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世帯年収1000万円パワーカップル「この物件を買えば破産」。盲点だった“ある出費”とは

Finasee / 2023年8月18日 11時0分

世帯年収1000万円パワーカップル「この物件を買えば破産」。盲点だった“ある出費”とは<br />

Finasee(フィナシー)

居住用、投資用、相続・節税用とさまざまな用途で取引される不動産。しかし、売り手と買い手の情報に「非対称性」があることからも、不動産に関するトラブルが後を絶ちません。この連載では不動産鑑定士の福田伸二さんが、皆さんの「不動産リテラシー向上」に役立つ情報を事例と共にお届けしていきます。今回は気になる「住宅ローン」について解説してもらいます。

*** 世帯年収1000万円超の夫婦が理想の物件を発見!

前回までは主に投資用の不動産についてご説明しました。今回は、住居用の不動産、つまりマイホームの購入について、気をつけるべきポイントを解説したいと思います。今は共働きの方が多く、ご夫婦で高額の住宅ローンを組む例も増えています。しかし、だからこそ注意したい点もあるのです。

ご相談事例
Sさん(東京都内在住で共働き)
年収:夫婦で年収約1000万円
お子様:1人。4歳で現在保育園に通う

Sさんは都内在住で賃貸暮らし。そろそろマイホームが欲しいと考えていました。ご年収は夫婦で1000万円以上あり、奥さまはご出産後も時短勤務ではあるものの、正社員で働き続けています。お子さまは4歳のお嬢さん。周囲には小学校から私立に行かせたいと「お受験」に躍起になっている家庭もありますが、ご夫婦ともに地方の公立高校から大学へ現役で進学できていたため、「中学まではのんびり公立に行かせたいね」と話していたそうです。

Sさんが希望された物件はご夫婦のご年収にしてはかなり背伸びした価格で約1億円の、いわゆる“億ション”でした。しかし、今後も共働きを続ける前提で、お子さまが成長すれば奥さまの昇給も見込めるため、「がんばればなんとかなる」と思っていました。なにより、交通の便が良く、設備も整っているのが魅力の物件でした。いまの住居からも近いので、お嬢さんのお友達関係も維持できます。

「娘が小学校に入るまでには家を買いたいね」と話していたご夫婦。Sさんはこの条件なら奥さまも大賛成だと思い、早速資料を奥さまに見せました。

憧れのマイホームに妻の顔が曇り…その理由は?

ところが、いざマンションの価格とローンの計画を告げると、奥さまの顔がいきなり曇ったのです。驚いたSさん。理由を聞いてみると、奥さまは「将来、娘は私立中学に行かせたい」と言い出したのです。「中学は公立に行かせるんじゃなかったのか?」とSさんは問いただしました。すると、奥さまは最近起きた出来事を話し始めたといいます。

「隣のお宅の上のお嬢さんが来年、中学受験をするらしくて……。中学受験をする場合は少なくとも小学校4年生から塾に通わないといけないみたい。早い子は小1から通っているんだって。しかも、ママさんとお話していたら、『来年度は最終学年だから塾代は100万円以上よ、痛いわ』って。そんなにお金がかかるなんて知らなかった。とてもこんな高いローンは組めない……」

よくよく聞いてみれば、Sさんのお住まいの地域では、小学校のクラスの約半数が私立中学を受験するとのこと。また、その後、調べてみると高校まで公立に行かせたとしても、今度は塾代や予備校代が高くつくということ。特に首都圏では私立の中高一貫校に行かせたほうが大学進学率も高いことなどが、奥さまのリサーチでわかってきたそうです。「高校までのんびり……なんて思っていたけど、時代が違うのか」自分の時代との教育環境の違いに、Sさんは衝撃を受けました。

マイホームの購入予定地も、現在の居住地と近い場所ですから、環境は似ています。公立に行かせたいと思っていても、クラスの半数が中学受験をするとなれば、娘も「みんなが行くから私立に行きたい」と言いだすかもしれません。なにより、本人が希望する教育を、できる限り受けさせたい。それが奥さまの意見でした。

