1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

なぜ人は「美味しい儲け話」に騙される? 過去の“お金の事件”に学ぶ詐欺師の巧さ

Finasee / 2023年8月24日 17時0分

なぜ人は「美味しい儲け話」に騙される? 過去の“お金の事件”に学ぶ詐欺師の巧さ

Finasee(フィナシー)

戦後に日本で起きた金融関連の事件を、みなさんはどれくらいご存じでしょうか。本稿では、代表的な事件から手口を振り返り、大切な資産を守る方法を考えます。

社会問題化した「保全経済会事件」

戦後、個人をターゲットにした大規模な金融詐欺として、まず挙げられるのが「保全経済会事件」です。昭和28~29年にかけて社会問題化しました。

保全経済会とは、当時はやっていた利殖機関の1つで、高利回りをうたい文句に、数多くの個人から資金を集めました。この会は商法上の「匿名組合」であり、同会が個々の契約者と出資の契約を結び、集めた資金の大部分を不動産投資や株式投資に回して運用、高い配当利回りを確約したそうです。

配当利回りは月2分(2%)、年率換算すると2割4分(24%)もの高配当を提示したそうですが、結局、新規加入者から集めた資金を、過去に加入した人への配当や償還金に回さざるを得ないという自転車操業に陥り、破綻しました。

保全経済会は昭和28年10月24日、本店(東京都中央区日本橋)やその他の支店の営業を一時停止する旨を発表。同会理事長の伊藤斗福(ますとみ)は、同年12月3日に開かれた衆院大蔵委員会に参考人として呼ばれ、その場で自力更生は不可能であること、政府による救済融資や、利殖機関に対する保護立法が必要であることなどを主張しました。

最終的に保全経済会事件は、昭和29年1月26日、東京地検特捜部が伊藤理事長を詐欺罪で逮捕。翌27日には全国245カ所の支店で一斉捜査が行われました。

また、当時は保全経済会だけでなく、全国で約300もの闇金融会社が林立しており、合計で500億~1000億円もの資金を集めていたそうです。

保全経済会の破綻は、他の利殖機関の経営にも影響を及ぼし、昭和28年10月26日には日本勧業経済会(本社:東京都中央区日本橋)が、出資者の解約希望に対して支払い猶予措置を発令。大阪の日本白十字経済会も、解約を一時停止したうえで、期限が到来していた配当金のみを支払う措置を取りました。

さらに、日本殖産金庫(本社:東京都中央区日本橋)の大阪支店では、12月7日に東京本店からの送金がストップし、顧客からの解約に応じきれないという理由から、休業を決定しました。

幅広い意味での「詐欺事件」を追えば、保全経済会事件の後も何度となく大型の詐欺事件が発生しています。

広告塔の存在で被害が拡大した「東京大証事件」

保全経済会事件後の大型金融犯罪では、昭和41年11月に起こった「東京大証事件」があります。

東京大証とは、昭和40年9月に東京神田に設立された手形割引会社で、40年7月から41年2月までの間に164通の手形を偽造行使、さらに264回にわたって架空会社名義振出しの手形を裏書して、中小企業経営者や主婦に買わせました。

この事件は出資法違反の容疑で警視庁による捜査が行われ、同社社長以下、幹部3人が、有価証券偽造ならびに詐欺の疑いなどで逮捕されました。

そして、この事件の被害が拡大した理由の1つとしては、広告塔の存在が挙げられます。当時の衆院議長をPRパンフレットに起用したのです。同衆院議長は、この事件の発覚に伴い、議長辞任に追い込まれました。

昭和46年には、熊本市本山町の天下一家の会、第一相互経済研究所を舞台にしたネズミ講事件が注目を集めました。この事件をきっかけに、昭和54年5月には無限連鎖講防止法(ネズミ講禁止法)が施行されましたが、その後、現在に至るまでこの手の事件は後を絶ちません。

昭和54年8月には「生活環境改善国民協会」が同法の適用第一号になったほか、昭和63年には国債を使った新手のネズミ講として「国利民福の会」が摘発を受けました。平成に入ってから巨額詐欺事件として注目された経済革命倶楽部(KKC)や八葉物流など、スキームはいずれもネズミ講です。

バブル経済最中の「投資ジャーナル事件」「豊田商事事件」etc.

そして、80年代を通じて盛り上がったバブル経済の最中に、投資ジャーナル事件と豊田商事事件が起こりました。80年代バブル期に生じた金融犯罪の特徴は、個人の財テクブームに乗じて、もうけ話のネタが一気に多様化したことでしょう。

投資ジャーナル事件では、同社社長の中江滋樹がある種のカリスマ的存在として君臨し、株式投資話を持ちかけました。

豊田商事事件では、金地金の現物まがい商法が全国的に展開されました。「年10~15%のリターンが期待できる」として、金地金の購入を顧客に勧め、現金と引き換えに「純金ファミリー契約書」を発行。

金地金の現物は豊田商事が保管しているはずでしたが、実際にはほとんど金地金は購入しておらず、純金ファミリー契約書は、何の資産価値も持たないただの紙切れと化したのです。

海外先物取引を用いた詐欺事件もありました。87年1月に摘発された「飛鳥商法事件」です。老人や主婦をターゲットに、「1口100万円を投資すれば、3カ月で絶対30万円がもうかる」というもうけ話を持ちかけ、360人から13億円もの資金を集めました。

ちなみに、舞台となった海外金融先物取引会社である飛鳥は、豊田商事の残党によって設立・運営された会社です。また86年という年は、ちょうどバブル経済の入り口ということもあり、投資ジャーナル事件にみられるような株式投資の詐欺事件が頻発しました。

投資絡みの詐欺が多発…「新日本リサーチ」「東洋抵当証券」etc.

同年7月には「新日本リサーチ」というインチキ証券会社が、実際には株式の売買をしていないにもかかわらず、これを行っているふりをして、全国の資産家から株式の購入資金をだまし取ったとして起訴されています。

さらに同年9月には、投資コンサルタント会社の「トランス・パシフィック・セキュリティーズ」が、もぐりの株式取引で顧客の資金をだまし取った疑いで、社長以下、幹部4人が詐欺罪で逮捕されました。

87年から88年にかけても、投資絡みの詐欺事件が多発しました。

87年3月に摘発を受けた東洋抵当証券の詐欺事件では、実際の抵当証券が1億800万円分しかないにもかかわらず、抵当証券預り証を水増しして販売。全国1500人の被害者から約19億円をだまし取っています。

88年6月には、国債を用いた新手のネズミ講「国利民福の会」が家宅捜査を受け、同年10月に同社会長以下3人が、詐欺罪で逮捕されました。「国債」という、国が発行する有価証券という信用力を利用し、政府関係者の意を受けた事業である風を装い、だましたとされています。

そして、バブル経済がピークを迎えた89年。同年7月には、大阪市淀川区の健康食品会社が、中国茶などの購入を名目に、全国の4812人から79億4200万円をかき集めて破綻。

11月には東京都内の海外先物取引会社6社が、全国の約5000人から150億円余りをだまし取ったとして、このうちの1社の元会長をはじめ、7人が警視庁によって逮捕されました。

***
 

今回は、戦後から1980年代のバブル経済にかけて発生した詐欺事件を列挙してみました。時代が変わっても、常に人をだます連中は存在します。もちろん今もそうです。だからこそ、だます人たちの手口を把握することが必要なのです。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください