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連続最高益のダイキン 熱波とエネルギー危機でさらなる需要見込み

Finasee / 2023年8月22日 17時0分

連続最高益のダイキン 熱波とエネルギー危機でさらなる需要見込み

Finasee(フィナシー)

エアコン大手のダイキン工業が好調です。2023年3月期までに2期連続で最高益を更新し、翌期も増益の予想を発表しました。株価もこれに応え、大きく値上がりしています。

【ダイキン工業の業績】

  売上高 純利益  2022年3月期 3兆1091.06億円 2177.09億円  2023年3月期 3兆9815.78億円 2577.54億円  2024年3月期(予想)    4兆1000.00億円   2640.00億円

※2024年3月期(予想)は、2023年3月期時点における同社の予想

出所:ダイキン工業 決算短信

【ダイキン工業の株価(月足、2020年7月~2023年7月)】

出所:Investing.comより著者作成

ダイキン工業は株式市場の評価が高く、「JPXプライム150指数」にも市場評価基準に基づいて採用されています。今回はダイキン工業に焦点を当ててみましょう。

世界170カ国で展開するグローバルトップ企業

ダイキン工業は1924年に創業されました。戦前は主に飛行機用の部品や潜水艦用の冷凍機を手掛けます。社名は創業時の屋号である大阪金属工業所の「大阪(ダイ)」と「金属(キン)」が由来となり、1963年に改称されました。

空調事業の基礎が固まったのは1951年のことです。空調設備は従来、稼働に高度な技術が求められていました。ダイキン工業は日本で初めてボタン1つで簡単に操作できるパッケージ型のエアコンを開発し、大ヒット商品となります。

1958年には家庭用クーラーも発売し、ダイキン工業はエアコンなどの空調事業へ軸足を移していきました。ルームエアコンの普及率は1960年から2000年にかけて大きく上昇しており、ダイキン工業の業績に寄与したものと考えられます。

【ルームエアコンの普及率(2人以上世帯)】

出所:内閣府 消費動向調査より著者作成 

ダイキン工業の強みはグローバル力にあります。1966年のマルタ共和国を皮切りに、現在では世界170カ国以上で事業を展開していいます。国連加盟国は193カ国ですから、同社のビジネスは地球をほぼ網羅しているといえるでしょう。空調事業の海外売上高比率は85%にも上ります(2023年3月期)。

【空調事業の地域別売上高(2023年3月期)】
・日本:5530億円
・欧州:6574億円
・中国:4301億円
・米州:1兆3346億円
・アジア:4147億円
・オセアニア:1286億円
・中近東:970億円
・アフリカ:143億円

出所:ダイキン工業 決算説明会資料

欧州でさらなる成長が期待

ダイキン工業の空調事業は海外がけん引しています。特に欧州や米州、また中近東やオセアニアの成長率が顕著です。

【空調事業の地域別売上高の推移】

  2015年3月期 2023年3月期 変化率  日本 4134億円 5530億円 +33.8%  欧州 2271億円 6574億円 +189.5%  中国 3170億円 4301億円 +35.7%  米州 4407億円 1兆3346億円 +202.8%  アジア 2105億円 4147億円 +97.0%  オセアニア   436億円 1286億円 +195.0%  中近東 479億円 970億円 +102.5%  アフリカ 106億円 143億円 +34.9% 計   1兆7109億円   3兆6298億円   +112.1%

 

出所:ダイキン工業 決算説明会資料

欧州は成熟市場というイメージがありますが、ダイキン工業にとっては今後の成長が期待できる地域の1つです。熱波がたびたび襲来しており、2019年7月にはフランス・パリで42.6度を、2021年8月にはイタリア・シチリアで48.8度を記録しました。エアコンの普及率が低い寒冷地においても高温を記録するケースが相次いでおり、需要増加が見込めます。

また暖房についても、化石燃料を使わないヒートポンプ暖房への需要が高まっています。欧州は燃焼暖房が主流で、その燃料としてロシア産エネルギーに頼っていました。しかしウクライナ危機が発生し、輸入が不透明な状況が続いています。事実、2022年1~7月のロシア産天然ガスの欧州向けパイプライン輸出はおよそ40年ぶりの低水準となりました(出所:米国エネルギー情報局 Russia’s natural gas pipeline exports to Europe decline to almost 40-year lows)。

需要を見越し、ダイキン工業は欧州でヒートポンプ事業の強化に臨みます。約200億円を投じてベルギーに開発拠点を設立するほか、約420億円でポーランドに工場を新設する計画を発表しました(出所:ダイキン工業 サステナビリティ説明会資料)。今後の成長はヨーロッパが中心となるかもしれません。

受講中は業務免除 「ダイキン情報技術大学」とは

最後に斬新な社内制度についても触れておきましょう。ダイキン工業は2017年、大阪大学と連携し「ダイキン情報技術大学」を社内に設置しました。AI分野の技術開発および事業開発を担う人材育成を目指し、新入社員を含め希望者を教育する社内講座です。

ダイキン情報技術大学がユニークな点は、通常業務が免除される点です。受講者は給与を受け取りながら2年間かけて情報技術を集中的に学びます。計画では2023年度末までに1500人のAI人材の育成を目指すとしています。ダイキン工業の従業員は7618人(単体、2023年3月末時点)ですから、全体のおよそ2割がAI技術を身に付けることとなります(出所:ダイキン工業 有価証券報告書)。

ダイキン工業がこれほどの規模で教育に力を入れる理由は、人材の確保のためです。ダイキン工業は空調設備の専業メーカーのためIT人材が不足する傾向にあり、人材獲得競争の激化から外部からの獲得も難しいという課題に直面しました。そこで社内での育成を目指したのです。

さらなる成長を目指す企業にとって、人材の確保は重要な問題です。ダイキン工業の取り組みは、その解決に向けた先行投資といえるでしょう。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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