聞けば、お隣のお宅のお嬢さんも、少し前までは受験に興味がなかったのに、小学校の中学年くらいになって「お友達も受験するから、自分も中学受験をしたい」と言い出したそう。奥さまはお隣のママさんに、「『うちは公立でいい』と言っていても、そういうわけにはいかない場合もあるわよ」と、アドバイスされたそうです。

もちろん、Sさんご夫婦もお嬢さんが生まれた直後に学資保険に加入して月々積み立てをしており、それ以外に貯蓄額もそれなりにありました。しかし、私立の中高一貫校に行かせるとなれば、6年間で約500万円学費がかかるといわれます。それにプラスして小4からの塾代を考えると、とても高額の住宅ローンを組む余裕はありません。「ローン計画を見直す必要があるな……」。Sさんはしみじみ感じたといいます。

子どもの進学と住宅購入は時期が重なる

実はSさんのようなケース、結構多いのです。ご相談に来られる方でお子さまがいる方は、教育費がかかることは把握していらっしゃいます。しかし、大半の方が、その見積もりが甘いのです。

特に、お子さまが小さい時は、あまり将来の教育費をイメージせずに無理な住宅ローンを組んでしまいがちです。ですからご相談では、「教育費が思った以上にかかりますよ」ということをお話したうえで、どのくらいの金額で住宅ローンを組めばいいかを一緒に検討していきます。当社のアドバイザーも長いキャッシュフローをひいて、イベントごとに出ていくお金を想定してプランニングします。リアルな数字を見ると、ご夫婦で「こんなにお金がかかるの?」「いま想定している住宅ローンの額は結構厳しいな」というお話になることは、かなり多いのです。

教育費は住宅ローンの返済と時期が重なってきますし、やはり一番ネックになります。Sさんの例でもわかるように、現在は少子化で1人の子どもにかけるお金の平均が上がり、教育インフラも高額になりがちです。ざっくりとした費用は皆さん考えてはいらっしゃると思いますが、「〇歳の時に塾に〇万円かかる」「私立に行かせたら年間で〇万円かかる」等、かなり具体的な数字まで把握しておくことが大事です。

不動産鑑定士が提言!  死守したい「ある数字」とは!?

Sさんですが、最終的にローン計画を見直し、世帯年収に見合った7000万円台の物件を購入されました。これをきっかけに教育費だけでなく、ライフプランを見直したというSさん。「子どもが小さいうちに気づいてよかった」といいます。

ところで、「世帯年収に見合った価格」というのはどの程度なのか、皆さん気になると思います。私の感覚としては世帯年収の7倍が、住宅ローン総額の上限と感じています。これを越えてくると、かなり無理をしてさまざまな支出を切り詰め、お金を捻出してくることになります。

現在、首都圏のマンションの平均価格は8000万円を越えています。すでに1億円近いローンを組んでいる方もいると思いますが、私は今後、これを返済できなくなる人たちが増えてくるのではないかと危惧しています。物件購入の際は、今現在「買える」「買えない」だけではなく、将来の返済計画についてしっかり考えておくことが大切です。

後編「固定金利 vs 変動金利、どちらがおトク? 住宅ローンの選び方をプロが伝授」では住宅ローン関連で実際にご相談の多い項目を解説していきたいと思います。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。

 

福田 伸二/不動産鑑定士

POLUSグループを経て、大和不動産鑑定株式会社に入社し、東京本社鑑定部課長、鑑定証券化部次長を最後に退社。その後、売買仲介・コンサルティング業務に従事し、J-REIT上場のアドバンス・レジデンス投資法人の運用会社で外部委員も務める。毎年100件以上にわたる収益物件の鑑定評価書の発行や、東京都税事務所のアドバイザーとして相続税路線価のアドバイス業務に従事。2020年にファイナンシャルスタンダード入社。

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