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「老後資金は自分で準備」という国の方針を批判する人が知らない“世界の状況”

Finasee / 2023年8月22日 15時0分

「老後資金は自分で準備」という国の方針を批判する人が知らない“世界の状況”

Finasee(フィナシー)

今注目の書籍の一部を公開して読みどころを紹介するシリーズ。今回は、NISAとiDeCoの基本知識やおすすめ商品、賢い運用方法等について解説した篠田尚子氏の『【2024年新制度対応版】NISA&iDeCo完全ガイド』の一部を特別に公開します(本記事は前編)。著者本人が同書を解説する無料セミナー情報も!

※本記事は篠田尚子著『【2024年新制度対応版】NISA&iDeCo完全ガイド』(SBクリエイティブ)から一部を抜粋・再編集したものです。

年金問題にコロナ問題――。私たちのお金は本当に大丈夫?

今、お金に対する不安が急速に高まっています。

2019年頃より世間を賑わせている「老後資金2000万円」問題や、2020年から世界的に流行している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などが大きく影響しているのでしょう。

「これから、日本経済はますます悪くなっていくのではないか……」という悲観的な声もよく耳にします。

しかも、以前より公的年金制度の破たんがまことしやかにささやかれています。

このまま少子高齢化が進むと、公的年金制度が破たんしたり、年金受給額がゼロになったりすることまでは考えにくいものの、受給開始年齢が今より遅くなることは避けられません。

老後も、現役時代と同じかそれ以上の生活水準を保とうとするなら、やはり自分自身でお金を貯めて資産をつくる必要があるのです。

「貯蓄から投資へ」という政府のスローガンのもと、iDeCo(イデコ=個人型確定拠出年金)や、NISA/つみたてNISA(ニーサ=少額投資非課税制度)といった、個人の資産形成を後押しする税優遇制度が拡充されてきた背景には、こうした事情が大きく関係しています。

そして、じつは、税制優遇制度の拡充の流れは日本だけでなく、欧米アジアの主要先進国でも同じなのです。

NISAとiDeCoは世界的な流れ

NISAはイギリスを、iDeCoは米国をそれぞれ参考にしてつくられています。語感のよさも相まって、今やすっかり定着した、「NISA(ニーサ)」という呼称ですが、じつはこれはイギリスの個人貯蓄制度である「ISA(アイサ)」の頭文字に、日本版の「N」を付けたものです。

本家のイギリスの「ISA」は、個人の貯蓄や投資を促進する目的で1999年に導入されたイギリス居住者向けの制度です。ISAでは、日本がお手本にした株式型のほかにも、預金型など複数が用意されており、いずれも税制優遇措置が受けられます。

イギリスの場合、制度開始当初の非課税限度額は、株式型が7千ポンド(約113万円)、預金型が3千ポンド(約48万円)という内訳でした。その後、何度かの増額を経て、現在は株式型と預金型あわせて2万ポンド(約325万円)の非課税枠が認められています。

当初、イギリスも10年間の期限付きの制度として導入していたのですが、若年層に普及したことなどが評価されたことから、導入9年目に制度が恒久化されました。約10年の年月を経て非課税投資枠が拡大され、制度も恒久化された点は、日本と共通しています。

また、iDeCo を含む、日本の確定拠出年金制度がお手本とした、米国の確定拠出年金制度(401k)は、1970年代後期に制定され、80年代から90年代にかけて普及が進みました。

米国の確定拠出年金制度の詳細については割愛しますが、月々の給料から天引きして拠出でき、加入者に税制面のメリットがあるという点は日本と同じです。

米国は、日本と比べて良くも悪くも雇用の流動性が高いので、転職時に容易に持ち運べて節税メリットを享受しながら老後資産をつくれる確定拠出年金は、米国民の高い支持を集め、急速に拡大しました。

1980〜1990年代にかけて制度に加入し、拠出を続けた「第一期生」には、第二次世界大戦後に誕生した、いわゆるベビーブーマー世代が多く含まれます。人口の多いこの世代は、2000年代初頭のITバブルや、2000年代後半のリーマンショックに直面しながらも、着実に成長を遂げた米国株式市場の恩恵を受け、十分な資産をつくることができました。

