島県に誕生しました。現在の社名は、当時の英社名(Dai-Ichi Seitosho CO., Ltd.)の頭文字を取り「DISCO」としたことが由来となっています。
ディスコは、もともとは工業用砥石を手掛けていました。機械メーカーへの転身は、半導体分野への進出がきっかけです。同社はシリコン半導体の加工用砥石の製造に乗り出しますが、砥石を搭載する機械は別のメーカーが手掛けていました。しかし性能を十分に生かす切断装置がなかったことから自社で開発に乗り出します。
そして1975年、ダイシングソー(シリコンウェハの切断装置)の「DAD-2H」が完成します。これが当時シリコンバレーで開かれた展覧会で大きな話題を呼び、世界中の半導体メーカーから受注を獲得するきっかけとなりました。
今ではディスコは半導体の精密加工装置、すなわち「切る・削る・磨く」加工を行う機械のトップメーカーとして君臨しています。そのシェアは非常に高く、ダイシングソーは7~8割、シリコンウェハの研削や研磨用の機械では6~7割を占めています。半導体デバイスの製造において、もはやディスコの存在なしで考えることができません。
経営成績も抜群です。半導体は比較的浮き沈みの激しい業界ですが、ディスコの売上高はおおむね右肩上がりに増加しており、営業利益率は4割に迫ります。財務も健全で、自己資本比率は7~8割で推移してきました。
【売上高・営業利益率の推移(2011年3月期~2023年3月期)】
出所:ディスコ 決算短信補足情報より著者作成【現預金・自己資本比率の推移(2011年3月期~2023年3月期)】
出所:ディスコ 決算短信補足情報より著者作成ディスコも巻き込まれた?業界の「シリコンサイクル」とはディスコが大きく成長したのは、半導体市場そのものが拡大したことも理由にあるでしょう。特にコロナから経済が正常化に向かった2021年・2022年は大きく成長しました。ディスコも3期連続で最高益を更新しています(2023年3月期)。
【世界の半導体市場規模】
・2020年:3兆8934億円
・2021年:4兆8038億円
・2022年:6兆3264億円
・2023年:6兆4494億円
・2024年:6兆9537億円
※2023年以降は見通し
出所:電子情報技術産業協会 世界半導体市場統計
ただし、半導体市場は一貫して拡大したわけではありません。成長率はこれまで上下に大きなばらつきが生じてきました。近年では、ITバブルの崩壊があった2001年やリーマンショックの影響があった2009年に20%以上の下落を記録しています。
【世界半導体市場の成長率(円ベース)】
出所:電子情報技術産業協会 世界半導体市場統計より著者作成半導体市場は4年周期で好況と不況を繰り返す「シリコンサイクル」があると言われています。2010年以降に強く成長したディスコにおいても、1992年には6億円の経常損失を計上するなど、サイクルの谷を味わいました(出所:ディスコ DISCO Story)。
ただし、ディスコによれば数年周期のシリコンサイクルは近年見られなくなっているようです。電子機器のモデルチェンジの周期が短くなったことが要因の1つとしています(出所:ディスコ新卒・キャリア採用サイト 半導体業界の紹介)。
ディスコで流通する社内通貨「ウィル」とはディスコの強みとしては、社員の生産性の高さも見逃せません。従業員は3093人、経常利益は1067億円(単体、2023年3月期)ですから、単純に従業員1人で3400万円以上を稼ぐ計算です。
なぜディスコの社員はこれほどの収益力を持つのでしょうか。その理由は、社内通貨「ウィル」を用いた「個人ウィル会計」という制度にあるのかもしれません。
個人ウィル会計では、業務を遂行するなどして会社に貢献した社員にはウィルが付与されます。反対に自分への人件費や他社員へ業務の依頼など、会社のリソースを利用するほどウィルが減ります。この仕組みを通じ、社員一人一人の収支がウィルで可視化されることとなります。ウィルは賞与にも反映されることから、社員に採算を意識した働き方を促す効果が期待できるでしょう。
貯まったウィルは経費の決済に用いるほか、「社内オークション制度」を通じて他社員に業務を依頼することも可能です。さらに「社内クラウドファンディング」で一定以上のウィルを募ることで新規事業の開発に乗り出すこともできます。つまり、ウィルを介することで社員は個人事業主のように広い裁量を持って働くことが可能となるのです。
これらの仕組みは従業員のモチベーション向上に期待できます。ディスコの社員がよく働くのは、ユニークな社内制度と無縁ではないでしょう。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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