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加入者は4割程度でも…やはり「持株会はよくできた制度」といえる“これだけの理由”

Finasee / 2023年9月15日 11時0分

加入者は4割程度でも…やはり「持株会はよくできた制度」といえる“これだけの理由”

Finasee(フィナシー)

持株会のことをネットで検索すれば「持株会はおすすめしない」、そんな話が多いですね。

「収入も勤め先から得ていて、資産も勤め先の株が多くなると、リスクが集中しすぎるから」とか、「転職も含めた柔軟な働き方が当たり前の令和の時代、ある意味、定年まで勤め上げることが前提の持株会は時代遅れ」など、こんなコメントを目にすると、勤め先に持株会制度があっても利用していない、そんな人が多いのかもしれません。実際、持株会は東京証券取引所に上場している企業の約9割で導入されていますが、加入者は導入企業の従業員全体の約4割にとどまっています。

私は企業の職場にお邪魔して、現役社員の皆さまに投資や資産形成についてお話しする、そんなことを仕事にしています。持株会のこともお話しすることがありますが、最近はそうですね、持株会制度の単なる紹介というよりは、今流行りの金融リテラシーと言いますか、そんな話を絡めながらご説明しています。

そして、徐々にではありますが、持株会のことを改めて説明してほしいとお呼ばれする機会が増えていますし、説明会で「あっ、持株会制度ってそういうことなのね!?」と意外感のような反応を目にするのも、ちょっとした講師冥利(みょうり)だとも感じています。

そんな私がどんなふうに持株会のことをご説明しているのか。いつもはお邪魔する企業の実際の株価を基に作成した持株会のシミュレーションをお見せして、その時々の相場状況を振り返りつつ、持株会を通じた資産形成についてご紹介しています。

今回はそうですね~、皆さんが日本を代表するTOPIX株式会社にお勤めされているとしましょうか。そして、これまでの投資環境と持株会での投資経験を振り返り、そこから学べる金融リテラシーを確認してみたいと思います。ご一読下さい。

バブル崩壊後、TOPIX(東証株価指数)のパフォーマンスは…

それでは早速、これまでの投資環境を振り返ってみましょう。

例えば皆さんが、日本のバブル崩壊のタイミングで社会人になったとしましょうか。

その後、日本経済は良い時期もあれば、悪い時期もありましたが、バブル崩壊のタイミングというのは、投資環境という意味では、一番悪い時期に投資を始めてしまったと、そんなふうに言えるかと思います。

筆者作成

バブル崩壊の象徴的な数字と言えば日経平均株価、1989年末の38,915円が今でも最高値ですね(終値ベース)。

これはTOPIX(東証株価指数)でもだいたい同じ、今年の4月末でも1989年末の2,881ポイントを約29%下回る水準です。

まさに失われた30年と言われる、投資環境としてはそんなことが確認できるわけですが、でも、持株会だと違った景色が見えてきますよね。

持株会の投資経験として、確認してみたいと思います。

TOPIX株式会社に毎月1万円を積立すると…(1990年1月~2023年4月)

例えば、日本を代表する企業という意味で、TOPIX株式会社の持株会に加入して、1990年の1月から毎月1万円の積立をすると、2023年の4月でちょうど400万円になります。この資産評価額が実は632万円になっているのです。

筆者作成

TOPIX自体は元の値段に戻っていないのに、持株会だと儲かっている。これはまさに積立投資の効果ですよね。

毎月、同じ金額で積立投資を続けると、値段が安い時にはたくさん買って、値段が高い時には少なく買う、これを繰り返すことで平均的な買付単価が引き下がり、元の値段に戻らなくても儲かっている、ということなのです。

言ってみれば、積立投資とは回復力のある投資であり、だからこそ、長く続けられる、ということでもあります。

毎月1万円の積立に、奨励金10%を加えると…

次に持株会の魅力とも言われる奨励金の効果を確認してみましょう。

例えば、奨励金を10%とすると、積立額の400万円に40万円の奨励金が上乗せされることになります。そして資産評価額も696万円、奨励金以上に上乗せされていることが分かりますよね。

筆者作成

もちろん、この奨励金は持株会によって異なります。でも、どんな水準であれ、今の預金金利の水準と比べると、お得な仕組みであることがお分かりいただけるでしょう。

さらにもう少しだけ、投資の観点から「奨励金の本質」みたいなことを考えてみましょうか。

例えば、今回のケース、奨励金が10%ですから、毎月、給与天引きで10,000円を拠出して、奨励金とあわせて11,000円分のTOPIX株式を購入する、ということになります。

もっと簡単に言えば、11,000円のモノが10,000円で購入できるってことですよね。つまり、持株会であれば、常に株式が安く買える、ということなのです。投資の大原則は「安く買って、高く売る」、そうすれば儲かる、ということですが、奨励金があるということは、この大原則の前半部分、「安く買う」ことが誰でもできる、これが投資の観点で考えた場合の奨励金の本質だと、そんなふうに思います。

さらに、配当金の再投資効果を加味すると…

そしてもう一つ、持株会では配当金を再投資するという仕組みがあります。

この再投資効果を加味すると、積立額はさらに145万円も上乗せされることになりました。

筆者作成

先ほど確認した奨励金、10%という水準はたしかに高いと思います。でも、奨励金は拠出金額に対してつくもの。そのため、常に拠出金の10%にしかならないのです。

一方、配当金は持ち株数に応じて割り当てられるものなので、持ち株数が増えれば増えるほど、配当金として割り当てられる金額が増えていく、ということになるのです。

利子にも利子がつく、雪だるま式に増えていくのが複利ですよね。

実は持株会の配当金も、増えた株数をもとに配当金がついて、さらにその配当金で増えた株数をもとに次の配当金が計算される、雪だるま式に配当金が増えていきます。

つまり、この配当金再投資という持株会の仕組みには複利の効果が働いている、と言えるのです。そして、資産評価額も962万円、実は持株会を長く続けると、配当金の再投資効果が大きくなること、つまり、複利の効果が実感できるのです。

持株会とは、とてもよくできた資産形成制度

それでは今回の振り返りです。

まずは長期・積立投資の本質と言いますか、持株会の仕組み自体が回復力のある投資だと、だから長く続けられることを確認しました。

そして奨励金。預金金利と比べると水準自体も魅力的ではありますが、その本質は「安く買う」ことが誰でもできる、ということでしたよね。

もう一つは配当金の再投資。複利の効果と相まって、資産形成に大きな役割を果たしていた、そんなふうに配当金の魅力を見直していただけたかと思います。

以上を踏まえると、持株会とは上場会社にお勤めの現役世代の皆様にとって、とてもよくできた資産形成制度なのだと思います。

最後に一言。

ここまでご説明して、金融リテラシーとしての持株会の仕組みをご理解いただいた上でも、「分散投資という観点からは、勤め先の株式ばかり保有するのはリスクを感じます」とおっしゃる方もいらっしゃいます。

確かにそうですね、おっしゃっていることを否定するつもりはありません。

でも、そんな方にはもう1つの投資の大原則、「将来的に価値が上がると思うものに投資する」、ここに立ち返ってみてはどうですか、とお話しします。

そして、将来的に価値が上がると考えているから、あまたある企業の中から、今、その会社で働いていらっしゃるのでしょう。

持株会が投資するのはお勤め先の株式ですから、投資先としては議論の余地なく「投資の大原則」に従っている、そんなふうに考えられるのではないでしょうか。

以上、今回の記事が上場会社にお勤めの皆さまが資産形成の選択肢、持株会のことを本質的に理解する、そんな一助となれば幸いです。

小出 昌平/大和証券 ライフプランビジネス部 担当部長

1993年4月大和証券入社。投資信託の開発や富裕層ビジネスの企画・運営業務などを経て、2015年より確定拠出年金業務に従事。現在は、iDeCoと呼ばれる個人型確定拠出年金の周知・普及活動に携わりながら、自治体や事業会社の職場における金融・投資教育、ライフプラン教育の支援活動に取り組み中。

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