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好調な運用環境下で多くの確定拠出年金加入者が見逃している残念なこと

Finasee / 2023年8月30日 11時0分

好調な運用環境下で多くの確定拠出年金加入者が見逃している残念なこと

Finasee(フィナシー)

日経平均株価が3万円を超えて推移している現在、確定拠出年金(DC)加入者の運用も好調な数値になっています。「増えていて、うれしい」という声も聞こえるようになりました。

一方で、残念なことが2点あります。

一つは、定期預金などの元本確保型だけを保有している人の存在です(以下「元本確保派」)。長く続く低金利下では、ほとんど資産が増えていません。もう一つは、資産が増えているにもかかわらず、その結果を認識していない人が多いことです。

「元本確保派」には二つの傾向 積極的な選択と消極的な選択

元本確保派は、積極的選択か消極的選択か、に分かれるようです。

積極的に選んでいる人は、「元本割れは嫌だから」「増えなくても減らないのがいい」という明確な理由があるようです。一方で消極的選択の方は、「よくわからないから」元本確保型にしている、というものです。

「元本確保型」というと、一見、安全そうな響きがありますが、インフレ下では実質価値が目減りする可能性があるという認識を持つ必要があります。通帳などに記載された金額が減っていなくても、現実には5年前、10年前と同じモノを同じ金額で買えなくなってきます。「減らないのがいい」という気持ちとは裏腹に、お金の価値は減ってしまっていることになります。

インフレが現実のものとなってきた現在では、元本確保派は、一考の余地がありそうです。

運用シミュレーションで将来をイメージする

「よくわからないから」という方には、シミュレーションの実施を勧めています。
例えば、野村證券のDC加入者用WEBサイトでは、投資した資産クラス(国内外の株式、国内外の債券等)の違いによる将来シミュレーションが行えます。シミュレーション結果は、60歳時(もしくは65歳時)の中央値を中心に「良かった場合」「とても良かった場合」「悪かった場合」「とても悪かった場合」の5本の線で表示されます。

中央値がもっとも高確率でその金額になる値です。例えば、30歳の方が毎月1万円ずつ、65歳までDC掛金を国内外の株式と債券に25%ずつ分散投資した場合の中央値は、予想利回り3.2%、予想残高778万円と表示されます。掛金累計額は420万円なので、運用益は358万円です。十分な運用結果といえるでしょう。

シミュレーション結果で、中央値とともに注目すべき数字が「悪かった場合」です。シミュレーションでは約7割の確率で「悪かった場合」と「良かった場合」の間になる想定をしています。つまり「悪かった場合」よりも下ブレをするのは、15%ほどの確率になります。先ほどの例では、「悪かった場合」の予想利回りは1.1%、予想残高は519万円という結果になりました。この数字がご自身の感覚で受け入れがたい、という場合は、国内債券型投資信託や元本確保型の割合を増やして、再度、計算してみるとよいでしょう。
※シミュレーションによる数値は2023年8月現在のもの

シミュレーションは誤解を解くカギにもなる

運用リスクと聞くと、資産がゼロ円になる(まったくなくなる)と誤解される方もいらっしゃいます。DCは投資信託の活用が中心のため、一時的に元本を割れることはあっても、ゼロになることはありません、と説明しても伝わりにくいのが現状です。

シミュレーションの実施は、具体的な数字がイメージできるため、「わからない」部分を減らすことにもつながります。

情報収集している人ほど「わからない」理由。DCと一般の運用の違い

最近は、各種SNS等で運用のトピックを目にすることも増えました。資産運用が身近になってきたことを実感します。ただし、その内容が細かい部分ではDCの投資信託とは異なっていることもあります。それが故に情報収集に長けている方ほど、「わらかない」と思われるケースもあるようです。

例えば、一般的にはDCの運用商品には販売手数料がかかりません。野村證券が運営管理機関として提供している運用商品は、すべて販売手数料がかからない、いわゆるノーロードの投資信託と同じです。しかし「ロード」型がないため、わざわざ「ノーロード」という記載はありません。

また、最低買い付け単位も存在していません。DCは拠出金に対する「割合」で運用商品の資産配分を決めるため、「1,000円以上」や「5,000円以上」といった限定がなく、例えば毎月1,000円の掛金であれば、その1%である10円でも投資信託を購入できることになります。

ほかにも、DCの枠の中には、複数の金融機関の運用商品がラインアップされている点も一般では叶えられないかと思います。その結果、A銀行グループの預金からB銀行グループの投資信託に買い替えること(スイッチング)も自由に行えます。また、DCの投資信託では、信託財産留保額という費用が撤廃される傾向にあるため、手数料等を気にせずにスイッチングが可能です。

スイッチングの自由度は、NISA(少額投資非課税制度)と大きく異なる点でもあります。

DCはNISAと同様に運用益が非課税ですが、運用商品を買い替えても非課税措置が続いていきます。例えば、投資元本100万円の国内株式型投資信託が130万円になったので30万円分を定期預金にスイッチングする、といったことが可能です。いったん、DCの枠の中に入ったお金は、60歳超で受取手続きをしない限り運用益非課税での運用を続けることができます。
※2024年1月からスタートする新NISAでは、生涯非課税保有限度枠1,800万円が設定され、保有している投信等を売却すると投資金額分が翌年度に再利用可能になります。

WEBサイトにログインして定期的に確認することが重要

野村證券のDC加入者用WEBサイトでは、運用結果がすぐに確認できます。運用商品の変更も手軽に行えます。にもかかわらず、WEBサイトに一度もログインしたことのない方も相当数、存在します。

中には、DC加入者になった時に運用商品を選択した後は放置し、好調なマーケットを受けて資産額が倍になっている方もいらっしゃると思います。もし仮に、市場環境が悪化してしまったら、それにあわせてDC資産も下がることが想定されます。
将来のことは誰にもわかりませんが、増えた金額分を定期預金にスイッチングするなど、運用見直しを考える必要があるかもしれません。

ご自身の運用結果を認識し、将来のシミュレーションを確認するためにも、WEBサイトにログインしてみましょう。

津田 弘美/野村證券株式会社 確定拠出年金部

社会保険の専門出版社において、企業年金分野の編集記者として厚生労働省記者クラブ等に所属。厚生年金基金の隆盛期から企業年金2法の成立等を取材。その後、野村年金サポート&サービス(現在は野村證券に合併)に入社。確定拠出年金の運営管理業務に10年以上にわたり従事し、投資教育の企画立案、事業主サポート等を担当。業務の傍ら、横浜国立大学大学院において、理論と実務の両面から企業年金制度についての考察を行う。横浜国立大学大学院国際社会科学研究科博士課程後期課程修了(経営学博士)。

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