1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

話題の退職金税制、iDeCoの場合はどうなる?

Finasee / 2023年8月25日 11時0分

話題の退職金税制、iDeCoの場合はどうなる?

Finasee(フィナシー)

6月16日に閣議決定された2023年の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の中で退職一時金への課税を見直すことが打ち出され、退職金・年金をどう受け取るかについての関心が高まっています。

退職金、正確には退職一時金として受け取る際の税制は、現在は勤続年数が長いほど税金のかからない額が大きくなるような仕組みになっています。特に20年以上の長期勤続が優遇される今の仕組みは、勤務先を変えることを円滑に行われにくくしているのではないかと見直し検討の対象とされたわけです。現時点では何も決まっておらずこれから議論を始める段階ですし、老後の暮らしにかかわる重大な制度変更であるだけに経過措置などによって社会的な混乱を招かないよう配慮がなされるものと思われます。

この機会に一時金としてiDeCoを受け取る場合の税の取り扱いについて正しく理解し、自分のケースではどう受け取るのがベストか考えておくことをおススメします。

一時金受け取りの課税はどうなっているのか

現在の一時金受け取りに対する課税というのはどのようになっているかというと、次の式で表される金額が一時金として受け取る金額から控除され、それを超えた2分の1だけが課税対象となり、その課税対象額に応じた税金が徴収されます。

勤続年数(拠出年数)  退職所得控除額
  20年以下    40万円×勤続年数 (80万円未満の場合は80万円)
  20年超     800万円+70万円×(勤続年数-20年)

例えば45歳でiDeCoに加入して65歳まで20年間拠出したとすると、上記の計算式に当てはめると退職所得控除額は800万円となります。iDeCo以外に退職一時金を同じ年または前年以前の19年間に一切受け取っていなければ、800万円以下であれば税金がまったくかからずに受け取ることができます。

iDeCo以外にも一時金受け取りがあるとどうなるのか

多くの会社では、退職時にまとめて退職金を支払う退職一時金制度を採用しているので、お勤めの方はiDeCo以外にも退職一時金を受け取る方が多いと思います。また、フリーランスや自営業の方の多くが加入している小規模企業共済も廃業時に一時金で受け取る方が多いと思います。こういった一時金をiDeCoと同時または前年以前の19年間に受け取っていると、合算して税額を算出する対象となります。

合算対象となる場合には、以前に受け取った退職一時金の額と退職所得控除として使った勤続年数(拠出年数)を考慮して、退職所得を計算します。

わかりやすい公務員のケースで具体的な合算の仕組みを解説してみます。公務員として22歳から60歳まで勤務して60歳の定年時に退職一時金を2100万円受け取り、合わせて先ほどと同じ45歳から65歳までiDeCoに加入し資産残高が400万円、これを65歳で一時金としてすべて受け取ったとします。

60歳に受け取った退職一時金の退職所得控除は、勤続38年ですから2060万円となり、その超過分の2分の1、この場合は20万円が退職所得となります。税金は1万円程度です。65歳でiDeCoを一時金で受け取る際には60歳までの期間は先の退職一時金の控除額で使ってしまっているので、60歳から65歳の拠出期間だけが控除額の計算に使用可能となります。5年間ですから退職所得控除額は200万円、その超過額200万円の2分の1にあたる100万円が退職所得として課税されます。税金として徴収されるのは5万円あまりです。60歳の定年時に退職一時金を受け取った後、65歳までiDeCoの加入期間が5年間あったことで税額が随分と低くなります。

逆に60歳で同時にiDeCoを受け取っていたとしたら、控除額は少なくなりますから当然税額は増えます。同じ400万円を60歳で受け取っていたら、課税対象となる退職所得は210万円となります。税額は11万円あまりと、先ほどの例の倍になります。このように合算の対象となった場合でも重複しない勤続年数(加入年数)があれば税金がかからない退職所得控除額が適用されますし、そもそも退職一時金が退職所得控除額を上回るほどでなく、使っていない控除枠が残っていれば、後で受け取るiDeCoの一時金でその枠も適用され、税額を抑えてくれます。

受け取りタイミングと受け取り方法は50代のうちに考えておく

iDeCoの受け取り方法は一時金以外に年金があり、年金で受け取る場合にも公的年金等控除という税金がかからない枠が適用されます。iDeCo以外の一時金で退職所得控除は使い切ってしまいそうなのであれば、iDeCoは年金受け取り、または年金と一時金を組み合わせて受け取るということも税負担軽減の面からは有効です。つまり、iDeCoだけでなく、公的年金を含めた年金・退職金全体で受け取り方法を考えるという必要があります。

これは税の面だけでなく、60歳以降の暮らしにおいて必要な時に必要な額を充当する老後資金として有効な形で受け取り方を考える上でも大切な点です。さらに最近は、65歳と言わず70歳まで働く人も増えていますから、生活費として必要になるタイミングも額も人それぞれ、自分のケースで情報を整理し、解を見つけなければなりません。

慣れない情報を集めることを考えると50代半ばを超えたら、受け取りについてプランニングしておくことが大事です。というのも、公的年金を含めて受け取りのタイミングや方法が選べる退職金・年金の受け取りについてはいったん受け取り手続きをすると、受け取りのタイミングや方法を取り消し、訂正ということができないからです。選択をすることが可能となる60歳には、ある程度受け取り計画を持っておくことが必要です。

受け取り計画、受取パズルの手順

1.    自分がもらえる退職金・年金の額と、受け取り方法の選択肢を知る
2.    生活費・住宅ローンの返済などを含めて毎年の必要額を把握する
3.    受け取るタイミングや方法が決まっている退職金や年金で必要額がどのようにカバーできるか俯瞰してみる
4.    埋まっていない必要額を受取の選択肢のある退職金や年金で埋める
5.    最後に、空いている部分をiDeCoで埋める

私はこの受け取り計画の作業を受取パズルと呼んでいます。必要なところに、もらえる年金や退職金を置いていく作業がピースを埋めていくパズルに似ているからです。そしてこれらのピースのうち最も受け取りのタイミングや方法を誰でも自由に選択できるのがiDeCoです。他の退職金や年金では埋まらない部分をiDeCoで最後に埋めていくと考えると、iDeCoのベストの受け取り方法が見えてくると思います。

50代のうちに受取パズルをして自分の老後収入の全体像が見えていれば、60歳以降のお金の不安が消え安心感が生まれます。きっとそれは、60歳以降のチャレンジな働き方・心豊かな暮らし方に一歩踏み出す勇気にもつながりますよ。おススメです。

大江 加代/確定拠出年金アナリスト

オフィス・リベルタス取締役。大手証券会社にて22年間勤務、一貫して「サラリーマンの資産形成ビジネス」に携わる。確定拠出年金には制度スタート前から関わり、25万人の投資教育も主導。確定拠出年金教育協会の理事として、月間20万人以上が利用するサイト「iDeCoナビ」を立ち上げるなどiDeCoの普及・活用のための活動も行っている。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください