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認知症の叔母が忘れなかった「大切な思い出」 支援を決断した姪の心配

Finasee / 2023年8月23日 11時0分

認知症の叔母が忘れなかった「大切な思い出」 支援を決断した姪の心配

Finasee(フィナシー)

●疎遠な親族の世話は誰がする?
※前半記事【“天涯孤独”の叔母が認知症に…唯一の親族が「面倒」と感じたある役割】からの続き

意外と広い「親族」の範囲

「親族」がどこまでの範囲なのかを知っている人は少ないのではないでしょうか。民法によると、法律上の親族は、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族(配偶者の血族と自分の血族の配偶者)を指します。6親等内の血族というと、親のいとこ(またいとこ)や、いとこの孫やきょうだいの玄孫(やしゃご)まで含まれる、相当広い範囲となります。

本人が亡くなった後の法定相続の範囲は、配偶者と、第一順位(子、またはその子や孫)、第二順位(親、祖父母)、第三順位(兄弟姉妹やその子)と決まっています。相続人の確認のためには、亡くなった本人(被相続人)の生まれたときから亡くなるまでの連続した戸籍謄本が必要ですし、第一順位・第二順位の相続人がいなければ、父母の生まれたときからの戸籍謄本等が必要になります。相続人が全て相続を放棄したり、いないことが分かったりすると、相続人不存在となり、相続財産自体を法人として家庭裁判所がそれを管理する「相続財産管理人」を選任します。

財産の相続人とは別に、遺骨を引き取り、墓地の管理や法要を実施する人は「祭祀(さいし)承継者」と呼ばれており、地域の慣習に従って定められます。そのような人がおらず、遺体の埋葬や火葬を行う者がないとき、または判明しないときは、本人の死亡地の市区町村が火葬を行います。

普段意識する機会は少ないですが、実は、自分自身が多くの人の「親族」である可能性があるのです。

「親族」に期待されること

相続や火葬については亡くなった後のことですが、本人が生きている間にも親族のサポートが必要になる場面は多くあります。絵美さんの叔母のように、やや判断能力が弱ってきている人の場合、成年後見制度を利用するための申し立ては、本人や配偶者のほか4親等内の親族に認められます。また、施設で生活する中で、サービス計画の作成や変更について施設が同意を求めたいこともあるでしょう。

一番大変なのが入院です。入院になれば病院側の求める手続き(治療の説明への同席や、延命措置の判断、保証人になること)に対応する人を求められますし、そういった手続きがスムーズに行えないと、施設も病院も困ってしまうのです。亡くなった後の支払いや持ち物の整理だけでなく、そういったことも支援してほしいというのが施設側の期待です。しかし、特に疎遠な親族の場合は、このような支援を提供しない、提供できないことも多くあるようです。

将来困らないために

母親の出身地は、絵美さんの住んでいるところから新幹線と電車で3時間ほどかかります。絵美さんはこれを機に一度叔母に面会に行くことにしました。もちろん、場合によっては支援できないことは事前に施設に伝えました。

久々に会った叔母は、絵美さんと母親を間違えることがあるなど、認知症であることがうかがわれましたが、小さな頃の思い出についてはよく覚えていてくれました。施設の人とも話し、絵美さんの余裕があるときにはできる限りの支援はするが、基本的には介護保険やその他のサービスを活用してほしいことを伝えました。

幸い叔母にはそれなりの蓄えはあるようで、施設が通帳を預かって必要な支出は行っており、記録をいつでも見られるとのことでした。

気がかりなのは、どうも叔母の自宅が施設入所時からそのまま空き家になっているらしいことです。記録によると中の片づけはある程度してあるようですが、もう戻る予定もなく、庭の管理などどうなっているか分かりません。叔母もそのことは分かっていて、ずっと心配していると話していました。

今度はその場所を見に行って、売却の相談などをしたほうがいいかもしれないこと、売却する場合は叔母が成年後見制度を利用できるように、叔母か絵美さんが申し立てる必要があることも施設の職員から聞きました。面倒だなと思いつつも、そういえば自分も独り身で、持ち家があることを思い出し、自分が叔母の状態になったら誰が同じことをしてくれるのか、絵美さんは自分のことが心配になってきました。

●親の介護は「家族がするのが当然」なの? 詳しくは【妻と離婚、高齢両親と同居の52歳営業部長が直面した“過酷すぎる”現実】(本サイト記事)で紹介します。

沢村 香苗/日本総合研究所 スペシャリスト

東京大学文学部卒業。同大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻博士課程単位取得済み退学。研究機関勤務を経て、2014年に株式会社日本総合研究所に入社。研究・専門分野は高齢者心理学、消費者行動論で、「高齢者の身元保証人、身元保証等高齢者サポート事業に関する調査研究」など実績多数。著書に『自治体・地域で出来る!シニアのデジタル化が拓く豊かな未来』(学陽書房)。

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