こうした「第一期生」の成功体験は、子どもや孫世代にも受け継がれ、完全なインフラと化しています。

このようなイギリスや米国の成功に続くように、現在、オーストラリア、香港、インド、ニュージーランド、メキシコ、チリ、スウェーデン、ポーランドと、地域に関係なく、世界中で導入と活用が進んでいるのです。

日本を含め、大多数の国は任意加入を基本としていますが、たとえば、オーストラリア(スーパーアニュエーション)は強制加入です。その結果、今や個人金融資産の約半分が、スーパーアニュエーションによって占められるまでに成長しています。

このような世界的な状況を見れば、「自分のことは自分で」という政府の方針に対して「国民にさらなる負担を強いるのか」という批判の報道は少々的外れだということが、よくおわかりいただけるのではないでしょうか。

そして、私たちがお金をただ貯めるだけでなく、「増やさないといけない」理由がもう1つあります。それは、物価上昇=インフレ(インフレーション)です。「インフレ」という言葉は、ほとんどの人が知っていると思います。ただ、長らく「日本にもインフレがやってくる」といわれながらも、インフレはなかなか起きませんでした。

そのため、ニュースなどで日本にもインフレがやってくると報道されても「どうせ、今度もインフレは起きないだろう」と考えてしまっている人もいるようです。ところが、日本も原材料価格の高騰や物流コストの上昇を背景に、本当にじわりじわりとインフレが進行しています。

インフレが起きてモノの値段が上がると、私たちのお給料(賃金)が上昇しない限り、今まで買えていたものが同じ金額で買えなくなります。そこで、各国の中央銀行は、金利を引き上げて、景気の過熱感を冷まし、物価上昇を抑制しようとするのです。

金利が上がると、住宅ローンをはじめ、お金を借りる際の負担は増えますが、お金を貸したり、投資したりする際の見返りも大きくなります。たとえば、個人向け国債の適用金利は2022年以降、じわりじわりと上昇しています。これは、投資家にとって朗報です。

また、株式も将来のインフレに対する期待が織り込まれた価格になるので、インフレ時に耐性を発揮します。この点もまた、投資家にとってはプラスの側面です。ただし、「タンス預金」に代表されるように、お金をただそこに置いておくだけでは、こうした恩恵を受けることができません。いま100万円を貯めてタンスに入れておいたとしても、20年後30年後に今と同じ100万円の価値で使える保証はないのです。むしろ、インフレが起きると、お金の価値が事実上目減りしてしまいます。1990年以降の日本は、モノやサービスの値段が継続して下落するデフレーション(デフレ)の時代だったので、「タンス預金」でも、さほど深刻に捉える必要はありませんでした。しかし、インフレの時代が来るとなると、そうはいきません。

このように、資産運用は、インフレに対処するために、また、お金が時代の流れに取り残されないようにするためにも重要なのです。米国で資産運用が根付いているのは、単に個人主義だからというわけではなく、国民全体が恒常的なインフレを経験しているからです。資産運用をしないと、自分のお金の価値が実質的に目減りしてしまうことを米国民は身をもって体感しているので、資産運用に積極的な人が多いということなのです。

●後編(旧制度のデメリットも解消…新NISAの利便性が“格段に向上した”と言えるワケ)は、新NISAのポイントなどについて解説します。

***

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篠田 尚子/楽天証券資産づくり研究所 副所長 兼 ファンドアナリスト

慶應義塾大学卒業後、国内銀行を経て2006年ロイター・ジャパン入社。傘下の投資信託評価機関リッパーにて、投信業界の分析レポート執筆、評価分析などの業務に従事。2013年、楽天証券経済研究所入所。日本には数少ないファンドアナリストとして、評価分析業務の他、資産形成セミナーの講師も務めるなど投資教育にも積極的に取り組む。近著に『【2024年新制度対応版】NISA&iDeCo完全ガイド』(SBクリエイティブ)。

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